01ペルソナ:栗本 蓮(仮名)さん(38歳)
1987年生まれ、山形県鶴岡市の教員家庭で育つ。父(元中学校数学教員・現68歳年金生活)、母(元専業主婦・現パート)、3歳下の弟(地元信用金庫勤務)。地方公立で育ちながら東大に現役合格、外資コンサル→起業。創業したCloudWorksは中小企業向けの業務SaaS(経理・販売管理・人事)で、10年で売上35億、導入企業8,000社、従業員120名まで拡大。2025年11月、東証グロース上場。
栗本 蓮※仮名・フィクション
- 生年月日
- 1987年4月3日/38歳
- 出身
- 山形県鶴岡市(1987〜2006年)
- 学歴
- 鶴岡市立中→県立鶴岡南高校→東京大学工学部経営工学科(2010年卒)
- 職歴
- 戦略コンサルティングファーム新卒5年→2015年CloudWorks創業・CEO
- 会社
- CloudWorks株式会社(従業員120名・売上35億・営業利益率22%)、2025年11月東証グロース上場
- 報酬
- 役員報酬 月300万(年3,600万)
- 株式
- 40%保有(時価40億・ロックアップ中)
- 住居
- 港区麻布十番 2LDK 65㎡ 会社契約社宅(自己負担15万)
- 家族
- 妻:彩香(36歳・COO・株15%=15億)/長女:茉央(3歳・認証保育)
- 両親
- 父(68歳・元教員年金)、母(65歳・パート)
- 金融資産
- 現金3,200万+エンジェル回収金8,000万=1.1億(株式以外)
- 学歴補足
- 鶴岡南高校(偏差値67・山形県トップ)→東京大学工学部経営工学科(偏差値76・共通テスト91%)2010年卒。大学院進学はせず直接戦略コンサルティングファーム入社、5年で起業。
上場した夜、妻と娘と3人でマンションに戻って、近所のスーパーの総菜で乾杯しました。時価40億の株は売れないし、役員報酬は月300万で、これまでと大きく変わらない暮らしをしています。"紙の金持ち"というよりは、"10年かけて築いた責任"を持った状態、というのが一番近い感覚です。
—— 栗本蓮(38歳・CloudWorks代表取締役CEO)1-B生育環境・親世代のバックグラウンド(地方公立→IPO社長ルート)
栗本蓮の2025年IPO・時価40億は、山形県鶴岡の公立教員家庭で育った人物の東大→コンサル→起業の"平成後期の成功ルート"の典型例。資産家の家系ではなく、公教育+独学+運で築いた成功。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 父の職業・年収 | 山形県鶴岡市の県立高校の国語教諭38年勤続、教頭で定年、年収ピーク750万、退職金2,400万。2020年退職、共済年金月20万。 |
| 母の職業・年収 | 地元パート(スーパーレジ18年・時給950円)、月収6万。2020年退職、国民年金+夫の遺族厚生年金で月9万。 |
| 世帯年収 | 蓮の幼少〜大学時代:700〜850万。山形県鶴岡では中の中、地方教員家庭の典型。 |
| 住居変遷 | 1987〜現在:鶴岡市内の戸建て(1990年新築2,200万、両親完済)、両親現居。 |
| 兄弟構成 | 姉(40歳・地元看護師・既婚)/蓮(38歳・本人)。姉は堅実ルート、蓮は東京IPO社長と対照的。 |
| 祖父母 | 父方:米沢の元教員家系/母方:鶴岡の商家(食料品店)。両家とも平凡、特段の相続なし。 |
| 家族の仲 | 極めて良好。IPO後は両親に4,000万の現金贈与、家族ぐるみで喜びを共有。蓮は年4回家族で鶴岡帰省、両親へのお米・生活費支援も継続。 |
| お小遣い | 小学校300円、中学1,500円、高校5,000円/月。大学時代は月5万仕送り+バイト(塾講師で月6万)、学費は両親負担+奨学金(第一種)で半々。 |
| 習い事 | そろばん(6〜10歳・段位取得)、少年野球(小4〜中3)、ピアノ(8〜13歳)、鶴岡の塾(中学〜高校・月3万)。地方公立進学校コースの教育投資。 |
| 金銭教育 | 父は"真面目に勉強"派、投資経験ゼロ。蓮は社会人3年目で戦略コンサルティングファーム先輩からエンジェル投資を学び、自分で金融リテラシーを独学。両親とは"東京と山形の経済格差"を常に意識して育った。 |
1-C生涯税・社保・手当累計(22〜90歳・68年)
IPO創業社長特有の税構造。ロックアップ期間+段階的売却+配当金で、極めて複雑な税務設計。
| 区分 | 項目 | 累計額(万円) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 支払い | 所得税(役員報酬期) | 8,400 | 年3,600万×20年、高所得税率 |
| 住民税 | 3,000 | 年平均70万×43年 | |
| 社会保険料(役員) | 1,200 | 標準報酬月額上限で圧縮 | |
| 株式譲渡益税(20.315%) | 80,000 | 40億→50億時の売却40億×20.315% | |
| 配当税 | 20,000 | 年1億×20年×20%(上場後) | |
| 事業承継・信託設計費 | 800 | 家族信託・贈与税対策 | |
| 受取 | 厚生年金(加入年数短い) | 2,400 | 月8万×25年 |
| 国民年金 | 1,950 | 月6.5万×25年 | |
| IPO株式売却益(段階的) | 400,000 | 時価40億のうち70%売却想定 | |
| 合計 | 純収益 | +約288,950万 | IPO億円単位の成功で税引後も約28.9億の純収益 |
1-D世代平均ベンチマーク(1987年生まれ・38歳時点)
| 項目 | 日本同世代平均 | 上位10% | 上位0.01% | 栗本 |
|---|---|---|---|---|
| 個人年収 | 480万 | 850万 | 3,500万 | 3,600万+株40億 |
| 金融資産 | 580万 | 1,800万 | 5億 | 1.1億+株40億 |
| 純資産 | 1,200万 | 3,500万 | 10億 | 約41億 |
| IPO創業率 | 0.0008% | − | 100% | 100% |
| 時価総額40億超創業者 | 0.0005% | − | − | 100% |
1-Eお金で最も苦労した3エピソード
2015年・創業初年度の無収入期間12ヶ月・貯金900万→50万への激減
2015年、28歳の蓮は戦略コンサルティングファームを退社してCloudWorks創業。初期資金900万(給与からの貯金)+エンジェル投資500万(戦略コンサルティングファーム同期から)で運転資金、創業者としての無収入期間が12ヶ月続いた。月の生活費30万×12=360万+初期開発費400万=760万を1年で消費、貯金残高50万まで減少。妻・彩香(当時共同創業COO)も同様に無収入、夫婦で貯金を食い潰す時期。この時期、実家の父から緊急支援100万を受け、両親に「成功したら必ず返す」と誓った。
「創業1年目の冬、通帳残高50万を見た夜、私は妻と寿司屋で500円の卵焼きを半分こした。28歳で'起業家は最初の12ヶ月が地獄'だと骨身で知った。この1年の緊張感は、IPO後も忘れない」
2019年・シリーズB調達で希薄化40%・VCとの交渉3ヶ月
2019年、32歳の蓮。シリーズB調達(15億)でVCが要求した株式比率は「40%希薄化・優先株・清算優先3倍」という厳しい条件。交渉3ヶ月、弁護士費用と精神的消耗で体重−6kg、離婚危機寸前まで追い詰められた。最終的にVC4社のコンソーシアムで15億調達成立、希薄化は32%に圧縮。蓮の持株は60%→41%に減少、時価換算で当時20億相当の"支配権"を差し出すことに。しかしこの資金調達でCloudWorksは売上5倍成長、2025年IPOに到達。"希薄化は成長の対価"という起業家心理を32歳で学んだ。
「VC交渉の3ヶ月、私は毎晩弁護士と電話し、妻と意思決定を共有した。株式の40%を'他者に渡す'感覚は、我が子を手放すような心理的痛み。でも、この決断がCloudWorksをIPOまで連れてきた」
2025年・IPO成功後のロックアップ期間180日・時価40億"紙の金持ち"の葛藤
2025年11月、CloudWorksが東証グロース上場、時価40億達成。しかし蓮の持株はロックアップ180日で売却不可、現金化はゼロ。役員報酬月300万(手取り約180万)で、港区麻布十番の会社契約社宅+幼稚園保育料+日常生活費の現実はIPO前と変わらず。SNSでは「時価40億のIPO社長」と喧伝される一方、家計は月数十万の収支管理の現実。この"紙の金持ち"と"現実の暮らし"のギャップを、蓮は家族・両親に正確に説明する必要があり、多くの親戚・友人からの資金援助要請も発生、対応に苦慮した。
「上場した翌週、親戚3家から『300万貸してくれないか』と連絡が来た。私は時価40億だが、現金化できるのは180日後、しかも売却すれば時価総額が暴落する。'IPO=金持ち'という世間の誤解を、38歳で初めて経験した」
1-F栗本蓮の愛読書10冊
栗本の時価40億IPO達成は、日本のスタートアップの全件数8万社のうち年間IPO数80件=0.1%の狭き門。同じ時期に起業して失敗した企業は7万社以上。本記事は成功者栗本のストーリーを称賛しつつ、"IPO=金持ち"の誤解と、ロックアップ期間の現実、親戚・友人からの資金援助要請という"見えない負担"も客観的に記録する。
02年齢×収入・支出・貯蓄のライフラインチャート
kurimoto ipo氏の38歳までの収入・支出・純資産の推移。職業特性(NO.101 / IPO創業社長)を踏まえたライフチャート。
■ 年齢×金額・単位 万円/年
※収入ピークや支出増のタイミングを把握し、38歳以降の資産形成計画の参考に。純資産は収入と支出の差の累積で、生涯設計の軸となる指標。
03本記事で公開する書類(全10件)
04年齢×収入・支出・貯蓄のライフラインチャート
kurimoto ipo氏の38歳までの収入・支出・純資産の推移。職業特性(NO.101 / IPO創業社長)を踏まえたライフチャート。
■ 年齢×金額・単位 万円/年
※収入ピークや支出増のタイミングを把握し、38歳以降の資産形成計画の参考に。純資産は収入と支出の差の累積で、生涯設計の軸となる指標。
05本記事で公開する書類(全10件)
06人生年表:1987年〜現在
- 1987年 4月0歳誕生:山形県鶴岡市、出産費用38万(父29歳教員・母27歳専業)
- 1994年6歳鶴岡市立小学校入学
- 2000年13歳市立中学校入学、中3から駿台山形校(月2.8万)
- 2003年16歳鶴岡南高校入学(地元トップ公立)
- 2006年 4月19歳東京大学理科一類入学、奨学金不要(親が全額負担)
- 2008年21歳進学振分で工学部経営工学科
- 2010年 4月23歳戦略コンサルティングファーム新卒入社、年収950万
- 2013年26歳シニアアソシエイト昇進、同社の妻・彩香と結婚
- 2015年 3月28歳戦略コンサルティングファーム退職、CloudWorks創業(資本金500万・妻と2人)
- 2016年プロダクト初ローンチ、月商80万からスタート
- 2018年31歳シリーズA調達 2.2億、従業員12名
- 2020年33歳コロナ禍でSaaS需要急拡大、売上4億→10億
- 2021年34歳シリーズB調達 8億、長女 茉央 誕生
- 2023年36歳シリーズC調達15億、従業員100名超、IPO準備開始
- 2025年 11月38歳東証グロース上場、公募2,000円→初値2,650円、時価総額100億
- 2026年 4月38歳(現在)現在地:ロックアップ中、株価2,650円前後、四半期決算対応中
- 2026年 5月ロックアップ終了(売却解禁)
- 2030年頃43歳時価総額200億目標、米国進出検討
07幼少期〜東大:教員家庭の地方公立から東大まで
父が中学校数学教員、母が専業主婦(のちパート)という、典型的な地方の中流公務員家庭。世帯年収は栗本さん小学生時代で約620〜680万、贅沢はせず堅実な家計。祖父母(父方)が元小学校校長で、教育投資には協力的だった。
DOC.01 ── 親の教育費総額(0〜22歳)
| ステージ | 期間 | 累計金額 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 幼稚園3年 | 3-6歳 | 42万 | 月謝+給食 |
| 公立小学校6年 | 6-12歳 | 185万 | 給食・習い事含む |
| 公立中学校3年 | 12-15歳 | 145万 | 部活+高校受験塾 |
| 公立高校3年 | 15-18歳 | 195万 | 予備校+大学受験 |
| 東京大学4年 | 18-22歳 | 420万 | 国立授業料+仕送り月8万 |
| 親の総教育費投資 | 987万 | 奨学金なし・全額親負担 | |
※国立大+地方公立で抑制された教育費。父の教員共済年金と祖父母援助があり、奨学金を借りずに卒業。栗本さんが「起業する余裕」があったのは、学生時代からの貯蓄+親世代の資産背景も大きい。
08戦略コンサルティングファーム時代:5年で資産1,200万貯蓄
2010年新卒入社、年収950万→1,450万→1,850万。激務(平均週75時間)の代わりに、5年間で貯蓄1,200万円、これがCloudWorks創業時の運転資金に。妻・彩香も同期で2013年結婚、戦略コンサルティングファーム同士の超パワーカップル期(世帯年収3,200万)。
DOC.02 ── 新卒〜退職時の年収推移
| 年 | 役職 | 年収 | 累計貯蓄 |
|---|---|---|---|
| 2010 新卒1年目 | アソシエイト | 950万 | 180万 |
| 2012 3年目 | シニア候補 | 1,150万 | 480万 |
| 2013 | シニアアソシエイト昇進 | 1,450万 | 720万 |
| 2014 | プロジェクトリード | 1,850万 | 1,050万 |
| 2015 退職時 | シニアアソシエイト3年目 | 1,850万 | 1,200万 |
09起業・資金調達:10年で売上35億、ただし創業直後3年は無給
DOC.03 ── 資金調達と持分の希薄化
| ラウンド | 時期 | 調達額 | バリュ(pre) | 栗本持分 |
|---|---|---|---|---|
| 創業 | 2015/3 | 資本金500万 | — | 100% |
| シード | 2016/秋 | 3,000万 | 1.2億 | 77% |
| シリーズA | 2018 | 2.2億 | 10億 | 62% |
| シリーズB | 2021 | 8億 | 32億 | 48% |
| シリーズC | 2023 | 15億 | 65億 | 41% |
| IPO公募 | 2025/11 | 12億(公募) | 75億 | 40% |
DOC.04 ── 創業直後の栗本家計簿(2015-2017年 無給時代)
創業初期の3年間、栗本さんと妻は無給(役員報酬ゼロ)で、戦略コンサルティングファーム時代の貯蓄1,200万円を生活費に取り崩した。共働き無給時代の月次家計。
| 項目 | 月額 |
|---|---|
| 家賃(目黒2LDK) | 165,000 |
| 食費 | 65,000 |
| 国民健康保険+国民年金(夫婦) | 72,000 |
| 交通費 | 22,000 |
| 光熱通信 | 24,000 |
| 被服・日用 | 28,000 |
| 交際・書籍・学習 | 35,000 |
| 月支出 | 411,000 |
※月41万×36ヶ月=1,480万の生活費を貯蓄から捻出。創業直後の3年で貯金1,200万+エンジェル投資回収で補填、資産ほぼゼロの状態からシード調達に辿り着いた。起業家が「最初の3年は無給が前提」のリアル。
10IPOの舞台裏:準備期間18ヶ月・監査費用3,000万
DOC.05 ── IPO準備にかかった費用(会社負担)
| 項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 主幹事証券 公開引受手数料 | 80,000,000 | 公募額の約8% |
| 監査法人監査報酬(2年分) | 30,000,000 | N-2期から |
| 弁護士費用(上場準備・適時開示) | 18,000,000 | —— |
| IR・PR・ロゴ刷新 | 12,000,000 | —— |
| ガバナンス体制整備 | 15,000,000 | 社外取・監査役設置 |
| 上場申請料・年間上場料 | 4,000,000 | 東証 |
| IPO準備人員(CFO・経理強化) | 35,000,000 | —— |
| IPO総費用 | 194,000,000 | 会社負担 |
11現在(38歳・2026年4月)の家計
DOC.06 ── 現在の役員報酬明細
役員報酬 | CloudWorks CEO
2026年4月※年収3,600万の手取りは約2,200万(月184万)。標準報酬月額上限(139万)張付き、実効税率38%。
DOC.07 ── 世帯家計簿(月次・2026年4月)
| 項目 | 月額 |
|---|---|
| 家賃(麻布十番・会社補助後) | 150,000 |
| 食費(夫婦+娘) | 95,000 |
| 光熱・通信 | 28,000 |
| 保育料(認証保育3歳児) | 68,000 |
| 栗本 小遣い | 60,000 |
| 彩香 小遣い | 60,000 |
| 娘の服・知育・絵本 | 35,000 |
| 保険 | 45,000 |
| ジム・美容 | 30,000 |
| 外食・家族レジャー | 60,000 |
| 親への仕送り(両親+義両親) | 100,000 |
| 寄付・NPO支援 | 50,000 |
| NISA夫婦 | 200,000 |
| 支出合計 | 981,000 |
※世帯手取り 月184万(栗本)+144万(彩香・手取り60%)=328万、支出98万、月230万の余剰。ロックアップ中は現金運用+資産管理会社設立準備に充てる。
12株式売却時の税金と資産管理会社化
DOC.08 ── ロックアップ明け後の売却試算(10%=4億円分)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却株式 | 400,000,000 |
| 取得費 | −500,000 |
| 譲渡所得 | 399,500,000 |
| 分離課税(20.315%) | −81,180,000 |
| 証券会社手数料 | −4,000,000 |
| 手取り | 314,820,000 |
※分離課税20.315%は上場株式譲渡の統一税率。配当は総合課税か申告分離を選択可、高所得者は申告分離が有利。
DOC.09 ── 資産管理会社化(SPC設立)の検討
ロックアップ明けの2026年5月以降、保有株の一部を資産管理会社(SPC)に移管する戦略を税理士と検討中。SPCに株式を譲渡することで、将来の配当を法人に受け、法人税実効税率約30%で留保→再投資できる。個人課税(分離20.315%+住民税)との比較で、配当が多くなる上場後数年以降はSPCの方が税効率が良い可能性。
13将来見通し:45歳で"次の決断"
IPO後の一般的なキャリアパス:
- CEO継続・時価総額500億目標(〜45歳):米国進出・海外M&A・大企業買収で10倍成長を狙う道
- 第三者承継でEXIT(40代後半):会社売却または大企業にTOB→個人資産100億超化
- 後継社長にバトンタッチ→次の起業(40代後半):連続起業家化、VC or 新規創業
- 政界・公的機関転身(50代):元経営者の公的役職
14月次マネーフロー+同年代分布+IF分岐+意思決定
DOC.10 ── 月次マネーフロー(世帯月328万)
※世帯手取り328万のうち生活費98万(30%)、寄付・親仕送り15万、投資+現金余剰258.7万(79%)。ロックアップ中は流動化不可なので月240万の現金積み上げ、年2,850万蓄積中。
DOC.11 ── 同年代分布における栗本家
〜500万中央値
〜1,600万上位10%
〜5,000万上位0.1%
5億〜上位0.01%
50億〜
※野村総研「富裕層ピラミッド」2024版。栗本家は「超富裕層」(純資産5億超)の中でも上位数百名圏。日本全体で同等規模の個人は約0.01%、推定1万〜1.5万人。
〜1,800万中央値
2,800万上位25%
4,500万〜上位10%
7,500万上位1%
2億〜
※東洋経済・ダイヤモンド「上場企業役員報酬ランキング」。時価100億規模の上場直後企業CEOとしては標準的、あえて低めに設定(株価意識した自己報酬抑制)。
15IF分岐・意思決定
DOC.12 ── IF分岐シミュレーション
もし戦略コンサルティングファームを辞めず、パートナー昇進目指していたら?
リスク全振り、10年の忍耐、共同創業者の妻と役員2名の結束で達成。成功確率1%以下の狭き門。
パートナー年収1.5-2億、10年間で累計報酬13億、運用込で純資産3-5億。堅実だが10倍の差、ただし成功確率はほぼ100%。
もしIPOでなくM&A EXITを選んでいたら?
株価変動リスクを背負うが上場維持と成長継続の道。役員報酬+将来の配当。
即現金化、40%保有分で30億手取り、妻分11億、計41億キャッシュ。成長余地を売った代わりに流動性確保、再起業or投資家転身の自由。
SPC設立 vs 個人保有継続
配当を法人に受け、法人税30%で留保→再投資。個人分離課税20.315%との比較で年3,000万×10年=3億の節税。
確定申告だけで済み事務簡素、ただし配当・売却益すべて個人分離課税。相続時の株式評価も純資産のまま。
麻布十番2LDK継続 vs 麻布ヒルズ10億購入?
上場直後でも生活水準を上げない選択。「従業員と経営陣の差を広げない」企業文化への配慮。
ロックアップ明けに株一部売却で現金化、ヒルズ居住権獲得。社会的ステータス/ビジネス応接利便/子の国際教育環境向上、ただし維持管理費月80万、従業員感情への配慮が課題。
ロックアップ明けに10億売却、何に投じるか?
S&P500 40%・米国債 30%・日本株 20%・REIT 10%で分散、年6%運用で年6,000万のCF。
10億を10社に分散投資、1-2社が10倍化すれば+30億、全敗なら-8億。"投資家キャリア"として次世代支援の道だが、個人資産の変動リスクは高い。
家族の金銭観・IPO達成家系の声
栗本家は「夫婦共同創業から11年でIPO達成」を実現した家族。創業者株40億の評価益、家族の理解、次の人生設計——金銭の数字を支える、起業家家族のリアルな本音を5人の声で記録する。
「戦略コンサルティングファームを27歳で辞めて起業、11年でIPO達成。創業者株40億の評価益は、夫婦の11年の汗と、社員80名の積み上げの結晶。『お金は手段、目的は社会への貢献』という創業時の理念を、IPO後も忘れない。次のフェーズは、財団設立による教育投資。」
「夫と共同創業した日、両家の親に泣かれた。27歳と25歳で安定した道を捨てる選択。11年経った今、『リスクを取れる時期を大切に使う』判断が正しかったと実感する。IPO後の次の挑戦は、CFOから一歩引いて、子(5歳)の教育に時間を投じたい。お金より時間が、これからの最優先資源。」
「お父さん、お母さんが会社のお仕事してるの知ってる。お母さんはたまに保育園のお迎えに来てくれる。お父さんは夜お仕事で遅いけど、土日は遊んでくれる」。子の素直な観察が、夫婦に「お金より時間」の大切さを再認識させる。IPO後は家族時間を最優先する人生設計に転換。
「栗本夫妻には2017年シリーズAから出資。共同創業の夫婦、戦略コンサルティングファーム出身の論理性、SaaS市場の勃興期——3つの勝ち筋が揃っていた。11年でユニコーン化+IPO達成は業界上位5%の成功。創業者夫妻の節度ある経営姿勢が、80名の社員の信頼を獲得し続けた。次の挑戦も応援する。」
「息子が27歳で戦略コンサルティングファームを辞めて起業すると言った時、私は地方銀行の役員として『安定を選べ』と懇願した。11年経った今、息子のIPO達成を見て、『古い世代の常識は、若い世代の挑戦を妨げる場合もある』と認める。私の世代は安定、息子の世代は挑戦——時代が変われば、価値観も変わる。彩香さんの両親と一緒に、孫の颯太の教育を支援したい。」
DOC.13 ── 意思決定ログ
戦略コンサルティングファームを辞めて起業するか、昇進ルートを歩むか
2015年2月、栗本27歳・妻彩香25歳。戦略コンサルティングファーム東京オフィスで同期入社の2人は、結婚4ヶ月の夫婦。栗本はシニアアソシエイト3年目、パートナー昇進打診が直属の上司・Ms. Sarahから内々に伝えられ、順調に行けば33歳でパートナー、年収3,500万のキャリアラインが見えていた。一方、彩香は1月からSaaS企業の案件を担当し、国内の中小企業向けクラウド会計ソフトの空白市場を数字で可視化していた。2人は1月末の週末、軽井沢の小さなペンションで「10年後の2人」を紙に書き出した。①夫婦で戦略コンサルティングファーム残留(生涯賃金夫婦で6.5億・安定)②栗本起業+彩香戦略コンサルティングファーム継続(起業資金1,200万・彩香の安定収入でセーフティネット)③夫婦で共同創業(0か100かの大勝負)の3択。両家の親(栗本の父は地方銀行役員・彩香の父は医師)は「安定を」と懇願。しかし27歳という年齢の希少性——失敗しても30代でキャリア再構築可能——が2人を後押し。2月中旬、戦略コンサルティングファーム人事への退職届を出す前夜、2人は近くの寿司屋でビールを飲みながら「30代を通過する時、後悔するのはやらなかった方だ」と合意した。3月、同期に驚かれながら同時退社、CloudWorks株式会社を共同創業した。
妻・彩香は退社の1週間前、栗本の母(60歳)に正座で話した。「お母さん、27歳と25歳で安定した道を選ぶと、20年後に『あの時やっておけば』と夫婦で悔やむ人生になる気がする。私は夫と一緒に、リスクを取れる時期を、大切に使いたい」——栗本の母は最初泣いたが、翌日「やってみなさい、お父さんと私が後方支援するから」と電話をくれた。
スタートアップ経営論の第一人者・田所雅之氏(Startup Science著者)はインタビューでこう語った。「共同創業の成功率は、夫婦創業の場合7%前後と極めて高い(業界平均3%)。戦略コンサルティングファーム出身の論理性+夫婦の信頼+27歳という年齢+SaaSの市場タイミング——栗本夫妻は4つの勝ち筋が揃っていた。こういう意思決定が、10年後の上場企業を作ります」
FOR ─ 起業
SaaS市場勃興期/若いうちにリスク取れる/妻と共同創業できる稀な機会/戦略コンサルティングファームは後でも戻れるAGAINST ─ 継続
パートナー昇進確実/安定年収2,000万/家族計画考慮/失敗時のキャリア棄損シリーズB調達8億──希薄化を受け入れるか、自己資金でいくか
2021年5月、栗本34歳。CloudWorksは売上7億円・ARR 7億・従業員50名・導入企業2,200社の中堅SaaSへ成長。コロナ禍でSaaS需要が爆発し、competitor(freee・MoneyForward・弥生)も資金調達を加速していた。4月末、米系VC(Coral Capital・Globis Capital Partners)と国内系VC(WiL・JAFCO)の4社が共同でシリーズBバリュエーション32億・調達8億・持株比率48%まで希薄化のタームシートを提示した。受ければ2年分の先行投資(米国支社開設・営業50名採用・開発50名採用)が可能、受けなければ自己利益の範囲で年30%成長にとどまる。取締役会は栗本・彩香2人と社外取1名の3名体制、シリーズB後は7名体制(VCサイド4名)に変わり、意思決定の自由度が大きく減る。栗本夫妻は5月連休中、軽井沢の別荘で3日間議論。決定打は、主要競合MoneyForwardが同時期に70億調達・米国進出を発表したニュースだった。「スピード勝負で負ければ、5年後の市場地位は永遠に取り戻せない」——栗本は5月28日、タームシートに署名。7月にクローズ、CloudWorksは100名体制へ急拡大した。
彩香(共同創業CFO)は軽井沢で夫にこう言った。「48%まで希薄化するのは、私たちの夢が市場の夢になる瞬間。100%の小舟より、48%のクルーザーで世界を見る方が、10年後の私たちらしい。取締役会の主導権が減っても、2人で選ぶ道なら怖くない」
Coral Capital代表パートナー・James Riney氏は、投資後のインタビューでこう語った。"Yutaka and Ayaka are the rare founders who understand both the financial model and the product-market fit. Their decision to accept a 48% dilution at a $32M valuation shows they prioritize 'winning the market' over 'owning the company.' That's the mindset that creates unicorns."
FOR ─ 調達
8億で2年先行投資/IPO視野/従業員50→100名の採用/競合が先行する恐怖AGAINST ─ 内部留保
希薄化で持分48%に/取締役会3分の2VCサイド/自社利益で拡大可上場直後、役員報酬を月300万に抑える決断
2025年10月、栗本38歳。東証グロース市場に上場し、時価総額100億到達。創業者持分40%=時価40億の含み資産、初値$1,850(公募価格の1.3倍)と好発進。上場から2週間後、第一回取締役会で役員報酬の議論が始まった。同規模上場SaaS企業(時価80-120億帯)の創業者CEO報酬中央値は月450-500万(年5,400-6,000万)、独立社外取の鈴木氏(元楽天執行役員)は「時価100億の創業者として月500万は適正、市場相場に沿うべき」と主張した。栗本はその席で自ら「従業員平均給与(年760万)の30倍=年2.28億、12ヶ月割で月1,900万」の上限ポリシーを提示、さらに自身は上限の約16%の月300万(年3,600万)を選択した。理由は3つ——(1)創業者株40億の含み資産で十分(2)上場直後の株価安定には「経営陣の謙虚さ」のシグナルが最も効く(3)従業員エンゲージメントを維持したい。VCサイドの社外取(WiL・Yoshi氏)は当初「自社株の売却可能性を考えるべき」と反対したが、機関投資家(野村アセット・メガバンク信託)との対話で「このガバナンスは日本のSaaSでは例外的に優れている」と高く評価され、翌月の株価は+18%を記録した。
彩香(CFO)は役員会の夜、自宅リビングで夫にワインを注ぎながら言った。「月300万でも、私たちの生活には十分すぎる。創業者株の方が遥かに大きい資産なのに、報酬で稼ごうとするCEOの方が、実は株主と従業員の両方を裏切ってる。あなたの判断は、CloudWorksの次の10年を作る文化になる」
コーポレートガバナンス研究の第一人者・冨山和彦氏(経営共創基盤会長)はメディア取材でこう評した。「栗本CEOの月300万選択は、日本のスタートアップ経営者が陥りがちな『上場後の急激な役員報酬引き上げ』の逆をいく優れた判断。ペイ・レシオ(CEO報酬÷従業員平均の倍率)を低く保つことは、機関投資家からも高評価。CloudWorksのケースは、日本版ガバナンス・コードの好事例になります」
FOR ─ 月300万抑制
従業員との差縮小/株主へのメッセージ/IPO直後の謙虚さ/将来増額余地AGAINST ─ 月500万
市場相場/ガバナンス妥当性/生活水準向上/株主も納得16未来予測(38-80歳のロードマップ)
ロックアップ明け後のSPC設立+段階的株式売却で流動資産を年5-8億ずつ積上げ、45歳までに時価総額500億企業への成長と個人資産100億を射程。CEO継続or第三者承継EXITの選択が45歳の最大分岐点、いずれも事業承継税制+財団設立+海外資産配置で超富裕層としての承継設計を完成させる。
DOC.14|CF予測(35年)
| 年齢 | 役員報酬 | 配当・譲渡益 | 純資産 | ライフイベント |
|---|---|---|---|---|
| 40歳 | 3,600万 | 4億(部分売却) | 55億 | SPC化・麻布台ヒルズ検討 |
| 45歳 | 5,000万 | 配当1.5億 | 80億 | 時価500億目標・米国進出 |
| 50歳 | 6,000万 | 配当3億 | 120億 | CEO後継選定開始 |
| 55歳 | 3,000万(会長) | 配当2.5億 | 140億 | 会長退任・財団設立 |
| 60歳 | 顧問3,000万 | 配当2億 | 155億 | 娘茉央18歳・次世代設計 |
| 65歳 | — | 配当+運用2億 | 170億 | 完全引退・ファミリーオフィス |
| 80歳 | — | 運用CF1.5億 | 200億 | 承継完了 |
DOC.15|法人役員報酬設計(SPC・財団含む)
2026年後半のロックアップ明けに「Kurimoto Holdings」(資産管理会社)を設立、保有株20%を譲渡し配当を法人受取。実効税率25%で留保し再投資、役員報酬は栗本1,800万・彩香1,200万に分散し所得税率圧縮。45歳以降は「栗本教育財団」(公益財団)に株10%を拠出、相続時評価圧縮と社会貢献の両立を図る。法人+財団+個人の三階建て構造が超富裕層の標準設計。
DOC.16|事業譲渡益・承継シナリオ
45歳時点でM&A EXIT(時価500億・40%=200億)を選んだ場合、譲渡所得税40億差引で手取り160億、即引退+連続起業+政界転身の自由度最大。CEO継続なら50億の長期安定CF、成長上振れ(時価1,000億)で追加100億も射程。
DOC.17|老後資金設計・事業承継
65歳時純資産170億、運用CF年10億で娘世代・孫世代まで資産保持可能な水準。事業承継税制(特例措置)フル活用で娘への株式移転は贈与税・相続税100%納税猶予(雇用継続5年等の要件付き)、これだけで50億の税負担を回避。公益財団50億、娘個人40億、孫信託30億、妻50億の四分割設計で承継完了、"日本版ロックフェラー家"のミニ版を構築する50年計画が現実解。
次の10年・3シナリオ比較
楽観シナリオ
条件:CloudWorksが売上50億→200億へ成長、時価総額100億→500億達成。米国進出成功、海外売上比率30%。45歳でM&Aフロムベゾス級の大手SaaSへの売却を検討、200億Exit実現も視野。公益財団設立、社会貢献の段階開始。
標準シナリオ
条件:CloudWorksが売上80億・時価総額200億へ成長、年率15%成長を継続。CEO継続、創業者株保有比率を30%に減らしながら資産管理会社経由で配当受取。45歳までにSPC化+財団設立準備、長期戦略への移行。
悲観シナリオ
条件:競合の急速な台頭、SaaS市場の成熟化で時価総額が80億→50億に下落。創業者株評価額20億に縮小。CEO継続、復活戦略として新製品ラインナップ展開。経営は厳しくなるが、節度ある経営姿勢で社員の信頼維持。
10年間の年別純資産推移(3シナリオ・単位:億円)
| 年齢 | 楽観 | 標準 | 悲観 |
|---|---|---|---|
| 38歳(現在) | 42 | 42 | 42 |
| 40歳 | 70 | 55 | 35 |
| 43歳 | 120 | 75 | 28 |
| 45歳 | 160 | 90 | 25 |
| 48歳(10年後) | 200 | 80 | 20 |
💭 IPO後10年の3つの分岐軸
「IPO達成は『ゴール』ではなく『新しいスタートライン』。創業者株40億は時価評価で、現金化までの過程で価値が大きく変動する。悲観シナリオでも純資産20億維持の安全マージン。栗本さんの月300万役員報酬抑制、節度ある経営姿勢、夫婦の哲学が、楽観シナリオを実現する基盤。次の10年、CloudWorksが日本のSaaSを代表する企業に育つかが鍵。」
IPO直後社長・ある平日の日次マネー日記(2026年4月13日 月曜)
TL;DR:上場後6ヶ月、月300万の役員報酬で生活する典型平日。創業者株40億の評価益を抱えつつ、節度ある日常生活を維持する起業家家族。
※IPO直後社長の日常は、月300万の役員報酬+節度ある生活+夫婦の経営会議の3点が骨格。創業者株40億は時価評価で、現金化までの過程で価値が大きく変動する。月300万抑制ポリシーが、機関投資家・社員・社会への最大のシグナル。
17よくある質問
Q1. IPO創業者のロックアップとは?期間中に何ができる・何ができない?
ロックアップは上場後一定期間、創業者・VC等が保有株の売却を禁じる契約。期間は主幹事証券との合意で90日〜360日、東証グロースの平均は180日。目的は上場直後の大量売却による株価暴落防止と、創業者のコミットメント維持。栗本さんは180日(2026年5月解禁)中で、売却・担保設定・第三者譲渡すべて不可。ただし配当受取・議決権行使・役員報酬は通常通り。ロックアップ明け後も、市場影響を避けるため「段階売却(TSPC等)」や「立会外分売」「ブロック取引」で年4-5%ずつ放出するのが上場社長の標準パターン。一気に大量売却は株価急落と投資家信頼喪失を招く。
Q2. 上場株式譲渡の税金はいくら?他の税制と比較して有利?
上場株式の譲渡所得は分離課税20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)。栗本さんが4億円分(時価)売却した場合、取得費50万引いた譲渡所得3.995億×20.315%=8,120万の税額、手取り3.14億。給与所得や事業所得の最高税率55%と比べると大幅に有利で、これが創業者IPOの最大の税制メリット。NISA(つみたて・成長投資枠計360万/年)で保有すれば非課税、iDeCoは拠出時・運用時・受取時の3段階優遇。ただし自社株は特定口座・NISA不可、一般口座で確定申告必須。外国税額控除・配当控除・株式譲渡損失の3年繰越も活用可。超富裕層は資産管理会社経由で法人税率25%+配当免税を併用する。
Q3. 特定口座・NISA・一般口座の使い分けは?創業者の場合?
(1)特定口座(源泉徴収あり):証券会社が税計算+納税代行、確定申告不要で便利、年末調整で還付受けやすい。(2)NISA:年間360万(成長240万+つみたて120万)の投資利益が非課税、生涯1,800万まで。配当・売却益すべて非課税は強力だが自社株・外国株の一部は対象外。(3)一般口座:自分で税計算+確定申告必須、自社株・IPO持分・スタートアップ株はここで管理。栗本さんのCloudWorks株は一般口座、売却時に自分で譲渡所得計算+申告。市場流通株(妻彩香のエンジェル投資回収分など)は特定口座で管理、NISA枠は家族用の長期S&P500ETF等に活用。超富裕層は資産管理会社(SPC)+個人特定口座+NISAの三層で最適化する。
Q4. 資産管理会社(SPC)設立のメリット・デメリットは?
SPC(合同会社・株式会社)を設立し保有株を譲渡することで、配当・譲渡益を法人で受ける仕組み。メリット:(1)法人税実効税率25%(個人分離課税20.315%より高いが、配当収入の95%は益金不算入で実質税率5%未満)、(2)役員報酬で家族に所得分散、(3)経費計上範囲拡大、(4)相続時の株式評価で純資産の60-70%まで圧縮可能(相続税3-4割減)、(5)欠損金10年繰越。デメリット:(1)設立費用6-25万+年間ランニング60-100万(税理士・社労士)、(2)個人→法人への株式譲渡時に譲渡所得税が発生(取得費加算特例活用可)、(3)所有と支配が分離し柔軟性低下。資産5億超、配当年2,000万超から設立メリットが上回る目安。
Q5. 公益財団設立とは?どのくらいの資産規模から検討すべき?
公益財団法人は内閣府・都道府県の認定を受けた非営利法人で、相続税非課税+寄付控除(個人3,000万まで控除)+配当非課税の3大優遇。設立要件は(1)基本財産300万以上、(2)公益目的事業50%以上、(3)理事・監事・評議員計7名以上、(4)内閣府公益認定等委員会の審査(通常1-2年)。栗本家の場合、時価10億(株10%)相当を拠出→年間配当3,000万で教育支援事業を運営する設計が現実的。メリットは相続税回避と"栗本家の名"の永続化、デメリットは運営コスト年2,000万・理事会運営の実務負担・財産の個人還流不可。資産30億以上、永続的な社会貢献意向がある家族に適する。一般財団(より簡易な形態)なら資産10億から検討可。
Q6. 創業者株の売却はいつ・どのくらいが適切?
原則は「会社の成長に確信があるなら持ち続け、次の事業に使うなら売る」。一般的な売却ペース:(1)ロックアップ明け後の"部分売却":1-2%(栗本なら1-2億)で生活資金・SPC化資金を確保、(2)年1-2回の定期売却:IR開示後の安定期に株価影響最小化、(3)大量売却時はブロック取引・立会外分売で市場インパクト回避、(4)合計で創業者持分の30-50%を5-10年かけて売却が上場社長の標準パターン。心理的には「持ち続ける=未来への信念のシグナル」、一方で「売らない=相続時に評価額で税負担増」のジレンマ。栗本さんは40%保有のうち、45歳までに10%売却+10%SPC移転+10%財団化+20%維持の設計を検討中。税制面では「自社株の取得費加算特例」(相続後3年以内売却で取得費に相続税額を加算)も重要、相続発生時は売却タイミングで税額が大きく変わる。
関連する109人の現在地
栗本家の人生に交差する5人を、109人プールから選定。起業・IPO・SaaS・夫婦共同創業・ガバナンスの論点で重なる隣人たち。
18栗本家の総括
世帯内の金銭権力図
栗本家は本人=IPO社長・創業者株40億、妻=育児+慈善事業。経営判断は本人主導、税務・株主管理は専門チーム。
地域別家計比較
| 項目 | 東京港区(本人) | 地方政令市(札幌) | 近郊(神奈川) |
|---|---|---|---|
| 家賃/住宅 | 75.0万 | 15.0万 | 25.0万 |
| 食費(夫婦+乳児) | 15.0万 | 8.0万 | 10.0万 |
| 教育費(保育園+将来) | 10.0万 | 3.0万 | 5.0万 |
| 交通・運転手 | 15.0万 | 5.0万 | 8.0万 |
| 光熱・通信 | 5.0万 | 3.5万 | 4.0万 |
| レジャー・接待 | 25.0万 | 10.0万 | 15.0万 |
| 支出合計 | 145.0万 | 44.5万 | 67.0万 |
| 貯蓄余力(手取300万・役員報酬) | 155.0万 | 255.5万 | 233.0万 |
ライフエンド設計
ポッドキャスト台本
HOST:SaaS企業を上場させた栗本蓮さんに伺います。
GUEST:よろしくお願いします。28歳で起業、10年でマザーズ上場、創業者株40億になりました。
HOST:創業の原点は?
GUEST:慶應卒業後、コンサル3年で「中小企業のDX遅れ」を実感、月額制SaaSを起業。
HOST:資金調達は?
GUEST:シードVC1億→シリーズA5億→シリーズB12億→IPO時公募12億。希薄化はあったが創業者株40%維持。
HOST:IPO後の生活は?
GUEST:含み益40億、ロックアップ180日後の売却で現金化検討中。役員報酬年3,600万、配当年3,000万、生活はほぼ役員報酬で十分。
HOST:税金は?
GUEST:役員報酬の最高税率55%、配当は20.315%。資産管理会社経由で長期譲渡は20%、税理士フル活用。
HOST:次の一手は?
GUEST:子会社設立・海外展開・M&A。創業者として最後の上場ではなく、複数事業の連結成長。
HOST:家族との時間は?
GUEST:0歳児がいるので週末は家族時間優先。妻も慈善事業に関心、共に財団設立を計画中。
HOST:これから起業する人へ?
GUEST:「IPOがゴールじゃない、スタート」「VCの言いなりにならない、創業者株を死守」「家族と健康が一番の財産」。
HOST:ありがとうございました。
栗本家の書類
1. 役員報酬明細+特定譲渡所得(IPO売却分)
2. ねんきん定期便(蓮・38歳)
3. 高額納税証明書(その3)
19国内SaaS上場企業マップ:CloudWorksはどこに位置するか
栗本さんが上場した東証グロース市場の主要SaaS企業との比較。時価総額・ARR・PSR(株価売上倍率)・営業利益率の4軸で、CloudWorks(時価100億・ARR35億)の現在地を地図化します。
| 企業名 | 市場 | 時価総額 | ARR(年経常収益) | PSR倍率 | 営業利益率 | 従業員数 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| freee | プライム | 2,800億 | 280億 | 10.0倍 | ▲5% | 1,400名 |
| マネーフォワード | プライム | 3,200億 | 320億 | 10.0倍 | ▲3% | 1,800名 |
| サイボウズ | プライム | 1,800億 | 240億 | 7.5倍 | 12% | 1,000名 |
| ラクス | プライム | 3,500億 | 350億 | 10.0倍 | 22% | 1,500名 |
| SmartHR(未上場) | ― | 1,700億(評価額) | 170億 | 10.0倍 | ▲8% | 1,200名 |
| Sansan | プライム | 2,200億 | 240億 | 9.2倍 | 15% | 1,300名 |
| カオナビ | グロース | 450億 | 55億 | 8.2倍 | 10% | 280名 |
| ヤプリ | グロース | 280億 | 42億 | 6.7倍 | 8% | 240名 |
| Chatwork | グロース | 320億 | 48億 | 6.7倍 | 14% | 320名 |
| CloudWorks(栗本) | グロース | 100億 | 35億 | 2.9倍 | 22% | 120名 |
CloudWorksのPSR2.9倍は業界平均(7-10倍)と比較して低評価。これは(1)グロース市場の小型銘柄ディスカウント、(2)IPO直後で機関投資家のカバレッジ不足、(3)SaaS指標の継続開示が始まったばかり、の3要因。栗本さんの戦略は「ARR50億・営業利益率25%・PSR5倍を達成し、時価総額250億を目指す」。これがロックアップ明け後の売却判断の基準値です。
| SaaS指標 | CloudWorks現在 | 業界中央値 | 栗本目標(3年後) | 達成手段 |
|---|---|---|---|---|
| ARR成長率 | 32% | 25% | 40% | 大企業向けエンタープライズ版投入 |
| NRR(純更新率) | 112% | 108% | 125% | アップセル機能・連携API追加 |
| 解約率(月次) | 1.2% | 1.5% | 0.6% | カスタマーサクセス強化 |
| CAC回収期間 | 14ヶ月 | 18ヶ月 | 10ヶ月 | マーケ自動化・PLG導入 |
| Rule of 40 | 54 | 40 | 65 | 成長率+利益率の総和最大化 |
| 従業員1人あたりARR | 2,917万 | 1,800万 | 4,000万 | AI活用・組織効率化 |
SaaS企業の評価軸は「Rule of 40(成長率+利益率=40超)」が業界共通指標。CloudWorksは54でクリアしているものの、freee/マネフォは「成長率重視で赤字許容」、ラクスは「利益重視」と戦略が分岐します。栗本さんは利益重視+緩やかな成長路線を選択、これが時価総額の評価分岐点になります。
業界比較からの示唆3点
- 規模拡大の壁:ARR50億→100億は組織の質的転換が必要、120名→300名規模で創業文化が薄まる転換点。
- プライム市場昇格:時価総額250億・流通株式比率35%が必須。栗本さんの40%保有は売出しで25%まで下げる必要あり。
- M&A防衛:時価100-300億は外資SaaSのターゲットゾーン。買収防衛策(黄金株・ポイズンピル)の検討も選択肢。
20IPO創業者の株式戦略:ロックアップ・売出し・機関投資家対話
創業者にとって「IPOはゴールではなく株式戦略のスタート」。栗本さんは40%(40億)の創業者株を、5-10年スパンでどう動かすか。実務の3本柱(ロックアップ・段階売却・機関投資家IR)を解説します。
1. ロックアップ180日の実務カレンダー
| 期間 | 日数 | 制限内容 | 例外 | 違反ペナルティ |
|---|---|---|---|---|
| 2025/11/15(上場日)〜2025/12/31 | 46日 | 売却・担保・第三者譲渡すべて禁止 | 主幹事の事前同意で例外 | 主幹事との損害賠償・上場廃止リスク |
| 2026/1/1〜2026/3/31 | 90日 | 同上+四半期決算前後30日のインサイダー取引禁止 | ― | 金商法167条・最高懲役5年 |
| 2026/4/1〜2026/5/13 | 43日 | 同上、ロックアップ最終局面 | ― | ― |
| 2026/5/14(ロックアップ解禁) | ― | 売却可能だが市場影響に配慮 | ― | ― |
| 2026/5/14〜2026/8/14 | 92日 | 解禁直後3ヶ月は段階売却推奨 | ― | ― |
ロックアップ期間中、栗本さんが行えるのは(1)配当受取、(2)議決権行使、(3)役員報酬受取、(4)他社株への投資、(5)IR・株主総会対応のみ。一方、自社株を担保に銀行融資を受けることも禁止されているため、生活資金は役員報酬と既存の現金1.1億から賄う必要があります。
2. 段階売却の3パターン比較
| 売却手法 | 1回あたり規模 | 市場影響 | 売却コスト | 適用場面 |
|---|---|---|---|---|
| 立会内売買(普通売却) | 500万-1億 | 大きい(株価-3〜-7%) | 手数料0.05% | 少額・緊急売却 |
| 立会外分売(ToSTNeT-3) | 1億-5億 | 中(株価-1〜-3%) | 手数料0.5% | 中規模売却・既存株主向け |
| ブロック取引(相対) | 5億-30億 | 小(株価-0.5〜-1%) | 手数料1.0-1.5% | 大規模売却・機関投資家向け |
| 第三者割当売出し | 10億-50億 | 極小(事前合意) | 主幹事手数料3-5% | 戦略株主導入・大規模放出 |
| TSPC(自己株取得スキーム) | 5億-20億 | プラス(自社株買い) | 手数料0.3% | 株価下支え・株主還元 |
栗本さんの想定シナリオ:「ロックアップ明け1ヶ月後にブロック取引で2億売却→生活資金とSPC設立資金を確保→以降は四半期ごとに1-2億ずつ立会外分売」。年間総額5-8億のペースで、5年で20-40億を現金化する設計。これにより株価変動リスクを分散しつつ、機関投資家へのコミットメントシグナルも維持できます。
3. 機関投資家IRの実務カレンダー
| 頻度 | 対応内容 | 所要時間 | 担当 |
|---|---|---|---|
| 四半期決算(年4回) | 決算説明会・アナリスト個別面談10-20件 | 各2週間 | CEO+CFO+IR |
| 株主総会(年1回・6月) | 議案説明・株主質問対応 | 3週間準備 | CEO+取締役会 |
| 機関投資家ロードショー(年2回) | 東京・大阪・海外(NY/HK/SG) | 各1-2週間 | CEO+IR |
| 個別IR面談(随時) | 大株主・カバレッジアナリスト・潜在投資家 | 月10-15件 | CEO+CFO+IR |
| 適時開示(随時) | 業績修正・大型契約・人事異動・M&A | 都度2-5日 | CFO+IR+法務 |
| サステナビリティ報告(年1回) | ESG・人的資本・気候開示 | 2ヶ月準備 | サステナ推進室 |
上場後、栗本さんの時間配分は経営50%・IR30%・採用20%に変化。創業期の「プロダクト50%・営業40%・採用10%」から、経営者として求められる役割が大きく転換しました。「上場前は事業を作る人、上場後は事業を守りながら株主と対話する人」という栗本さんの自己認識の変化は、IPO創業者共通の課題です。
創業者株売却の心理3段階
- 第1段階(解禁直後・38-40歳):少額売却で生活基盤を整える。「会社の信頼を保ちつつ家族の安全を確保」。
- 第2段階(成長期・40-45歳):ARR・利益が伸びる時期、定期売却で資産分散。「事業への確信があれば持ち続ける」が基本。
- 第3段階(成熟期・45-50歳):次の事業・社会貢献・引退準備の選択。「何のために売るか」の哲学が問われる。
21IPO後の役員報酬・CFO・社外取締役:上場会社の管理コスト全容
非上場時代と比較して、上場会社は法令・取引所規則・株主対応で年間1.5-3億の追加コストが発生します。栗本さんのCloudWorksも、上場と同時に管理体制を一新しました。
1. 役員報酬の構造変化(上場前後)
| 役職 | 上場前年(2024年) | 上場後(2025年) | 増減 | 理由 |
|---|---|---|---|---|
| 代表取締役CEO(栗本) | 年1,800万 | 年3,600万 | +1,800万 | 上場会社の労働市場相場・株主説明責任 |
| 取締役COO(彩香) | 年1,500万 | 年2,800万 | +1,300万 | 同上 |
| CFO(外部招聘) | ― | 年2,400万+ストックオプション | +2,400万 | 上場前6ヶ月で外部から招聘 |
| CTO(創業メンバー) | 年1,400万 | 年2,200万 | +800万 | 上場会社の技術責任者相場 |
| 社外取締役(3名) | ― | 年600万×3=1,800万 | +1,800万 | 独立社外取締役の選任義務 |
| 監査役(3名) | ― | 年500万×3=1,500万 | +1,500万 | 監査役会設置義務 |
| 役員報酬総額 | 4,700万 | 14,300万 | +9,600万 | ― |
2. 上場関連の追加コスト(年間)
| 項目 | 非上場時 | 上場後 | 差額 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 監査法人報酬 | 800万 | 3,500万 | +2,700万 | 四半期レビュー・内部統制監査 |
| 東証上場維持費 | ― | 400万 | +400万 | 年間上場料 |
| 株主名簿管理人 | ― | 500万 | +500万 | 三井住友信託・みずほ信託等 |
| IR専門会社 | ― | 1,200万 | +1,200万 | 適時開示・株主総会支援 |
| 法律事務所(顧問) | 300万 | 1,800万 | +1,500万 | 金商法・東証規則対応 |
| D&O保険(役員賠償) | ― | 800万 | +800万 | 株主代表訴訟リスク |
| 株主総会運営費 | ― | 600万 | +600万 | 会場・印刷・配信 |
| 内部統制システム | 200万 | 1,500万 | +1,300万 | J-SOX対応・人員増 |
| 追加コスト合計 | 1,300万 | 10,300万 | +9,000万 | ― |
上場により年間1.86億の追加固定費が発生(役員報酬9,600万+管理コスト9,000万)。CloudWorksの営業利益7.7億(売上35億×22%)の24%が上場維持費に転化する計算。これがグロース市場上場の本当の負担で、「上場した瞬間に営業利益率が大幅に低下する」のはSaaS各社共通の現象です。
3. 社外取締役の選任基準と相場
| 属性 | 選任理由 | 年俸相場 | 会議出席頻度 | 栗本社の選任例 |
|---|---|---|---|---|
| 大企業元役員 | 経営経験・ガバナンス知見 | 500-800万 | 月1回取締役会 | 元日立CFO(67歳) |
| 会計士・税理士 | 会計・監査の専門性 | 400-600万 | 月1回+監査委員会 | 大手監査法人パートナー(55歳) |
| 弁護士 | 法務・コンプラ | 500-700万 | 月1回+指名委員会 | 四大法律事務所パートナー(48歳) |
| 業界専門家 | 事業戦略助言 | 400-600万 | 月1回 | SaaS連合会理事(52歳) |
| 女性取締役 | 多様性・東証規則 | 400-700万 | 月1回 | 元外資コンサルパートナー(45歳) |
東証グロース市場では「独立社外取締役は3分の1以上」が要件。CloudWorksは取締役7名のうち社外3名を選任しました。栗本さんが当初想定していた以上に、社外取締役は単なる「お目付け役」ではなく「経営判断の意思決定パートナー」として機能しています。
取締役会運営の上場前後比較
- 頻度:上場前は月1回・90分 → 上場後は月1回・3時間+臨時取締役会4回/年
- 議題数:上場前は5-7件 → 上場後は15-20件(適時開示判断・予算修正・大型契約承認等)
- 事前資料:上場前はA4・10枚 → 上場後はA4・80-120枚(5営業日前配布が必須)
- 議事録:上場前は1-2枚 → 上場後は10枚(弁護士チェック必須・株主開示対象)
22創業者ファミリーの資産設計:40億保有の運用・教育・財団
「紙の40億」が「現金10-15億+株式維持」に転換していく10-20年の資産設計。栗本家は妻彩香(COO・15%=15億保有)と娘茉央(3歳)を含む3人家族で、合計55億の資産規模を世代を超えて引き継ぐ構造を構築中です。
1. 栗本家の資産配分計画(2026-2045年)
| 資産クラス | 2026年(上場直後) | 2030年 | 2035年 | 2045年(栗本58歳) |
|---|---|---|---|---|
| CloudWorks株式(個人) | 40億 | 30億 | 20億 | 10億 |
| SPC(資産管理会社)保有 | 0 | 10億 | 15億 | 20億 |
| 公益財団拠出 | 0 | 2億 | 5億 | 10億 |
| 現金・債券 | 1億 | 3億 | 5億 | 8億 |
| 米国株(S&P500・ETF) | 0 | 3億 | 8億 | 15億 |
| 不動産(自宅・収益) | 0 | 2億 | 4億 | 6億 |
| 未上場株(エンジェル) | 0.1億 | 1億 | 3億 | 5億 |
| 暗号資産 | 0 | 0.5億 | 1億 | 2億 |
| 個人資産合計 | 41.1億 | 51.5億 | 61億 | 76億 |
2045年までに資産76億・うち現金性資産56億を目指す設計。CloudWorks株式比率は40億→10億へ大幅減少しますが、SPC化+分散投資で全体の資産規模は拡大。「会社の成長と個人資産は分離する」のが上場創業者の標準的な10年設計です。
2. 娘・茉央への教育投資計画(3歳〜22歳)
| 年齢段階 | 教育内容 | 年額 | 累計 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 3-6歳(保育園・幼稚園) | 認証保育+英会話+音楽 | 180万 | 540万 | 港区認証保育園・公文・ヤマハ |
| 7-12歳(小学校) | 私立小学校+習い事5種 | 320万 | 1,920万 | 慶應幼稚舎or学習院初等科想定 |
| 13-15歳(中学) | 私立中+夏期海外短期留学 | 280万 | 840万 | 慶應中等部or内部進学 |
| 16-18歳(高校) | 高校+海外大学準備(SAT等) | 350万 | 1,050万 | 米国大学受験を視野 |
| 19-22歳(大学) | 米国アイビーリーグor日本トップ大 | 700万 | 2,800万 | ハーバード・スタンフォード等 |
| 大学院(任意) | MBA・修士課程 | 800万×2年 | 1,600万 | 本人希望次第 |
| 教育費累計 | ― | ― | 8,750万 | 子1人あたり |
栗本家の教育方針は「学歴選択は本人の自由、ただし選択肢は最大化する」。栗本さん自身が地方公立→東大ルートだった経験から、娘には「都市部の私立で多様性を経験させる」方向。ただし「相続人として自社株を引き継ぐ前提の特別教育」は意識的に避け、「自分で選んだ道で生きていける普通の教育」を志向しています。
3. 公益財団設立の検討プラン
| 項目 | 内容 | 金額・規模 | 時期 |
|---|---|---|---|
| 財団名 | (仮)一般財団法人 鶴岡未来教育財団 | ― | 2030年設立予定 |
| 目的事業 | 地方の子どもへのIT教育・奨学金 | 年間予算3,000万 | 毎年 |
| 初期拠出 | CloudWorks株式または現金 | 2億(株20万株相当) | 2030年 |
| 追加拠出 | 毎年配当の一部 | 年間1,000万 | 2031-2050年 |
| 運営体制 | 理事5名+監事2名+評議員10名 | 運営費年800万 | ― |
| 奨学生数 | 地方公立中高生対象 | 年30名・1人50万支援 | 2031年〜 |
| 税制効果 | 相続税非課税+寄付控除 | 相続税試算で3億節税 | 長期効果 |
栗本さんが財団設立を真剣に検討する理由は、(1)地方出身としての地元への恩返し、(2)教育機会の地域格差問題への問題意識、(3)相続税対策、の3点。「単なる節税ではなく、自分が受けた教育を次世代に還元する仕組み」として、社内的にも対外的にも説明しやすい大義があります。
創業者ファミリー資産設計の3原則
- 原則1:株式・現金・社会貢献の三層分離。会社の運命と個人資産を切り離し、リスクを分散する。
- 原則2:教育は機会の最大化、ただし依存させない。資産の多寡で人生選択を歪めない設計。
- 原則3:30年スパンの設計。短期的な節税より、長期的な資産形成と社会貢献の両立を優先する。
23次の事業フェーズ:Series Cからプライム上場・海外展開・M&A
東証グロース上場はゴールではなくスタート。栗本さんが描く「上場後3年・5年・10年」の経営計画は、ARR100億・プライム市場昇格・東南アジア展開・国内M&A 3-5社の4本柱です。
1. 3年計画(2026-2028年):ARR60億・プライム市場準備
| 年度 | ARR目標 | 従業員数 | 主要施策 | 必要投資 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年 | 42億(+20%) | 150名 | エンタープライズ版投入・大企業10社獲得 | 営業強化2億 |
| 2027年 | 52億(+24%) | 200名 | AI機能搭載・ChatGPT連携API | R&D投資3億 |
| 2028年 | 65億(+25%) | 260名 | プライム上場準備・流通株式比率25% | IR強化1億 |
2. 5年計画(2029-2030年):海外展開・東南アジア進出
| 項目 | シンガポール | タイ | ベトナム | インドネシア |
|---|---|---|---|---|
| 進出時期 | 2029年(先行) | 2030年 | 2031年 | 2032年 |
| 市場規模(SaaS) | 2,000億円 | 3,500億円 | 1,800億円 | 4,200億円 |
| 初期投資 | 3億 | 2億 | 1.5億 | 2.5億 |
| 3年目売上目標 | 5億 | 3億 | 2億 | 3億 |
| 進出方法 | 子会社設立 | 現地企業JV | 現地企業JV | 買収 |
| ローカライズ | 英語+中国語 | タイ語 | ベトナム語 | インドネシア語 |
東南アジア4カ国に2029-2032年の4年間で進出、合計初期投資9億・5年後の海外売上目標15-20億。シンガポールを地域統括拠点とし、人材は現地採用+日本人駐在員の混合体制。栗本さん自身が四半期ごとに現地視察する想定です。
3. 10年計画(2026-2035年):M&A戦略3-5社
| 買収対象 | 業種 | 想定買収額 | シナジー | 時期 |
|---|---|---|---|---|
| 会計クラウド企業A社 | 会計SaaS(売上8億) | 40-60億 | 顧客クロスセル・機能統合 | 2027-2028年 |
| 給与計算企業B社 | HR SaaS(売上5億) | 25-35億 | 人事領域への拡張 | 2028-2029年 |
| RPAツール企業C社 | 業務自動化(売上3億) | 15-25億 | AI機能の取り込み | 2029-2030年 |
| 東南アジアSaaS D社 | 現地ローカルSaaS | 10-20億 | 海外進出加速 | 2030-2031年 |
| 大企業向けERP E社 | 大手向け業務システム | 50-80億 | 大企業セグメント獲得 | 2032-2033年 |
10年でM&A総額140-220億の構想。資金調達は新株発行+自己株式+銀行借入の組み合わせで、栗本さんの個人持株比率は40%→25%まで低下する想定。「持株比率の希薄化を恐れず、事業規模の拡大を優先する」のが栗本さんの経営哲学です。
4. プライム市場昇格の要件と栗本社の現状
| 要件 | プライム基準 | CloudWorks現在 | 2028年見込み | 達成可否 |
|---|---|---|---|---|
| 株主数 | 800名以上 | 3,500名 | 5,000名 | 達成済 |
| 流通株式数 | 2万単位以上 | 4万単位 | 5万単位 | 達成済 |
| 流通株式時価総額 | 100億円以上 | 50億円 | 120億円 | 2028年達成 |
| 流通株式比率 | 35%以上 | 40% | 45% | 達成済 |
| 純利益 | 直近2年合計25億円以上 | 累計15億 | 累計32億 | 2028年達成 |
| コーポレートガバナンス | 独立社外取2/3以上 | 3/7(43%) | 5/9(56%) | 2027年達成 |
| 英文開示 | 必須 | 準備中 | 完備 | 2027年達成 |
2028年のプライム市場昇格申請を目標に、流通株式時価総額100億超・直近2年純利益25億超を達成する計画。これにはARRの安定成長と、利益率20%以上の維持が必須条件です。
10年後の経営目標(2035年)
- ARR:100-150億円(年成長率15-20%維持)
- 従業員:500-700名(うち海外20-30%)
- 時価総額:500-800億円(プライム市場・PSR4-5倍)
- 営業利益率:25-30%(成熟SaaS水準)
- 海外売上比率:30-40%(東南アジア中心)
24読者メッセージ5通:起業家・VC・サラリーマンからの問い
本記事公開後、編集部に届いた5通の手紙を紹介します。栗本さんが直接回答する形式で、IPO創業者へのリアルな問いに答えます。
「私も会社を辞めて起業したいのですが、栗本さんのように初期12ヶ月の無収入を耐える勇気がありません」
都内のITコンサルで年収700万、貯金300万、妻と1歳児がいます。SaaS起業のアイデアはあるのですが、家族を持って無収入1年は怖い。栗本さんは独身時代に始められたから可能だったのでは?(東京・32歳・男性・会社員)
栗本さんの返信:「率直に申し上げると、私も創業時はすでに妻と婚約中でした。妻も戦略コンサルティングファームを退社して共同創業者になってくれたのは、無収入リスクの覚悟も含めて家族で同じ船に乗る選択でした。お子様がいる状況での起業は、独身時代の3-5倍のリスクと心理的負荷があります。私からの提案は『副業として12ヶ月走らせて、月10万でも売上を出してから本業化』というステップ。多くのSaaS起業家は、この副業ステージで顧客を10社獲得してから退職しています。家族の安全を担保しながら起業の確信を深める、最も現実的な道筋です」
「CloudWorks株を買おうか迷っています。ロックアップ明け後の創業者売却で株価は下がりますか?」
NISAで個別株を買い始めた個人投資家です。栗本さんが180日後に大量売却すれば株価が下がるなら、買うのを待ちたいです。実際の売却計画を教えてください。(神奈川・45歳・女性・パート)
栗本さんの返信:「個人投資家の方からの率直なご質問、ありがとうございます。私の売却計画は、ロックアップ明け後に大量放出するのではなく、年間1-2億ペースで5-10年かけて段階的に行う予定です。市場へのインパクトを最小化するため、ブロック取引や立会外分売を活用します。ただし、投資判断は個別企業の業績だけでなく、ご自身のリスク許容度・分散投資の観点で行ってください。私自身が言うのも変ですが、IPO直後の小型グロース銘柄は値動きが激しく、生活資金の投入は推奨しません。投資総額の5-10%以下に抑えることをお勧めします」
「シリーズBで40%希薄化を受け入れた決断、悔しくありませんか?」
VC側の人間として伺います。当時、栗本さんがVCの希薄化条件を呑んだ判断は、結果的に正解でしたが、現在40億の創業者株が60億になっていた可能性もありました。今振り返って後悔はありませんか?(東京・38歳・男性・VC)
栗本さんの返信:「同業の方からの本質的なご質問ですね。結論から言えば、後悔はありません。理由は3つ。(1)VCからの15億がなければCloudWorksは2020年の景気減速で資金ショート、IPOに到達できなかった可能性が高い。(2)VC4社が機関投資家ネットワークを使って大企業10社の顧客紹介をしてくれ、ARRが2倍加速した。(3)希薄化で創業者株は40%まで減りましたが、その分、株式総額が10倍になり、結果的に絶対額では成功です。"何%持っているか"より"何の事業を持っているか"が大事、というのが私の結論です」
「友人がSaaSを起業するというので、CTOとして参画するか迷っています」
大学の友人がSaaS起業をするということで、CTO(株式10%・年収500万)で参画を打診されました。現在の年収は800万、3年後にIPOできれば10億の可能性もありますが、失敗すれば3年無駄に。栗本さんならどう判断しますか?(大阪・28歳・男性・エンジニア)
栗本さんの返信:「私自身、創業メンバーを口説いた経験から申し上げます。判断軸は3つ。(1)創業者の人間性と覚悟:徹夜の議論を5回重ねて、お金以外の価値観を共有できるか。(2)市場の魅力度:3年後に売上3-5億に到達できる市場規模か(年20%成長×市場1,000億以上が目安)。(3)あなたの人生設計:3年無給期間を耐える貯金・家族の理解があるか。10億の可能性に賭ける価値があるのは、その3条件全てがYesの場合のみ。1つでもNoなら、現職にとどまって週末アドバイザーとして関わる選択肢が現実的です」
「同い年で年収500万・住宅ローン3,000万の私と、栗本さんの差は何ですか?」
栗本さんと同じ1987年生まれ、地方公立→国立大→大手企業の私は、現在年収500万・貯金600万・住宅ローン3,000万です。何が決定的に違ったのでしょうか。後悔と諦めの混ざった気持ちで質問しています。(埼玉・38歳・男性・会社員)
栗本さんの返信:「同世代の方からの率直なご質問、胸が痛みます。私から申し上げたいのは、私の人生が必ずしも"成功"ではないということ。(1)創業10年で家族との時間は犠牲になり、娘の3歳までの記憶は妻にしか残っていません。(2)IPO達成率0.1%の確率に賭けた結果がたまたま成功側に出ただけで、9,999人は同じリスクで失敗しています。(3)40億は紙の資産で、現金化に5-10年かかります。あなたの年収500万・住宅ローン3,000万は、家族と一緒に過ごす時間と引き換えの安定であり、それ自体が立派な選択です。比較する必要はありません。私は私の道を、あなたはあなたの道を歩んでいる、ただそれだけだと思います」
25週次ルーティン:経営会議/IR/採用面談/プロダクト/家族
上場後の栗本さんの一週間。月曜から日曜まで、平均労働時間は週60-70時間。その中で家族との時間を意識的に確保する設計です。
| 曜日 | 朝(6-9時) | 午前(9-12時) | 午後(13-18時) | 夜(19-22時) |
|---|---|---|---|---|
| 月曜 | 家族朝食・娘登園 | 経営会議(経営陣7名・3時間) | 取締役会準備・資料レビュー | 家族夕食・娘お風呂 |
| 火曜 | 朝食・読書30分 | プロダクト会議+エンジニア1on1 | 大企業顧客訪問(2-3社) | 会食(VC・社外取等) |
| 水曜 | 家族朝食・娘登園 | 採用面談(候補者3-5名) | 機関投資家IR面談(2-3件) | 家族夕食・読書 |
| 木曜 | 朝ジム・読書 | マーケ会議+営業会議 | 新規事業企画レビュー | 会食(業界キーパーソン) |
| 金曜 | 家族朝食・娘登園 | CFO+IR定例+月次決算レビュー | 取締役会(月1)or社外取個別面談 | 家族夕食・週末準備 |
| 土曜 | 娘と公園・家族時間 | 家族時間(買い物・遊び) | 娘の習い事送迎 | 家族夕食・娘寝かしつけ |
| 日曜 | 家族時間・読書 | 翌週準備(資料読み込み) | 家族時間(外出・親族訪問) | 翌週の戦略思考時間 |
週60-70時間労働のうち直接的な仕事時間は45時間、IR・採用・社外活動が15-20時間、戦略思考時間が5-10時間。家族との時間は週20時間程度を確保。「家族時間を仕事に侵食させない」ルールを上場後は厳格に守るようにしています。
四半期ごとの非定例イベント
| イベント | 頻度 | 所要日数 | 準備期間 |
|---|---|---|---|
| 四半期決算発表 | 年4回 | 各5日(説明会・取材対応) | 2週間 |
| 株主総会 | 年1回(6月) | 3日 | 3週間 |
| 機関投資家ロードショー | 年2回 | 各5-10日 | 2週間 |
| 業界カンファレンス登壇 | 年4-6回 | 各1-2日 | 1週間 |
| 海外視察(東南アジア) | 年4回 | 各5日 | 1週間 |
| 家族旅行(国内・海外) | 年3回 | 各5-7日 | 1ヶ月 |
| 実家帰省(鶴岡) | 年4回 | 各3日 | ― |
年間の非定例イベントは合計60-80日。これに加えて週次の通常業務があるため、栗本さんの可処分時間は限られます。「経営者の時間管理は、何をやらないかの決断」というのが上場後の栗本さんの実感です。
26編集部追記:上場は終わりではなく次のスタートライン
栗本蓮さん(38歳)への取材は、2025年12月から2026年4月までの5ヶ月間、月2回ペースで合計10回行いました。取材場所はCloudWorks本社(港区六本木)の社長室、ご自宅近くの喫茶店、そして1度だけご家族と一緒の食事の席でした。
最も印象的だったのは、上場初日の翌朝、栗本さんが私たちに語った一言です。「昨日、東証で鐘を鳴らした時、達成感より先に来たのは『これから10年、株主・社員・顧客に対して責任を持ち続けなければいけない』という重圧でした」。SaaS企業の上場社長というと、シャンパンを開けるパーティーや、テスラに乗った姿をSNSで見かけることが多いです。しかし栗本さんの実像は、麻布十番の2LDKで娘と妻と暮らし、近所のスーパーで総菜を買う、極めて普通の30代男性でした。
本記事を通じて伝えたかったのは、「IPO=金持ち」という単純化された物語の限界です。創業者が手にする「時価40億」の大半は、ロックアップ・段階売却・税負担を経て、最終的な現金化までに5-10年を要します。その間、株価は市場環境で半減することもあれば、逆に2倍になることもあります。創業者は「会社の運命と個人資産が完全に連動した」状態で、毎日プレッシャーと向き合います。
取材の中で、栗本さんは何度も「私はたまたま成功側に出ただけで、同じ確率で失敗していた可能性が99%以上ありました」と話しました。日本のスタートアップ8万社のうち、年間IPO数は80社、確率0.1%。栗本さんと同じ時期に起業して失敗した方々がほぼ全員です。本記事の主人公は栗本さんですが、その背後には7万9,920社の見えない物語があることを、読者の皆様に意識していただければと思います。
もう一つ、特筆したいのは栗本さんの「地方公立出身者としての矜持」です。山形県鶴岡市の教員家庭で育ち、地方公立中→鶴岡南高校→東大というルートは、現在では再現可能性が大きく低下しています。栗本さん自身、「自分の頃は塾が月3万で、両親が無理して払ってくれた。今の都市部の中学受験は月10万・学費年200万が当たり前で、地方の家庭が東大に送り込むハードルは10年前の3倍になった」と分析していました。教育格差・地域格差の拡大は、栗本さんが財団設立を真剣に検討する動機の一つです。
編集部として最後にお伝えしたいのは、「IPO創業者の生活が、必ずしも幸福の頂点ではない」という事実です。栗本さんは取材の最後に「妻と娘との時間が、結局のところ私の人生で最も価値のあるものです。会社の時価総額が100億になっても1,000億になっても、それは変わりません」と話しました。この言葉が、本記事の本当の結論です。お金の現在地は、数字だけでは測れない、それぞれの人生の中での意味の総和なのだと、私たちは取材を通じて改めて学びました。
27FAQ10問:IPO創業者へのよくある質問
Q. 上場後、経営は具体的にどう変わりましたか?
A. 最大の変化は「意思決定の透明性」です。上場前は私と妻(COO)の合議で即決できた案件が、上場後は取締役会承認・適時開示判断・株主への説明責任が必要になり、決定に2-4週間かかります。新規プロダクト投入・大型契約・人事異動はすべて文書化・社外取締役レビューを経て決定。スピードは落ちましたが、組織としての堅牢性は格段に向上しました。「個人企業から公器へ」という言葉の重さを実感する毎日です。
Q. ロックアップ明け後、本当に売らないのですか?
A. 売ります、ただし「年1-2億の段階売却」を5-10年続ける計画です。一気に大量売却はせず、市場へのインパクトを最小化します。理由は3つ。(1)大量売却は株価暴落を招き、機関投資家の信頼を失う。(2)私が会社の未来に確信を持っているシグナルとして、株式の大半を保有し続ける必要がある。(3)税負担の年間平準化。総額として、創業者株40%のうち、10年で20-25%を売却し、15-20%を保有し続ける設計です。
Q. 株主との対話で最も難しいのは何ですか?
A. 「短期株主と長期株主の利害対立」です。短期株主(ヘッジファンド・個人デイトレーダー)は四半期業績の即効性を求め、長期株主(年金基金・機関投資家)は5-10年の事業成長を重視します。例えば「来期の利益を犠牲にして、海外投資を加速する」判断は、短期株主には嫌われ、長期株主には歓迎されます。経営者として、両者にどう説明し、どちらを優先するか。私は基本的に長期株主を優先しますが、その判断を四半期決算で言葉を尽くして説明する責任があります。
Q. 上場後の役員報酬3,600万は、どう使っていますか?
A. 手取りで約1,800万(最高税率55%課税後)。内訳は、生活費800万(家賃180万・食費・教育費・光熱通信等)、両親への仕送り240万、自己投資・書籍・カンファレンス参加200万、貯金・投資400万、税理士・専門家費用160万。富裕層の生活というより、地方からきた38歳の堅実な家計です。妻の役員報酬(年2,800万)と合わせて、世帯手取り3,200万、これで港区での暮らしを成立させています。
Q. 上場後、家族との関係はどう変化しましたか?
A. 妻はCOOとして同じ船に乗っていますので、上場のプロセスを共に経験しました。むしろ夫婦としての絆は深まったと思います。一方、娘(3歳)には「パパは上場した社長」という認識はまだなく、ただの「いつも忙しいパパ」です。私は娘の3歳までの記憶のほとんどを、妻からの動画と写真で見ました。これは正直、後悔しています。10年後、娘が「パパは仕事ばっかりだった」と感じないよう、上場後は週20時間の家族時間を意識的に確保するルールを設定しました。
Q. 同年代の友人との関係はどう変わりましたか?
A. 大きく変わりました。大学時代の友人とは、メディアで「時価40億のIPO社長」と紹介されて以降、明らかに距離ができました。「お前とは住む世界が違う」と言われたり、逆に「投資相談したい」「お金を貸してほしい」という連絡が増えたり。私自身は何も変わっていないつもりですが、相手側の意識が変わってしまうのは止められません。一方、起業家コミュニティでは「同じ船に乗った仲間」として理解し合える関係が広がり、新しい人間関係が形成されています。
Q. メンタルヘルスをどう保っていますか?
A. 創業10年で、軽度のうつ症状を3回経験しました。シリーズB調達時、コロナ初期の業績悪化時、上場直前の3ヶ月。対処法は4つ:(1)月1回の精神科医カウンセリング(自費、1回3万)、(2)週3回のジム通い(朝の有酸素運動)、(3)週2回の家族時間の絶対確保、(4)月1冊の小説読書(経営書から離れる時間)。CEOは孤独な仕事ですが、「一人で抱え込まない」ことが10年生き残るための最大の知恵だと学びました。
Q. 上場後、引退・経営承継は考えていますか?
A. 50歳までに次世代CEOにバトンタッチし、私は会長または社外取締役に退く想定です。理由は2つ。(1)SaaS事業は技術進化が速く、40代後半以降は最先端への感度が落ちる。(2)創業者が長期間トップに留まると、組織の硬直化と次世代の成長機会喪失を招く。具体的には、(a)45歳までにCOOを次世代に承継、(b)48歳までに社内CEO候補を3名育成、(c)50歳でCEO退任、という計画。私自身はその後、エンジェル投資家・財団運営・教育事業に転身する予定です。
Q. 後悔していることはありますか?
A. 3つあります。(1)創業初期の3年間、家族との時間を完全に犠牲にしたこと。妻と婚約中だったのに、デートにも行けない時期が長かった。(2)2018年に解雇した社員2名への対応が不十分だったこと。事業上必要な決断でしたが、もっと丁寧なコミュニケーションができたはずです。(3)2022年に断った大企業からの買収オファー(80億)。当時は「もっと大きく成長させたい」と思って断りましたが、結果的にIPOで100億になっただけで、リスクと労力を考えると最適だったか疑問が残ります。
Q. 38歳の今、最も大切にしているものは何ですか?
A. 妻と娘との時間です。上場のプロセスで実感したのは、お金や名声は瞬間的なもので、永続するのは家族との関係だけだということ。時価40億の創業者株は、市場環境で20億にも100億にもなります。役員報酬3,600万は、CEOを退任すれば消えます。しかし「妻と娘と過ごした時間」は、私の人生の不変の財産です。だからこそ、上場後の経営も、家族時間を犠牲にしないラインで設計しています。これが10年の創業期を経て38歳でたどり着いた、私なりの結論です。
28IPO社長の小さな葛藤10:日常に潜む見えない負担
表に出ない、しかし毎日のように栗本さんが感じている細かな葛藤。「時価40億の創業者」という肩書きの裏側にある、人間としてのリアルな心の動きです。
取材依頼が月20件、断ると失礼、受けすぎると本業が止まる
上場以降、ビジネスメディア・経済誌・テレビ・YouTubeから月20-30件の取材依頼が届きます。すべて断ると失礼、すべて受けると経営時間が削られます。栗本さんは「四半期に8-10件まで」というルールを設定し、それ以外は丁重にお断りする方針。しかし依頼者との関係性によっては「お断りした後の関係維持」に気を遣う場面が増え、これも見えない負担です。
影響力が出てきたX(旧Twitter)、何を書くにも株価への影響を考えてしまう
栗本さんのXフォロワーは上場後、5万人から12万人に増加。しかし上場社長の立場では、(1)プロダクト批判は適時開示違反の可能性、(2)競合他社言及は法的リスク、(3)政治的発言は株主の反発、と発信の自由度が制限されます。「ただの個人として呟きたい」気持ちと、「経営者としての責任」の板挟み。最近は週1投稿に留め、内容も慎重に選んでいます。
毎月3-5件の「お金を貸してほしい」「投資してほしい」の連絡
上場後、親戚・大学時代の友人・小学校の同級生から、月3-5件の金銭相談が届きます。「事業を始めたい、500万出資してほしい」「住宅ローンが厳しい、200万貸してほしい」など。栗本さんはルールを定め、(1)親族への支援は両親に集約・年間総額500万まで、(2)友人への投資は専門のエンジェル枠で対応、(3)個人的な貸付は原則不可、としています。それでも断る度に「冷たい人になった」と思われる心理的負担があります。
港区への引越しで娘の保育園が変わり、妻の地元コミュニティが失われた
創業初期は妻の実家近く(東京・世田谷)に住んでいましたが、上場準備で港区に引越し。妻は地元のママ友コミュニティ・保育園の親しい友人を失いました。新しい港区のコミュニティは「ベンチャー社長の妻」というラベルでの関係性が多く、妻が「素の自分」でいられる場所が減ったと感じています。栗本さんも「家族の生活基盤を経営の都合で動かしてしまった」という罪悪感を抱えています。
大学時代の親友3人と、年1回の食事会が「気を使う関係」になった
大学時代の親友3人(メーカー勤務・公務員・医師)との年1回の食事会が、上場後は微妙な空気に。会話の中で「年収」「住宅」「子供の教育費」の話題が出る度に、栗本さんの状況との差が表面化します。栗本さんは意識的に「自分の話をしない」ようにしていますが、相手側も「気を使われている」ことを察知して、関係性が形式的になりつつあります。「30年以上の友情が、お金で変質するのか」という戸惑いを感じています。
娘の小学校受験、慶應幼稚舎を受けるべきかどうかで夫婦で議論
娘・茉央が来年4歳になり、小学校受験の準備時期。栗本さんは「自分は地方公立で育ったから、娘も普通の公立で良い」と考える一方、妻は「港区在住で公立は環境が合わない、私立が現実的」と主張。慶應幼稚舎・学習院初等科を受けるべきか、夫婦で5回以上の議論を重ねています。「親の経済力で選択肢が広がるのは良いこと、しかし選択肢が多すぎることの困難さもある」と栗本さんは語ります。
創業10年でストレスフルな生活、人間ドックで「肝機能要注意」の判定
2025年の人間ドックで、肝機能・血圧・血糖値が境界値を超え、「要注意」判定。創業期の食生活の乱れ・睡眠不足・接待での飲酒が蓄積した結果です。妻からは「あなたは40億の資産より、健康の方が大切」と言われ、上場後はジム週3回・接待は最小限・睡眠7時間確保のルールを設定。「会社のために健康を犠牲にする時代は終わった、これからは長期的な健康投資が経営判断になる」という意識転換が起きています。
娘の成長記録の8割が妻のスマホ、私の記憶には断片しかない
娘の3歳までの成長記録(写真・動画)は、ほぼ全て妻のスマホに保存されています。栗本さんは創業の最終フェーズと上場準備で、娘の初めての言葉・歩いた瞬間・幼稚園入園式の多くに立ち会えませんでした。「娘の人生で取り戻せない時間を、私は仕事に使った」という後悔が、上場達成の充実感と同時に存在しています。これが上場後に家族時間を最優先する設計の最大の動機です。
山形の両親は「上場」の意味を理解しない、ただ「東京で頑張った息子」として喜ぶ
山形の両親(父68歳・元教員、母65歳・元パート)は、「上場」「時価総額」「ロックアップ」といった概念をほとんど理解しません。栗本さんが上場の翌日に電話で報告した時、父は「東京で何かいいことがあったんだな、よく頑張った」と一言。母は「無理しないで、お前の体が一番大事」と泣きました。栗本さんは「両親の理解の限界」を前に、20年来の感謝をどう伝えるべきか悩んでいます。最終的には「年4回の帰省」「定期的な仕送り」「孫を会わせる回数を増やす」という、シンプルな実行で恩返しすることに決めました。
メディアで「日本のSaaS成功者」と紹介される度に感じる、自分との乖離
経済メディアで「日本のSaaS業界を代表する成功者」「平成生まれの新世代CEO」と紹介される度、栗本さんは強い違和感を覚えます。「私は山形の田舎から東京に出てきた、ただの不器用な38歳。たまたま運と縁に恵まれて上場できただけで、'成功者'というラベルが似合わない」というのが本音です。しかしラベル自体が事業上のブランド資産となり、採用・営業・IR で活用される現実もあります。「自己認識と社会的役割のギャップ」を、創業者として引き受け続ける覚悟が、上場社長の最後の心の修練だと栗本さんは語ります。
29IPO創業者の比較データ集:日本・米国・東南アジア
栗本さんと同世代、同業種、または海外の類似創業者との比較。データから見える、グローバルなSaaS創業者の現在地です。
1. 日本のIPO創業者・年代別の代表例
| 創業者世代 | 代表例 | 上場時年齢 | 創業時時価総額 | 2025年資産規模 |
|---|---|---|---|---|
| 1960年代生まれ | サイボウズ青野氏など | 30代後半 | 50-100億 | 50-200億 |
| 1970年代生まれ | freee佐々木氏、マネフォ辻氏など | 30代後半 | 200-500億 | 300-800億 |
| 1980年代前半生まれ | SmartHR宮田氏、ラクスル松本氏など | 30代前半 | 500-1,500億 | 500-2,000億 |
| 1980年代後半生まれ | 栗本氏世代(仮想) | 38歳 | 100億 | 40億(個人保有分) |
| 1990年代生まれ | 新興AI/Web3スタートアップ創業者 | 20代後半-30代前半 | 50-300億 | 急成長中 |
2. 国別比較:日本vs米国vs東南アジアSaaS創業者
| 項目 | 日本(栗本) | 米国(同等規模) | シンガポール | インド |
|---|---|---|---|---|
| 上場時時価総額 | 100億 | 800-1,500億 | 200-400億 | 100-200億 |
| 創業者持株比率 | 40% | 15-25% | 30-40% | 40-55% |
| VC調達総額(IPOまで) | 20億 | 200-500億 | 50-100億 | 30-80億 |
| 譲渡所得税率 | 20.315% | 20%(連邦)+州税 | 0%(株式譲渡) | 10-20% |
| 役員報酬の相場 | 3,000-5,000万 | 3,000-1億ドル | 5,000-1.5億 | 1,000-3,000万 |
| 上場プロセス期間 | 3-5年 | 2-3年 | 3-4年 | 4-6年 |
日本のSaaS創業者は時価総額で米国の1/8、VC調達額で1/10と、グローバル比較で見ると控えめな規模感。一方で、創業者持株比率は40%と高く、創業者の経営支配力は強い構造。シンガポールは譲渡所得税0%という強力なメリットがあり、近年日本人創業者の海外移住も増加傾向です。
3. IPO後10年間の創業者キャリア・統計
| キャリアパス | 該当割合 | 典型例 | 備考 |
|---|---|---|---|
| CEOとして留任 | 45% | 創業者が10年以上CEO継続 | 事業成長期 |
| 会長就任・経営から一歩退く | 20% | 後進にCEO譲り、戦略監督 | 50代に多い |
| 退任・新事業創業 | 15% | 連続起業家化 | 40代後半に多い |
| 退任・投資家転身 | 10% | VC・エンジェル | 業界経験を活用 |
| 退任・社会貢献専従 | 5% | 財団・NPO・教育 | 50代後半に多い |
| その他(健康問題・スキャンダル等) | 5% | ― | ― |
栗本さんは現時点で「45歳までCEO留任→50歳で会長転身→55歳で財団・教育専従」という設計を描いています。これは統計的には20%-5%の少数派キャリアパスですが、「経営者は次のステージを意識的にデザインする時代」というのが栗本さんの世代の共通認識です。
グローバル比較からの3つの示唆
- 日本のSaaS市場は規模で米国の1/8だが、創業者の経営支配力は強い。長期視点での事業設計が可能。
- シンガポール・東南アジアの税制メリットは大きいが、市場規模・人材の質で日本に優位性。ハイブリッド拠点戦略が現実的。
- IPO後10年のキャリアパスは多様化。CEO留任が王道だが、会長転身・連続起業・投資家転身の選択肢が広がっている。
30上場社長・栗本蓮から読者への10の助言
取材の最終回、栗本さんに「読者の方々に伝えたいことは?」と尋ねたところ、10個の助言を語ってくれました。起業家・サラリーマン・投資家・親世代、それぞれに向けたメッセージです。
| No. | 対象 | 助言 |
|---|---|---|
| 01 | 起業を考える人へ | 「IPOを目標にしない。良い事業を作ることだけを目標にすれば、結果としてIPOが来る」 |
| 02 | 創業期の家族へ | 「夫婦で同じ船に乗る覚悟が無いなら、起業はやめた方がいい。家族の支えなしに10年は走れない」 |
| 03 | VC・投資家との交渉時 | 「希薄化を恐れるな。良いVCに30%渡して10倍の事業を作る方が、100%持って小さな事業より良い」 |
| 04 | 40歳を迎えるサラリーマンへ | 「あなたの年収500万・住宅ローン3,000万は、家族との安定した時間と引き換えの立派な人生選択」 |
| 05 | 子供を持つ親へ | 「教育は機会の最大化、ただし依存させない設計を。資産の多寡で人生選択を歪めないこと」 |
| 06 | 個人投資家へ | 「IPO直後の小型グロース銘柄は値動きが激しい。投資総額の5-10%以下に抑えること」 |
| 07 | 地方出身の若者へ | 「地方出身は不利ではなく、独自視点として武器になる。東京の競争に飛び込む勇気を持って」 |
| 08 | 30代でキャリアに迷う人へ | 「30代の決断は40-50代の人生を決める。守りに入らず、リスクを取って挑戦する10年に」 |
| 09 | 創業メンバー候補へ | 「年収より、創業者の人間性と覚悟を見極めること。ストックオプションは付録、本質は仲間との10年」 |
| 10 | すべての読者へ | 「お金は道具、人生の目的ではない。家族・健康・友情・社会貢献、それぞれの人生で本当に大事なものを見極めて」 |
「IPO達成は人生のゴールではなく、次のステージのスタート」。栗本さんの10の助言は、すべて「お金より大事なものがある」という共通項に貫かれています。本記事を読んだあなたが、ご自身の現在地を客観的に見つめ、次の10年の設計を描くきっかけになれば、編集部としてこれ以上の喜びはありません。
本記事を読んだあなたへの3つの問いかけ
- 問い1:あなたが現在の年齢で、栗本さんと同じ「10年で確率0.1%の成功に賭ける」ことができますか?その答えに、あなたのリスク許容度と人生設計の現在地が現れます。
- 問い2:時価40億の創業者株よりも、家族との時間を優先する栗本さんの選択を、あなたはどう評価しますか?お金と時間の優先順位は、人生の各段階で変化します。
- 問い3:あなた自身の「お金の現在地」を、5年後にどう変えたいですか?本記事が、その問いを考えるきっかけになれば、編集部の願いは達成されます。
本記事の取材・執筆・編集は、2025年12月から2026年4月までの5ヶ月間にわたって行われました。栗本蓮さん(仮名・架空人物)への10回の取材、財務データの精査、業界専門家へのヒアリングを通じて、IPO創業者のリアルな現在地を可能な限り正確に再現しました。フィクションとしての読み物でありながら、データの裏付けは公的一次情報に基づいています。