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浸透圧計算機|van't Hoff式で溶液の浸透圧を即算出

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浸透圧は半透膜を通じて溶媒が濃度勾配に従って移動する際に発生する圧力で、細胞膜の水分バランス、逆浸透膜(RO)による海水淡水化、食品の浸透脱水、植物の吸水など、化学・生命科学・環境工学の基礎現象です。本ツールはvan't Hoff式 π=iCRTによって、モル濃度・温度・van't Hoff因子(電解質の解離数)から浸透圧を気圧(atm)・パスカル(Pa)で瞬時に算出。0.9%食塩水=約7.8 atm(37℃・i=2)、海水=約25 atm、細胞の浸透・膨潤・収縮、逆浸透膜の駆動圧力設計まで、化学・水処理・食品科学の実務に対応します。

最終更新:2026-07-26/監修:計算ツールズ編集部

浸透圧ツール

van't Hoff式の基本

π = i × C × R × T

π:浸透圧(atm)、i:van't Hoff因子(解離により生じる粒子数)、C:モル濃度(mol/L)、R:気体定数 0.0821 L·atm/(K·mol)、T:絶対温度(K)。1885年にJacobus van't Hoffが提唱し、理想気体の状態方程式(PV=nRT)と数学的に同型なため、「希薄溶液は気体のように振る舞う」というアナロジーで理解可能。van't Hoffはこの功績で1901年、第1回ノーベル化学賞を受賞しました。

SI単位系での表現

π[Pa] = i × C[mol/m³] × R[8.314] × T[K]

1 atm = 101,325 Pa = 101.325 kPa ≒ 760 mmHg。分野により mmHg・kPa・atm・Pa と表記が異なるため、計算結果の単位換算に注意します。

van't Hoff因子(i)の値

iは溶質が溶解時に生じる粒子数を表し、電解質(イオン性化合物)では解離度により決まります。

溶質 i(理想値) i(実測値、希薄溶液)
グルコース・ショ糖(非電解質) 1 1.00
尿素・エタノール(非電解質) 1 1.00
NaCl(1価-1価電解質) 2 約1.9(0.1 M時)
KCl 2 約1.9
MgSO₄(2価-2価電解質) 2 約1.4(イオン対形成)
CaCl₂(2価-1価電解質) 3 約2.7
Na₂SO₄ 3 約2.4
Al₂(SO₄)₃ 5 約3-4
酢酸(弱酸、部分解離) 1〜2 解離度による

理想値は完全解離を仮定した粒子数。実測値はイオン間相互作用・イオン対形成により理想値より小さくなる場合が多く、希薄極限で理想値に近づきます。分析化学で厳密な浸透圧計算にはDebye-Hückel理論等の補正が必要ですが、一般的な概算では実測値の代表を使用します。

主要溶液の浸透圧一覧

溶液 濃度 浸透圧(37℃) 用途・意義
純水 0 0 atm 基準
0.9%食塩水(NaCl) 0.154 M 約7.8 atm(308 mOsm/L、i=2) 電解質の例(i=2)
5%グルコース水溶液 0.278 M 約7.1 atm(278 mOsm/L) 非電解質の例(i=1)
10%NaCl 1.71 M 約87 atm(i=2) 塩蔵・食品保存
海水(塩分3.5%) 約1.1 M総塩類 約25 atm 逆浸透膜で超える必要がある圧力
死海(塩分34%) — 約350 atm 生物生存不可能
細胞質(細菌・植物) — 1〜10 atm 細胞膨圧の源
樹木の樹液 — 10-40 atm 高木の水柱を持ち上げる駆動力

等張・高張・低張と細胞

細胞を溶液に浸けたときの水移動は、細胞の内側と溶液の浸透圧の大小で決まります。

等張液(Isotonic)

細胞の内側と浸透圧が等しい溶液。水の出入りが釣り合い、細胞は形を保つ。

高張液(Hypertonic)

細胞の内側より浸透圧が高い溶液。水が細胞から流出し細胞が収縮する。塩漬け・砂糖漬けで食材の水分が抜けるのもこの現象。

低張液(Hypotonic)

細胞の内側より浸透圧が低い溶液。純水など。水が細胞内に流入し細胞が膨潤し、細胞壁のない細胞は破裂することがある。

植物の膨圧(Turgor Pressure)

植物細胞は液胞に高浸透圧溶液を蓄え、水を吸入して細胞壁を押し広げる膨圧を発生。しおれ・回復はこの膨圧の変動が本質。乾燥・塩害の生理学的機構。

オスモル濃度(Osm/L)と mOsm/L

Osm/L = i × mol/L

オスモル濃度は浸透圧に寄与する全粒子(電解質の解離イオン含む)の合計モル濃度。1 Osm/L = 1,000 mOsm/L(ミリオスモル/L)。

浸透圧⇔mOsm/L換算

37℃(310.15 K)で、1 mOsm/L ≒ 0.0255 atm。0.9%食塩水は 0.154 mol/L × 2 = 308 mOsm/L(理論値)なので約7.8 atm。

逆浸透膜(RO)と海水淡水化

逆浸透膜(Reverse Osmosis)は、海水の浸透圧(約25 atm)以上の外圧を掛けて水分子だけを膜透過させ、塩分を除去する技術。中東・シンガポール・沖縄等で大規模海水淡水化が稼働しています。

RO駆動圧力の設計

  • 海水淡水化: 60〜80 atmで運転(浸透圧+透過流量マージン)
  • 汽水(半塩水)淡水化: 10〜25 atm
  • 純水製造(工業用): 3〜15 atm
  • 家庭用RO浄水器: 3〜6 atm

ROは化学薬品を使わない省エネな脱塩技術として、火力発電所ボイラー水製造、半導体工場超純水、飲料用水の製造にも展開。膜素材の高性能化(ポリアミド系複合膜)により消費エネルギーは1970年代の20 kWh/m³から現在2.5〜3 kWh/m³まで低減しています。

分野別・活用シーン

水処理・海水淡水化

逆浸透(RO)膜による海水淡水化、工業純水・超純水製造、汚水再生水利用。膜駆動圧の設計・エネルギー効率評価に浸透圧計算が必須。

食品加工・浸透脱水

塩漬け・砂糖漬けによる食品保存(浸透圧で微生物増殖抑制)、梅干し・漬物の熟成、干物製造。冷凍時の氷結晶抑制にも浸透圧調整剤(グリセリン等)を活用。

細胞生物学・組織培養

細胞培養液の浸透圧調整(285-310 mOsm/L)、細胞洗浄液(PBS等)の等張化、細胞凍結保存液の設計。浸透圧ズレは細胞死・DNA損傷の原因。

農業・植物生理

灌漑水の塩分管理(塩害対策)、水耕栽培の養液設計、種子の吸水・発芽制御、耐乾性・耐塩性品種の育種。植物の膨圧維持は成長の基本。

化学分析・分子量測定

浸透圧測定(氷点降下法・膜浸透圧法)によるタンパク質・高分子の分子量決定。生化学・高分子化学の基本手法。

よくある間違い・注意点

  • 絶対温度への変換忘れ ― T[K] = T[℃] + 273.15。℃のまま入れると桁違いの浸透圧値。37℃なら310.15 K。
  • van't Hoff因子(i)を1にしたまま電解質を計算 ― NaClはi=2、CaCl₂はi=3。0.9%食塩水(0.154 M)を i=1 で計算すると浸透圧が半分になる。
  • %(w/w)と mol/L の混同 ― 0.9%(w/v)の食塩水は 9 g/L ÷ 58.44 = 0.154 mol/L に変換してから計算。%のまま入れると全く違う値。
  • 非電解質と電解質のiを同一視 ― グルコース(i=1)と NaCl(i=2)では同じmol/Lでも浸透圧は2倍差。浸透圧の見積もりを大きく誤る。
  • 希薄近似の限界 ― van't Hoff式は希薄溶液で成立。0.5 M超の濃厚溶液・イオン強度の高い液ではDebye-Hückel補正等が必要。海水の浸透圧計算は近似値。
  • 浸透圧は同じmol/Lで決まると誤解 ― 浸透圧を決めるのは粒子濃度(mOsm/L)。5%グルコース(0.278 M×1=278 mOsm/L)と0.9%食塩水(0.154 M×2=308 mOsm/L)は、mol/Lが2倍近く違っても浸透圧は近い。

参考文献・公的資料

※本ページの計算結果は理想希薄溶液の van't Hoff式に基づく概算値です。濃厚溶液(0.5 M超)・高イオン強度・非水溶媒等ではDebye-Hückel理論等の活量補正が必要。海水淡水化・工業用RO設計は膜メーカー仕様書と化学工学専門家の判断が必要です。

よくある質問(FAQ)

0.9%食塩水の浸透圧は?

0.9%(w/v) NaCl = 9 g/L ÷ 58.44 = 0.154 mol/L。i=2とすると37℃(310.15 K)で π = 2 × 0.154 × 0.0821 × 310.15 ≒ 7.8 atm、25℃では約7.5 atm。実際はイオン間相互作用でiが2より小さく、やや低めになります。

海水の浸透圧は?

塩分3.5%・総塩類濃度約1.1 mol/L相当で、37℃換算では約25気圧。逆浸透膜(RO)で海水淡水化する場合、この浸透圧以上の圧力(通常60-80 atm)を掛けて水分子だけを膜透過させる仕組みです。死海など塩分34%の環境では約350 atmと極端に高く、生物はほぼ生存不可能。

van't Hoff因子(i)って何?

溶質1粒子が水中で何個の粒子に解離するかを表す因子。グルコース等の非電解質はi=1、NaCl(Na⁺+Cl⁻)はi=2、CaCl₂(Ca²⁺+2Cl⁻)はi=3。理想値は完全解離を仮定した値で、実測値はイオン間相互作用によりやや小さくなります。浸透圧・凝固点降下・沸点上昇の計算で必須です。

等張液・高張液・低張液の違いは?

細胞の内側との浸透圧の大小で分類。等張液は水の出入りが釣り合い、高張液では細胞から水が抜けて収縮、低張液(純水など)では水が入って膨潤します。塩漬けで野菜がしんなりするのは高張液の例です。

浸透圧の単位はatm・mOsm・kPa どれを使う?

用途で使い分け。化学ではatm(気圧)、粒子濃度で表すときは mOsm/L(ミリオスモル)、SI標準では kPa/Pa。1 atm = 760 mmHg = 101.325 kPa。

細胞が溶液で破裂するのは?

低張液(細胞より薄い溶液)に細胞を浸すと、細胞内の高浸透圧に向かって水が浸入し膨潤・破裂(赤血球では溶血)します。逆に高張液では細胞脱水で萎縮(クレネーション)。細胞は等張液内でのみ正常形状を維持できます。

逆浸透膜(RO)の仕組みは?

半透膜の一方に塩水、他方に純水を入れると水は純水側から塩水側に自然浸透(浸透圧発生)。逆に塩水側に浸透圧以上の高圧を加えると水分子だけが純水側に押し出される。これがRO。海水(25 atm)を淡水化するには60-80 atmで運転。省エネな脱塩技術として海水淡水化・純水製造で世界的に稼働。

植物はなぜ高い木でも水を吸い上げられる?

植物の道管内は根から蒸散(葉からの水分蒸発)により陰圧が発生し、大気圧に加えて浸透圧・毛管力・凝集力で水柱を持ち上げます。樹木の樹液の浸透圧は10-40 atmに達し、100 m級の高木でも水を頂まで運搬可能。植物の吸水は物理化学的に驚異的な機構です。

塩漬け保存の科学的理由は?

食品を高濃度塩水に漬けると、食品細胞・微生物細胞の外側が高浸透圧になり細胞から水が抜けて増殖できなくなる。10%以上の塩分で腐敗細菌・カビの多くが活動停止。梅干し・漬物・塩鮭・味噌等の伝統的保存食は浸透圧を利用した微生物制御の実例です。

浸透圧測定はどうやる?

氷点降下法(浸透圧計、Osmometer)が一般的で、溶液の浸透圧を数分で測定できます。高分子(タンパク質等)の分子量測定には膜浸透圧法。van't Hoff式から実測浸透圧が分かれば解離度・平均分子量が逆算できます。