木造梁 許容スパン計算ツール|樹種・断面・荷重から梁の最大スパンとたわみ制限を即算出
【ご注意】このページの計算結果・情報は参考値です。正確性・最新性は保証できません。税務・法務・お金・設計・施工・安全などに関わる判断は、公式の資料と専門家の確認のうえ、ご自身の責任で行ってください。免責事項
在来木造の梁材選定を、樹種(米松・杉・桧の無等級材)×断面寸法(105×120mm~120×300mm)×荷重(積載荷重+固定荷重)×負担幅から計算。断面係数Z=bh²/6と長期許容曲げ応力度から曲げで決まるスパンを、変形増大係数2を見込んだたわみL/250からたわみで決まるスパンを求め、小さいほうを許容スパンとします(単純梁・等分布荷重)。建築基準法施行令第89条(木材許容応力度)、JAS製材規格、プレカット工場との事前打合せに。
木造梁 許容スパン計算機
計算式と単位
基本式
断面係数 Z = b × h² / 6 (mm³)
長期許容曲げ応力度 fb = 1.1 × Fb ÷ 3 (令89条、Fbは基準強度)
許容曲げモーメント M = fb × Z (N·mm)
単純梁の最大モーメント Mmax = w × L² / 8 (w:等分布荷重, L:スパン)
曲げで決まるスパン L = √(8M / w) (w = 荷重(N/m²) × 負担幅(m))
木造梁の設計は「許容曲げ応力度による強度検定」と「たわみ制限による使用性検定」の2条件を同時に満たす必要があります(建築基準法施行令第82条・第89条)。断面係数Zは長方形断面の場合b×h²/6で、幅bよりせい(高さ)hの2乗が効くため、105×180mmを105×210mmに変更すると断面係数は約36%増(Z=567,000→771,750mm³)、許容モーメントも同率増加します。
樹種別許容応力度
建築基準法施行令第89条・国土交通省告示第1452号により、樹種・等級ごとに基準強度が定められています。長期許容応力度は基準強度×1.1/3、短期は基準強度×2/3が原則。無等級材の曲げの基準強度は べいまつ(米松) Fb=28.2N/mm²、ひのき 26.7、すぎ 22.2 で、長期許容曲げ応力度はそれぞれ 10.34・9.79・8.14N/mm² です。
たわみ制限
δmax = 5wL⁴ / (384EI)
単純梁の中央たわみは上式で計算します。木造ではクリープで長期のたわみが増えるため、平成12年建設省告示第1459号は計算たわみに変形増大係数2を掛けてスパンの1/250以下とすることを求めています。本ツールもこの条件で、たわみで決まるスパン L = ∛(384EI ÷ (5w×2×250)) を計算します(ヤング係数は無等級材 べいまつ10.0・ひのき9.0・すぎ7.0kN/mm²)。仕上げが厳しい部位ではスパン÷300などさらに厳しい目安を使います。スパン4mならL/250=16mm、6mなら24mmが上限で、梁の強度がOKでもたわみNGとなる場合、断面をワンサイズ大きく(せいを+30mm)します。
樹種別 許容曲げ応力度
平成12年建設省告示第1452号「木材の基準強度Fc、Ft、Fb及びFsを定める件」の無等級材(SPFは枠組壁工法構造用製材 甲種2級)の基準強度と、1.1/3を掛けた長期許容応力度です。
| 樹種 | 基準強度Fb N/mm² | 許容曲げ N/mm² (長期) | 許容せん断 N/mm² (長期) | 主用途 |
|---|---|---|---|---|
| 米松(べいまつ・無等級) | 28.2 | 10.34 | 0.88 | 大断面梁・小屋組 |
| 杉(すぎ・無等級) | 22.2 | 8.14 | 0.66 | 柱・間柱・野地板 |
| 桧(ひのき・無等級) | 26.7 | 9.79 | 0.77 | 柱・化粧梁・水回り |
| SPF(2×4材・甲種2級) | 21.6 | 7.92 | 0.66 | 2×4工法枠組壁(本ツールの断面には非対応) |
| 構造用集成材 | 強度等級(E105-F300 など)ごとに告示で定める値を使う | 大スパン梁 | ||
| LVL(構造用単板積層材) | 曲げヤング係数区分・等級ごとに告示で定める値を使う | 長スパン梁 | ||
実材の等級はJAS(日本農林規格)による目視等級区分・機械等級区分があり、同じ樹種でも1級/2級/3級で基準強度が10-30%異なります。プレカット図面では等級指定を必ず明記してください。
断面×スパン早見表(米松・住宅の床)
米松(無等級)、積載荷重1800N/m²+固定荷重400N/m²、負担幅0.91m、単純梁・等分布荷重で、曲げとたわみ(変形増大係数2・L/250)の両方を満たす許容スパンです。この条件ではすべての断面でたわみが先に決まります。
| 断面(mm) | 断面係数Z(mm³) | 長期許容モーメント(kN·m) | 許容スパン(m) |
|---|---|---|---|
| 105×120 | 252,000 | 2.6 | 約2.26 |
| 105×150 | 393,750 | 4.1 | 約2.83 |
| 105×180 | 567,000 | 5.9 | 約3.40 |
| 105×210 | 771,750 | 8.0 | 約3.96 |
| 105×240 | 1,008,000 | 10.4 | 約4.53 |
| 105×270 | 1,275,750 | 13.2 | 約5.09 |
| 105×300 | 1,575,000 | 16.3 | 約5.66 |
| 120×240 | 1,152,000 | 11.9 | 約4.73 |
| 120×300 | 1,800,000 | 18.6 | 約5.92 |
※負担幅・荷重条件・端部支持条件で変わります。せん断・めり込み・継手仕口の断面欠損は含みません。実設計は構造計算で確認してください。
荷重種別と設計値
建築基準法施行令第85条により、居室・用途ごとの積載荷重が規定されています。
| 用途 | 床用(N/m²) | 骨組用(N/m²) | 地震力用(N/m²) |
|---|---|---|---|
| 住宅・共同住宅の居室 | 1,800 | 1,300 | 600 |
| 事務室 | 2,900 | 1,800 | 800 |
| 教室 | 2,300 | 2,100 | 1,100 |
| 百貨店・店舗の売場 | 2,900 | 2,400 | 1,300 |
| 倉庫業を営む倉庫 | 3,900以上 | 3,900以上 | 2,400以上 |
豪雪地域(北海道・北陸・東北・信越山間部)は積雪荷重が支配的で、垂直積雪量×積雪単位重量(20-30N/m²/cm)を加算します。屋根には令85条の積載荷重は無く、屋根葺き材・下地などの固定荷重(令84条)と積雪荷重(令86条)で設計します。詳細は雪荷重計算ツールを参照。
たわみ制限 L/250 の考え方
強度(応力)がOKでもたわみが大きすぎると天井仕上げの割れ・建具の作動不良・使用者の不快感を招くため、たわみ制限が実務では強度と同等以上に重要です。
| スパン | L/250(住宅居室) | L/300(仕上げ厳) | L/500(振動対策) |
|---|---|---|---|
| 3.0m | 12mm | 10mm | 6mm |
| 4.0m | 16mm | 13mm | 8mm |
| 5.0m | 20mm | 17mm | 10mm |
| 6.0m | 24mm | 20mm | 12mm |
| 7.0m | 28mm | 23mm | 14mm |
ピアノ室・ホームシアター等の振動対策部位はL/500以上を設計基準とします。マンションの床梁は上下階への振動伝達を抑えるためL/300が標準、住宅用居室ではL/250が実務目安です。
建築現場での使い方
在来木造 住宅設計・プレカット打合せ
梁材の樹種・断面・等級をプレカット工場に発注する際、105×180か105×210か、米松か杉かで単価差(1本あたり±3000円)が積み上がります。設計時にスパン計算で最小断面を確定し、プレカット図面のCADデータに反映。梁の材積(m³)も同時集計され、木拾い(材木費用見積)に直結します。
2×4工法・枠組壁工法(SPF材)
SPF(スプルース・パイン・ファー)の204(38×89mm)・208(38×184mm)・210(38×235mm)・212(38×286mm)のスパン管理。枠組壁工法構造用製材のJASと告示の基準強度を用い、平成13年国土交通省告示第1540号(枠組壁工法の技術基準)に沿って設計。本ツールの計算(105mm幅の製材)はSPFの枠組材には使えません。ホームメーカーの標準仕様書に組込まれる標準値を検算する場面で活用。
リフォーム・耐震補強
既存梁の樹種・断面・端部支持条件(切り欠き・大入れ・仕口)から残存耐力を評価し、増設梁や耐震補強梁の断面を決定。腐朽・シロアリ被害箇所の断面欠損を差し引いた「有効断面」で許容応力度を再計算します。木造住宅の耐震診断法(日本建築防災協会)にも準拠。
中大規模木造・CLT(直交集成板)
2016年のCLT設計告示以降、中大規模木造建築が急拡大。CLT梁(90mm・120mm・150mm厚)や集成材大断面梁の許容曲げ応力度は同厚のムク材より高く、スパン10m以上の大空間が可能。林野庁「CLT等新たな製品・技術の開発普及」補助金も活用。
木造非住宅(店舗・保育園・小学校)
店舗・保育園・小学校等の非住宅木造は、床荷重が住宅の1.5-2倍。梁断面の断面二次モーメントI=bh³/12から振動・共振対策も要チェックです。文科省「木の学校づくり」・林野庁「木材利用促進法」に基づく補助対象事業の設計に。
屋根梁・小屋組・登り梁
屋根梁は雪荷重(豪雪地帯で1000-3000N/m²)が支配的で、住宅床梁より大断面が必要。登り梁は勾配に応じた分力計算と、水平投影長さでの荷重負担幅補正が必要。日本建築学会「木質構造設計規準」の準拠が実務標準です。
よくある間違い・注意点
- たわみ制限を無視して曲げ強度のみで判定 — 応力度OKでもL/250のたわみ制限で先に限界を超えるケースが多発します。強度検定とたわみ検定は独立に、両方満たす最小断面を採用してください。長スパン(6m以上)ほどたわみ支配になります。
- 樹種の許容応力度を混同 — 長期許容曲げ応力度は米松10.34と杉8.14で約27%差、桧は9.79。基準強度Fbをそのまま許容応力度に使うと約2.7倍の過大評価になります。プレカット工場に「梁は米松、柱は桧」等の材種指定を明確に伝達し、設計値と実材を一致させてください。
- 負担幅を無視して1m前提で計算 — 梁間隔910mmピッチなら負担幅910mm、1820mmピッチなら1820mm。負担幅×荷重が線荷重として働きます。1820mmピッチの梁を1m前提で計算すると荷重を約半分に見積もることになります。
- 継手・仕口位置での断面欠損を無視 — 蟻継・鎌継・大入れ等で断面が20-30%欠損することがあります。継手部の有効断面(欠損控除後)で許容応力度を再検定してください。プレカット図面のNC加工位置も要確認。
- 集中荷重(柱下・階段開口・機器)を等分布荷重に丸めて計算 — 柱下の集中荷重は等分布に換算しても最大モーメント位置が異なります。集中荷重は個別にMc=PL/4(単純梁中央集中)で計算し、等分布と重ね合わせます。
- 含水率・乾燥状態を無視 — 含水率の高いグリーン材は強度が低く、乾燥に伴う収縮・変形も大きくなります。KD材(乾燥材、含水率≦20%)や集成材は乾燥保証されたもの。JASの製材証明書で乾燥等級(D25以下等)を確認してください。
- 火災時の炭化層深さを無視 — 準耐火構造を燃えしろ設計で確かめる場合は、燃えしろ分を差し引いた有効断面で長期荷重に耐える必要があります。燃えしろの深さは準耐火の時間と材料ごとに告示で定められています(45分準耐火で構造用集成材35mm・製材45mmなど)。
関連する規格・法令
- 建築基準法施行令 第82条 ― 保有水平耐力・許容応力度計算等の構造計算方法。木造建築物の必須検定項目。
- 建築基準法施行令 第89条 ― 木材の許容応力度。長期・短期の応力度比率、樹種別基準の根拠条文。
- 平成12年建設省告示第1452号 ― 木材の基準強度Fc(圧縮)・Ft(引張)・Fb(曲げ)・Fs(せん断)の数値を定める告示。樹種・等級ごとの数表が付属。
- 平成12年建設省告示第1358号 ― 準耐火構造の構造方法。柱・梁の燃えしろ設計の燃えしろ深さ。
- JAS(日本農林規格) 製材 ― 目視等級区分製材・機械等級区分製材の等級区分・強度・寸法規格。プレカット・製材工場の品質保証基準。
- JAS 集成材 ― 構造用集成材の強度等級(E65-F225等)。オウシュウアカマツ・カラマツ等の構造用集成材規格。
- JAS CLT(直交集成板) ― CLTの積層数・厚さ・強度等級(Mx60等)。2016年のCLT関連告示施行以降の中大規模木造の主力材料。
- 木造の許容応力度規定(2×4工法) ― 枠組壁工法建築物構造計算指針(日本ツーバイフォー建築協会)。
- 公共建築木造工事標準仕様書 ― 国土交通省官庁営繕部発行。公共施設(学校・庁舎)の木造工事標準。
参考文献・公的資料
詳細な設計・法令・規格情報は、以下の公的機関・団体の資料を参照してください。
- 国土交通省 住宅局 建築指導課 ― 建築基準法・施行令・告示の一次情報。木造住宅・非住宅の技術基準通達。
- 林野庁 木材産業課 ― JAS製材規格・木材利用促進法・CLT等新規建材の政策情報。
- 日本建築学会 ― 「木質構造設計規準・同解説」「木質構造限界状態設計指針」等の学会標準規準。
- 公益財団法人 日本住宅・木材技術センター ― JAS製材の等級・強度データ、木造の耐火・耐震性能評価。
- 国立研究開発法人 建築研究所 ― 建築構造・材料・防耐火・環境の公的研究機関。木造の実験データ。
- 森林総合研究所 ― 樹種別材質・強度データベース。国産材の許容応力度基礎データ。
- 日本ツーバイフォー建築協会 ― 枠組壁工法建築物構造計算指針。SPF材のスパン表・接合部設計。
- 日本産業標準調査会(JISC) ― JIS規格の公式索引。JIS Z 2101(木材試験方法)等の検索。
- 一般財団法人 日本建築防災協会 ― 木造住宅の耐震診断・耐震補強設計指針。既存住宅リフォーム時の残存耐力評価。
- 一般社団法人 日本CLT協会 ― CLT(直交集成板)の設計・施工・普及情報。中大規模木造建築物の一次情報源。
よくある質問(FAQ)
105×180mm米松梁の許容スパンは?
住宅の床(積載1800+固定400N/m²)・負担幅0.91m・単純梁では、曲げだけなら約4.84mですが、変形増大係数2を見込んだたわみL/250で決まり約3.40mです。負担幅1.82mなら約2.70mに縮みます。
杉と米松の使い分けは?
杉:経済性・軽量・入手性で柱・間柱・野地板の主流。米松:高強度・大断面材の梁材で主流。桧:耐水・化粧材・水回り。プレカット図面では「梁は米松、柱は桧、間柱は杉」等の混在指定が一般的で、コストと強度のバランスを取ります。
たわみ制限L/250の意味は?
スパン÷250以下のたわみに抑える制限。スパン4mなら16mm、6mなら24mmまで。天井仕上げの割れ・建具の建て付け・使用者の不快感を防ぐための使用性検定。マンション床梁はL/300、ピアノ室等の振動対策部位はL/500が推奨されます。
プレカット工場との打合せで確認すべき項目は?
①樹種と等級(JAS○級・E値)、②断面寸法と長さ、③継手・仕口の位置と種類、④乾燥等級(D25等)、⑤含水率、⑥防腐防蟻処理の有無、⑦搬入日程、⑧梱包単位。CAD/BIM連携の場合はIFC形式かCEDXM形式が一般的です。
CLT(直交集成板)とは?
ラミナ(挽き板)を直交方向に積層した高強度木質パネル。2016年のCLT関連告示以降、中大規模木造建築の主要材料に。10m以上の大スパン床・壁が実現でき、コンクリート造との複合構造も普及。カーボンニュートラル政策の追い風で林野庁補助金対象。
集成材とムク材の使い分けは?
ムク材:コスト安・見た目重視・小断面で使用。集成材:強度保証・大断面(1000mm超)・湾曲材が可能。ムク材はねじれ・割れのリスクがあるため、6m超の梁は集成材が実務標準。集成材はJAS「構造用集成材」の等級(E110-F330等)で強度指定します。
2×4工法のSPF材強度は?
SPF(スプルース・パイン・ファー)の枠組壁工法構造用製材 甲種2級は、基準強度Fb 21.6N/mm²(長期許容曲げ応力度 約7.9N/mm²)です。204(38×89)から212(38×286)まで規格断面が定型。ホームメーカーの標準スパン表は、SPFの機械等級区分材(#2以上)を前提とした値です。
木造の耐震補強で梁を増設する場合は?
既存梁の端部支持条件(柱-梁接合部)を確認し、増設梁を新規の柱梁で受ける必要があります。既存梁への抱き合わせは、応力伝達が不確実なため設計評価が難しく、通常は新規梁(添梁)+既存梁の並列として設計します。日本建築防災協会「木造住宅の耐震補強マニュアル」参照。
火災時の燃えしろ設計は必要?
準耐火構造の柱・梁を燃えしろ設計で確かめる場合、告示で定める燃えしろ(45分準耐火で集成材35mm・製材45mm など)を差し引いた有効断面で長期荷重に耐える設計が必要。木造3階建て共同住宅・木造非住宅(店舗・保育園等)で該当します。
豪雪地域の梁設計で気をつけることは?
積雪単位重量20N/m²/cm(垂直積雪量1mで2000N/m²)を屋根荷重に加算。豪雪地域(北海道・北陸・信越山間部)は住宅床荷重(1800)を超えて雪荷重が支配的になります。垂直積雪量は雪荷重計算で自治体別データを参照可能。
集中荷重(柱下・階段開口)の扱いは?
柱下の集中荷重Pに対しては、単純梁中央集中の場合Mc=PL/4で計算。等分布荷重wと重ね合わせて総モーメントを求めます。階段開口による梁補強、屋根裏収納の追加荷重、太陽光パネル(20-25kg/m²)なども個別集中/等分布として加算してください。
含水率と強度の関係は?
木材は含水率が高いほど強度が低下します。JAS「D25」は含水率25%以下、「D20」は20%以下、「D15」は15%以下の乾燥等級。含水率の高いグリーン材は強度が低く、乾燥収縮による変形も大きくなります。KD材・集成材の使用が実務標準です。