雨水貯留槽容量 計算ツール|合理式で集水量・最大流入量・タンク容量を算定
【ご注意】このページの計算結果・情報は参考値です。正確性・最新性は保証できません。税務・法務・お金・設計・施工・安全などに関わる判断は、公式の資料と専門家の確認のうえ、ご自身の責任で行ってください。免責事項
屋根投影面積×流出係数×降雨強度から、集水量・最大流入量・散水利用推定容量を即算出。雨水利用タンク・下水道浸水対策・散水灌漑・BCP水源の設計基準として、合理式(Rational Method)を用いた雨水貯留計画の第一歩に。国交省ガイドライン・雨水利用推進法・自治体条例に紐づく現場実務向け無料ツールです。
雨水貯留槽容量 計算機
合理式と単位系
基本式(Rational Method)
集水量 Q (m³) = C × A × I × T ÷ 60000
最大流入量 Qp (L/min) = C × A × I ÷ 60
C:流出係数(0〜1、無次元)/A:集水面積 m²/I:降雨強度 mm/h/T:継続時間 分。合理式は1889年に米技師Emil Kuichlingが提唱した古典的公式ですが、雨水排水管サイズ選定・雨水浸透施設設計・雨水貯留タンク容量算定の基礎として現代も国内外で標準的に使われています。
単位換算のポイント
1 mm/h × 1 m² × 1 h = 1 L
降雨強度1mm/hの雨が1m²の屋根に1時間降ると、理論的に1Lの雨水が生じます。そこに流出係数C(初期損失・蒸発・付着分を差し引いた実流出率)を掛けたものが実質集水量です。屋根1m²あたり50mm/h・1時間・C=0.9なら、50×1×1×0.9=45L/m²の集水が見込めます。
設計降雨強度の考え方
設計降雨強度は「何年に一度の豪雨に耐えるか」(再現期間)で決めます。下水道の雨水計画は5〜10年確率とする都市が多く、強度は地域ごとの降雨強度式から求めます(東京都区部は時間75mmへの引上げを推進中)。設計値は自治体の下水道計画・指導基準で確認してください。
流出係数の目安(表面別)
日本下水道協会「下水道施設計画・設計指針と解説」の工種別基礎流出係数です。同一敷地内で複数の表面が混在する場合は、面積按分で加重平均を求めます。
| 表面種別 | 流出係数 C | 解説 |
|---|---|---|
| 屋根 | 0.85〜0.95 | 金属・スレートなど滑らかで勾配のある屋根は上限寄り |
| 道路 | 0.80〜0.90 | アスファルト・コンクリート舗装 |
| その他の不透面 | 0.75〜0.85 | 駐車場・通路など |
| 水面 | 1.00 | 全量流出 |
| 間地 | 0.10〜0.30 | 空き地・裸地など |
| 芝・樹木の多い公園 | 0.05〜0.25 | 植生による遮断・浸透 |
| 勾配の緩い山地 | 0.20〜0.40 | |
| 勾配の急な山地 | 0.40〜0.60 |
集水面積の考え方は屋根の投影面積(水平投影)が基本。勾配屋根でも水平投影の面積を使い、勾配の効果は流出係数側で吸収します。
地域別設計降雨強度早見
設計降雨強度は地域と再現期間で決まり、全国一律の早見表はありません。下水道の雨水計画では5〜10年確率の降雨強度式を使う都市が多く、自治体ごとに「降雨強度式」「計画降雨(時間○mm)」が公表されています。例えば東京都区部は、豪雨対策基本方針で時間75mmへの対策強化を進めています。
近年は1時間100mmを超える観測も各地で記録されています。設計値は自治体の下水道計画・指導基準で確認し、設計降雨を超える雨にはオーバーフローで安全に逃がす計画にしてください。
タンク容量の決め方
雨水貯留槽の容量は「利用目的」と「浸水抑制目的」の2軸で決まります。
雨水利用タンクの容量目安
散水・トイレ洗浄・洗車用途では、日平均利用量×貯留日数で容量を決めます。家庭用散水は屋根面積1m²あたり20L/日程度、トイレ洗浄は1人あたり40L/日程度が目安。集合住宅の共用散水では30〜50m³、公共施設では100〜500m³規模が一般的です。賄える割合は降雨の間隔と使用量で変わるため、月別降水量で確認します。
浸水抑制タンクの容量目安
下水道への流出抑制を目的とする場合は「敷地面積×降雨強度×低減目標時間」で必要容量を算定。多くの自治体が、一定規模以上の開発に対して面積あたりの対策量(貯留・浸透量)を指導基準や条例で定めているので、計画地の基準を確認します。近年は「雨水浸透ます」との併用が標準です。
オーバーフロー配管の必須設計
設計降雨を超える豪雨は必ず発生します。タンク満水時に安全に排水できるオーバーフロー管(流入量を流しきれる径。流入管以上)と、排水先(雨水本管・浸透ます・側溝)の確保が浸水事故防止の要です。オーバーフロー設計を怠ると、豪雨時にタンク周辺が水浸しになる典型的な失敗パターンに直結します。
年間集水ポテンシャルと利用効率
年間降水量から見た理論集水量と、実利用可能量の目安です。日本の年平均降水量は約1700mm、東京は約1600mm、大阪は約1300mm、福岡は約1700mm、鹿児島は約2400mmです(気象庁 平年値1991〜2020年)。
| 屋根面積 | 年降水量1500mm・C=0.9 | 実利用60% | 水道料金換算 |
|---|---|---|---|
| 30 m²(戸建て小) | 40.5 m³/年 | 24 m³ | 約6,000〜8,000円 |
| 50 m²(戸建て中) | 67.5 m³/年 | 40 m³ | 約10,000〜13,000円 |
| 100 m²(戸建て大) | 135 m³/年 | 81 m³ | 約20,000〜27,000円 |
| 300 m²(小規模集合住宅) | 405 m³/年 | 243 m³ | 約60,000〜80,000円 |
| 1000 m²(学校・オフィス) | 1,350 m³/年 | 810 m³ | 約200,000〜270,000円 |
実利用可能量が理論値の60%程度に留まる主因は、①フィルタ・初期雨水カットで10〜15%損失、②オーバーフローで15〜25%損失、③蒸発・漏水で5〜10%損失です。全ての降雨を貯めるには非現実的な容量が必要になるため、使用量と降雨の間隔から容量を決めます。
業界・場面別の使い方
戸建て・集合住宅の雨水利用
屋根からの集水を1〜10m³のタンクに貯め、散水・トイレ洗浄・洗車に活用。多くの自治体で雨水利用タンクの導入補助(補助率・上限は自治体ごとに異なる)が設定されており、SDGs対応・BCP水源確保・水道料金節約の3効果でマンション新築での採用が増加中です。
都市内水浸水対策
下水道能力を超える豪雨時に、敷地内からの流出を一時貯留して下水本管への負荷を軽減。東京都「豪雨対策基本方針」、横浜市「雨水管理基本方針」、大阪市「都市浸水対策計画」など多くの自治体で開発時の設置が指導・義務化されています。
公共施設・学校の雨水利用
校庭散水・トイレ洗浄・防火用水兼用として、100〜500m³規模の地下貯留槽を設置。学校・公共施設は雨水利用推進法(2014年施行)の重点対象で、環境省・国交省が導入を推奨。緊急時の生活用水源としてBCPにも寄与します。
農業・園芸・果樹園の灌漑水源
ハウス栽培・畑作・果樹園の灌漑水として雨水貯留を活用。上水引込コスト削減と、干ばつ時のBCP対応(休耕リスク低減)の両面から導入。1000m²ハウスで10〜30m³規模、露地栽培では50〜200m³規模が一般的。農水省の環境保全型農業直接支払交付金の対象にもなります。
工場・物流倉庫の雑用水
工場敷地・倉庫屋根からの雨水を、洗車・冷却塔補給水・散水・防火用水として活用。屋根面積1万m²級の大型工場では年間1〜2万m³の集水が可能で、上水コスト200〜400万円/年の削減事例も。ISO14001環境マネジメントの取組みとしても評価されます。
戸建てDIY雨水タンク
200L〜500Lの家庭用ポリタンクを雨樋に接続する簡易DIYは、ホームセンター資材で1〜3万円で自作可能。ガーデニング散水・ミニ菜園・打ち水に活用でき、災害時の生活用水(トイレ流し水・洗浄水)としても機能。自治体補助金の対象になる場合もあります。
よくある間違い・注意点
- 流出係数を屋根1.0で計算 — 実際の屋根は0.85〜0.95。初期雨水の付着・蒸発・雨樋オーバーフローで5〜15%は損失します。C=1.0で設計すると集水量を過大評価し、実運用でタンクが満たされないケースが多発します。
- 降雨強度を年降水量で置き換え — 短時間強雨(mm/h)と年降水量(mm/年)は全く別物。合理式で必要なのは設計時間雨量です。「東京は年1500mm降るからI=1500」といった誤用は、実務でも意外と目にします。
- オーバーフロー配管を設計しない — 設計降雨を超える豪雨で必ず満水になります。オーバーフロー管なしのタンクは、豪雨時に周辺を水浸しにする「浸水製造装置」に化けます。本管径以上のオーバーフロー管と、排水先の明示は必須です。
- 集水面積を斜面の実面積で計算 — 勾配屋根でも合理式で使うのは水平投影面積です。傾斜面積で計算すると、緩勾配で10%、急勾配で20〜40%過大になります。
- 初期雨水カット装置を省略 — 屋根の粉塵・落葉・鳥糞などが初期の数ミリに濃縮されるため、初期雨水カット装置(0.5〜2mm相当をバイパス)を省くと水質が悪化し、フィルタ詰まり・貯水槽内藻類発生の原因になります。
- 屋外設置タンクの凍結対策忘れ — 冬期に凍結すると膨張圧でタンク破損。寒冷地では地下埋設または凍結防止ヒーター、あるいは冬期の水抜き運用が必要です。
- 飲用可能と誤認 — 雨水は屋根表面の汚染物質・大気汚染物質を含みます。フィルタ+UV処理でも飲料水基準を安定的に満たすのは困難です。散水・トイレ洗浄・洗車・清掃用途に限定してください。
関連する規格・法令
- 雨水の利用の推進に関する法律(雨水利用推進法) ― 2014年5月施行。国・地方公共団体・独立行政法人等の建築物での雨水利用を推進。国交省・環境省・農水省が所管。
- 下水道法・下水道法施行令 ― 雨水流出抑制施設の設置基準。多くの自治体で開発時に貯留浸透施設の設置を指導。
- 建築基準法・建築基準法施行令 ― 排水設備・雨水排水の技術基準。屋根形状・排水勾配の一般ルール。
- 日本下水道協会「下水道施設計画・設計指針と解説」 ― 合理式・流出係数・設計降雨強度の国内標準。
- SHASE-S 206「給排水衛生設備規準」 ― 空気調和・衛生工学会の雨水利用設備の設計・施工基準。
- 各自治体の雨水利用条例・浸水対策条例 ― 東京都、横浜市、大阪市、名古屋市、福岡市などで独自基準あり。
- 特定都市河川浸水被害対策法 ― 2021年改正。特定都市河川流域での貯留浸透施設設置指導。
参考文献・公的資料
雨水利用・浸水対策の設計基準や補助金情報は、以下の公的機関の一次資料を参照してください。
- 国土交通省 下水道事業 ― 下水道浸水対策ガイドライン、雨水管理総合計画策定マニュアル等の公式資料。
- 環境省 雨水の利用の推進 ― 雨水利用推進法の概要と各種ガイドライン。
- 気象庁 大雨・豪雨の解説 ― 時間降水量の観測記録、集中豪雨の統計データ。
- 日本産業標準調査会(JISC) ― JIS規格の検索・閲覧。
- 日本下水道協会 ― 下水道施設計画・設計指針と解説の頒布。
- 空気調和・衛生工学会 ― SHASE-S 206給排水衛生設備規準。
- 東京都豪雨対策基本方針 ― 都市内水対策の実務指針。
- 横浜市 雨水管理基本方針 ― 都市部の雨水管理計画の標準例。
- 農林水産省 環境保全型農業 ― 農業用雨水利用の支援制度。
- USGS Water Science School ― 米国地質調査所の水循環・雨水集水解説(英語)。
よくある質問(FAQ)
流出係数とは?
降雨のうち、実際に流出する割合を表す0〜1の無次元数。下水道施設計画・設計指針と解説の工種別基礎流出係数では、屋根0.85〜0.95、道路0.80〜0.90、間地0.10〜0.30、芝・樹木の多い公園0.05〜0.25、勾配の緩い山地0.20〜0.40です。
設計降雨強度はどう決める?
再現期間(何年に一度の雨か)を決め、その地域の降雨強度式から求めます。下水道の雨水計画は5〜10年確率が多く、東京都区部は時間75mmへの引上げを進めています。数値は自治体の下水道計画・指導基準で確認してください。
屋根100m²で年間何m³集水できる?
年降水量1500mm・流出係数0.9で理論135m³/年。実利用可能量はフィルタ損失・オーバーフロー・蒸発を差し引いて60〜80m³/年程度。散水・トイレ洗浄用途で年20,000〜27,000円の水道料金節約に相当します。
雨水タンクの補助金は?
多くの自治体で雨水利用タンク・雨水浸透ますの補助制度があります。補助率・上限額は自治体ごとに異なります。自治体名+「雨水タンク 補助金」で検索を。
雨水利用の水質は飲用可能?
不可。屋根表面の粉塵・落葉・鳥糞、大気汚染物質を含むため、フィルタ+UV処理でも飲料水基準を安定的に満たすのは困難です。散水・トイレ洗浄・洗車・清掃・防火用水など、非飲用の雑用水に限定してください。
集水面積は屋根の実面積?水平投影?
合理式で使うのは水平投影面積です。勾配屋根でも上から見た平面図の面積を使い、勾配の効果は流出係数で吸収します。傾斜実面積で計算すると集水量を過大評価してしまいます。
オーバーフロー配管は必須?
必須です。設計降雨を超える豪雨時にタンクが満水になっても、安全に排水できる経路(流入量を流しきれる径のオーバーフロー管+雨水本管または浸透ますへの接続)を必ず確保してください。オーバーフロー未設計は水害の主因になります。
初期雨水カット装置は必要?
推奨されます。屋根の粉塵・落葉・鳥糞は初期の0.5〜2mmに濃縮されるため、初期雨水をバイパスする装置を入れると水質が大幅に改善し、フィルタ詰まりや貯水槽内藻類発生を防げます。市販の切替バルブ式装置は1〜3万円程度で入手可能です。
寒冷地での凍結対策は?
屋外設置の樹脂タンクは凍結膨張で破損します。地下埋設が最も確実で、地上設置なら凍結防止ヒーター、または冬期は水抜き運用が必要です。北海道・東北・北陸・信州の高地では地下埋設が標準です。
雨水利用推進法は個人にも適用?
直接の義務対象は国・地方公共団体・独立行政法人等ですが、民間建築物にも導入努力義務が明記されています。多くの自治体では民間建築物にも条例で導入指導があり、補助金制度も個人・民間法人向けに整備されています。
タンク容量はどう決める?
「利用目的」と「浸水抑制目的」の2軸で決定。利用重視なら日利用量×貯留日数、浸水抑制が目的なら自治体の指導基準・条例が定める対策量に従います。両者兼用が理想的です。
合理式と貯留量計算の違いは?
合理式はピーク流入量(L/min)を求める式です。実際のタンク必要容量は、降雨波形(30分〜数時間の時間分布)を積分した貯留量計算が本来必要で、公共施設・大規模開発では時間雨量ハイエトグラフによる詳細検討が行われます。合理式は一次概算として非常に有効です。