レールの温度伸縮と遊間・ロングレール軸力の計算
【ご注意】このページの計算結果・情報は参考値です。正確性・最新性は保証できません。税務・法務・お金・設計・施工・安全などに関わる判断は、公式の資料と専門家の確認のうえ、ご自身の責任で行ってください。免責事項
レール長・敷設時の温度・想定温度・レール種別から伸縮量と必要な遊間を求め、ロングレールでは軸力・軸応力・可動区間の長さ・端部の伸縮量を算出します。定尺レールの遊間整正、ロングレールの設定温度の検討に使います。
レールの温度伸縮と遊間・ロングレール軸力の計算ツール
計算式
レールは温度で伸び縮みします。長さ L のレールが温度 ΔT だけ上がるときの伸びは ΔL=α×L×ΔT(α:線膨張係数、レール鋼で約 11.4×10⁻⁶/℃)です。既定値の 25m の定尺レールが敷設時 20℃ から最高 60℃ まで上がるときの伸びは 11.4×10⁻⁶×25,000mm×40℃=11.40mm で、敷設時にはこの分の遊間を空けておきます。
ロングレールのように両端が拘束されて伸びられない場合、伸びようとした分が力に変わります。軸力は P=E×A×α×ΔT(E:縦弾性係数 206GPa、A:レール断面積)で、60kgレール(7,750mm²)が 40℃ 上がると 206,000×7,750×11.4×10⁻⁶×40=728.0kN、応力に直すと 93.9N/mm² の圧縮です。この力に道床が抵抗しきれなくなると軌道が横に曲がる張り出し(座屈)が起きます。端部では道床の縦抵抗力 r とつり合う位置まで動き、可動区間の長さは x=P/r=728,004/5,000=145.6m、端部の伸縮量は P×x/(2EA)=33.20mm になります。
レールの伸縮量(α=11.4×10⁻⁶/℃)
| レール長 | ΔT=20℃ | ΔT=30℃ | ΔT=40℃ | ΔT=50℃ |
|---|---|---|---|---|
| 10m | 2.28mm | 3.42mm | 4.56mm | 5.70mm |
| 20m | 4.56mm | 6.84mm | 9.12mm | 11.40mm |
| 25m(定尺) | 5.70mm | 8.55mm | 11.40mm | 14.25mm |
| 50m | 11.40mm | 17.10mm | 22.80mm | 28.50mm |
| 100m | 22.80mm | 34.20mm | 45.60mm | 57.00mm |
| 200m(ロングレール) | 拘束され力に変わる | — | — | — |
レールの種別と軸力(ΔT=40℃・E=206GPa)
| 種別 | 断面積 | 単位質量 | 軸力 | 軸応力 |
|---|---|---|---|---|
| 37kgレール | 47.30cm² | 37.2kg/m | 444.3kN | 93.9N/mm² |
| 50kgNレール | 64.05cm² | 50.4kg/m | 601.7kN | 93.9N/mm² |
| 60kgレール | 77.50cm² | 60.8kg/m | 728.0kN | 93.9N/mm² |
※軸応力は断面積によらず E×α×ΔT で決まるため、どの種別でも同じ値になります。断面積が大きいほど軸力(力)は大きくなります。
ロングレールの構成
| 区間 | 性質 | 長さの目安 |
|---|---|---|
| 可動区間(呼吸区間) | 温度変化で伸縮する端部。軸力が道床抵抗とつり合うまで | 片端 100〜150m |
| 不動区間 | 伸縮せず軸力だけが変化する中央部 | 全長から両端の可動区間を引いた残り |
| 伸縮継目 | ロングレール端の伸びを逃がす装置 | 可動量 ±50〜100mm 程度 |
※本ツールは一般に用いられる計算式による参考計算です。実際の設計・保守の値は、鉄道に関する技術上の基準を定める省令および各鉄道事業者の施設(建設)基準・整備基準に従ってください。
レールの温度伸縮と遊間・ロングレール軸力の計算の詳しい解説
鋼は温度が上がると伸びます。レール鋼の線膨張係数はおよそ 11.4×10⁻⁶/℃ で、25m の定尺レールが 40℃ 温まると 11.4mm 伸びます。定尺レールを継目板でつないだ軌道では、この伸びを逃がすためにレールとレールの間に隙間を空けます。これが遊間で、敷設時のレール温度と想定する最高温度の差から必要量を決めます。夏に遊間がゼロになって突き合わさると、それ以上伸びられなくなった力が軌道を横に押し出し、張り出しという座屈事故につながります。逆に冬に遊間が開きすぎると、継目での衝撃が大きくなり、継目板のボルトやレール端部が傷みます。
レール温度は気温ではありません。直射日光を浴びた黒い鋼は気温よりかなり高くなり、夏の晴天時には気温+20℃ 程度、60℃ を超えることもあります。逆に冬の晴天の夜は放射冷却で気温より低くなります。遊間の計算に使う最高・最低温度は、その線区で実際に記録されたレール温度の範囲を取るのが原則で、気温の最高・最低をそのまま入れると夏の伸びを過小評価します。保守の現場で遊間を測るときにレール温度も同時に記録するのは、測定値を基準温度での値に換算するためです。
ロングレールは、定尺レールを溶接して長くつないだものです。継目が減ることで乗り心地と騒音が良くなり、継目周辺の軌道破壊も減りますが、代わりに伸縮を逃がす場所がなくなります。中央部は動けないので、伸びようとした分がそのまま軸力に変わります。軸力は E×A×α×ΔT で、断面積の大きい 60kgレールでは 40℃ の温度上昇に対して 728kN に達します。一方、軸応力は E×α×ΔT でレールの種別によらず約 93.9N/mm² と一定です。断面積が大きいほど力は大きいが応力は同じ、という関係は座屈の議論で重要になります。
ロングレールの端部では、軸力が道床の縦抵抗力に打ち勝つ範囲だけレールが動きます。この区間を可動区間または呼吸区間と呼び、長さは軸力を単位長さあたりの道床縦抵抗力で割った値です。既定値では 145.6m で、そこから内側は伸縮しない不動区間になります。端部の伸縮量は伸びを可動区間で積分した値で約 33mm、この動きを伸縮継目という装置で吸収します。道床の縦抵抗力が小さい、つまり道床がやせていたり突き固めが不十分だと可動区間が長くなり、端部の動きも大きくなります。ロングレールの保守で道床の状態が重視されるのはこのためです。
設定温度という考え方も押さえておきます。ロングレールを溶接して固定するときのレール温度を設定温度と呼び、この温度では軸力がゼロになります。夏の最高温度と冬の最低温度の中間あたりに設定しておけば、圧縮側と引張側の軸力が均等に振り分けられます。設定温度が低すぎると夏の圧縮が過大になって座屈しやすく、高すぎると冬の引張が過大になって溶接部の破断(レール折損)の危険が増します。実際の設定温度は線区の温度記録に基づいて決められ、再設定作業では油圧の緊張器でレールを引っ張って狙いの温度相当の状態を作ります。
別の条件での計算例
50m レール(50kgNレール・断面積 64.05cm²)を温度差 45℃ で見てみます。自由に伸びられる場合の伸びは 11.4×10⁻⁶×50,000×45=25.65mm で、定尺 25m の 2倍です。ロングレールとして拘束すると軸力は 206,000×6,405×11.4×10⁻⁶×45=676.9kN、応力は 105.7N/mm² になります。既定値(60kgレール・40℃)の 728.0kN と比べると力は小さいのに応力は大きく、断面積の小さいレールほど同じ温度差で応力が高くなることが確認できます。応力は E×α×ΔT なので温度差だけで決まり、45℃ なら断面積によらず 105.7N/mm² です。可動区間は 676,900/5,000=135.4m、端部の伸縮量は 34.72mm となり、伸縮継目に 35mm 程度の可動量が要る計算になります。道床が弱って縦抵抗力が 3,000N/m まで落ちると可動区間は 225.6m に伸び、端部の動きも 58mm に増えるため、伸縮継目の可動量を超える恐れが出てきます。
業界・現場での使い方
定尺レールの遊間整正
敷設時のレール温度と想定最高温度から必要遊間を求め、測定値と比べて整正の要否を判断します。
ロングレールの設定温度の検討
線区の最高・最低レール温度から、圧縮と引張が均等になる設定温度を決めます。
張り出し(座屈)の危険度評価
猛暑時の軸力と道床の縦抵抗力を比べ、徐行や散水の判断材料にします。
伸縮継目の選定
可動区間の長さと端部の伸縮量から、必要な可動量を持つ伸縮継目を選びます。
よくある間違い・注意点
- 気温をレール温度として計算する — 直射日光下のレールは気温より 15〜20℃ 高くなります。実測のレール温度を使います。
- 遊間を大きく取れば安全と考える — 冬に開きすぎると継目の衝撃が増え、レール端部と継目板が傷みます。
- ロングレールの軸応力が種別で変わると思う — E×α×ΔT なので断面積によらず同じです。変わるのは力(軸力)です。
- 道床の状態を軸力の計算に入れない — 縦抵抗力が小さいと可動区間が伸び、端部の動きが大きくなります。
- 設定温度を高くすれば座屈しないと考える — 冬の引張が過大になり、溶接部の破断(レール折損)の危険が増します。
関連する規格・公的資料
- 国土交通省 鉄道局 — 鉄道の技術基準・施設の安全に関する制度
- 鉄道に関する技術上の基準を定める省令(e-Gov) — 線路・車両・運転の技術基準を定める省令
- 鉄道総合技術研究所(RTRI) — 軌道・車両・走行安全の研究機関
- 日本鉄道施設協会 — 鉄道の土木・軌道技術の団体
- 日本鉄道電気技術協会 — 鉄道の電気・信号技術の団体
- 鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT) — 鉄道建設の設計・施工基準
- 運輸安全委員会 — 鉄道事故の調査報告
- 土木学会 — 鉄道構造物の設計に関する学術資料
- 日本機械学会 — 車両力学・走行抵抗の学術資料
- 日本産業標準調査会(JISC) — JIS E 1101(普通レール)など鉄道関係の規格
- 日本規格協会(JSA) — JIS 規格票の発行
- 産業技術総合研究所 計量標準総合センター — 長さ・力・加速度の国家計量標準
- JIS E 1101(普通レール及び分岐器類用特殊レール) — レールの断面形状・単位質量・材質
- JIS E 1120(熱処理レール) — 高強度レールの規格
- 鉄道総研 ロングレールの座屈と管理 — 軸力と道床抵抗に関する研究
※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。医療・法務・税務の判断は最新の告示・規格および専門家の判断に従ってください。
よくある質問(FAQ)
レールの伸びはどう計算しますか?
線膨張係数×長さ×温度差です。25m・40℃ で 11.40mm になります。
遊間はいくつ必要ですか?
敷設時温度から最高温度までの伸び分です。既定値では 11.40mm です。
レール温度と気温は同じですか?
違います。直射日光下では気温より 15〜20℃ 高くなり、夏は 60℃ を超えることもあります。
ロングレールの軸力は?
E×断面積×線膨張係数×温度差 です。60kgレール・40℃ で 728.0kN になります。
軸応力はレールの種別で変わりますか?
変わりません。E×α×ΔT で決まり、40℃ なら約 93.9N/mm² です。
可動区間とは何ですか?
ロングレールの端部で実際に伸縮する範囲です。軸力÷道床縦抵抗力 で、既定値では 145.6m です。
張り出しはなぜ起きますか?
圧縮軸力が道床の横抵抗力を超えると軌道が横に曲がります。高温・道床不良・通り変位が重なると危険です。
設定温度はどう決めますか?
最高と最低のレール温度の中間付近に置き、圧縮と引張の軸力を均等に振り分けます。
レール折損はいつ起きやすいですか?
冬季の低温時です。引張軸力が大きくなり、溶接部や傷を起点に破断します。