ベルトスリングの使用荷重計算(JIS B 8818)
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ベルトスリングの形式・等級・幅と、つり方・つり角度・吊り荷の質量から、JIS B 8818 の最大使用荷重 × モード係数で使用荷重を求め、使えるかを判定します。全てのつり方の使用荷重と必要な最小の幅も表示します。
ベルトスリングの使用荷重計算(JIS B 8818)ツール
使用荷重 = 最大使用荷重 × モード係数
JIS B 8818 は、ベルトスリング1本の最大使用荷重(ストレートづりで吊れる最大の質量)を等級・形式・幅ごとに定め、つり方・本数・つり角度に応じたモード係数 M を掛けた値を使用荷重とします(附属書B)。
M = N × F × cos(α/2)
N はつり本数、F はつり方係数(ストレートづり1・目通しづり0.8・バスケットづり2)、α はつり角度です。JIS の表 B.1 は、つり角度を α=0°・45°以下・90°以下・120°以下の4区分に分け、各区分の上限の角度で計算した係数を使います。
計算例
Ⅲ等級・両端アイ形・幅50mm の最大使用荷重は1.6 t です。1.5 t の荷をバスケットづり1本・α≦45°で吊ると、使用荷重は 1.6 × 1.8 = 2.88 t で、使用率52.1%。同じスリングを目通しづり1本にすると 1.6 × 0.8 = 1.28 t で、117.2%となり使えません。目通しづりで吊るなら幅75mm(2.5 × 0.8 = 2.0 t)が要ります。
最大使用荷重(JIS B 8818 表3・単位 t)
| 幅 | 両端アイ形・金具付き(E・K) | エンドレス形(N) | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ | Ⅳ | Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ | Ⅳ | |
| 25 | 0.5 | 0.63 | 0.8 | 1 | 1 | 1.25 | 1.6 | 2 |
| 35 | 0.8 | 1 | 1.25 | 1.6 | 1.6 | 2 | 2.5 | 3.2 |
| 50 | 1 | 1.25 | 1.6 | 2 | 2 | 2.5 | 3.2 | 4 |
| 75 | 1.6 | 2 | 2.5 | 3.2 | 3.2 | 4 | 5 | 6.3 |
| 100 | 2 | 2.5 | 3.2 | 4 | 4 | 5 | 6.3 | 8 |
| 150 | 3.2 | 4 | 5 | 6.3 | 6.3 | 8 | 10 | 12.5 |
| 200 | 4 | 5 | 6.3 | 8 | 8 | 10 | 12.5 | 16 |
| 250 | 5 | 6.3 | 8 | 10 | 10 | 12.5 | 16 | 20 |
| 300 | 6.3 | 8 | 10 | 12.5 | 12.5 | 16 | 20 | 25 |
※幅20・40・60・80・120mm の製品は附属書A(表A.1)に別の値があります。このツールは表3の幅だけを扱います。
モード係数(JIS B 8818 表B.1)
| つり方 | α=0° | α≦45° | 45°<α≦90° | 90°<α≦120° |
|---|---|---|---|---|
| ストレートづり | 1 | |||
| 目通しづり(1本) | 0.8 | |||
| 目通しづり(2本) | 1.6 | 1.4 | 1.1 | 0.8 |
| バスケットづり(1本) | 2 | 1.8 | 1.4 | 1 |
| バスケットづり(2本) | 4 | 3.6 | 2.8 | 2 |
Ⅲ等級・両端アイ形の使用荷重(例・単位 t)
| 幅 | ストレート | 目通し1本 | 目通し2本 α≦45° | バスケット1本 α≦45° | バスケット2本 α≦45° |
|---|---|---|---|---|---|
| 25 | 0.8 | 0.64 | 1.12 | 1.44 | 2.88 |
| 35 | 1.25 | 1 | 1.75 | 2.25 | 4.5 |
| 50 | 1.6 | 1.28 | 2.24 | 2.88 | 5.76 |
| 75 | 2.5 | 2 | 3.5 | 4.5 | 9 |
| 100 | 3.2 | 2.56 | 4.48 | 5.76 | 11.5 |
| 150 | 5 | 4 | 7 | 9 | 18 |
※入力した内容はお使いのブラウザの中だけで処理され、サーバーには送信されません。表の値は JIS 規格票の値です。実際に使ってよい荷重は、製品に刻印・表示された使用荷重と、メーカーの取扱説明書が優先します。古い製品やJIS以外の製品は値が違うことがあります。玉掛けの作業は、玉掛け技能講習(つり上げ荷重1t以上のクレーン等)または特別教育を修了した人が行ってください。
ベルトスリングの使用荷重計算(JIS B 8818)の詳しい解説
ベルトスリングは、ポリエステルやナイロンなどの合成繊維のベルトを2枚重ねて縫製した吊り具です。軽くて柔らかく、荷を傷つけにくいので、塗装品・機械・建材の玉掛けで広く使われています。JIS B 8818 は、ベルトスリングの等級・形式・幅ごとの最大使用荷重と、つり方による使用荷重の求め方を定めています。
まず用語を区別します。最大使用荷重は、1本のベルトスリングをストレートづり(まっすぐ1本で吊る)にしたときに負荷できる最大の質量です。製品のラベルに大きく書かれているのはこの値です。使用荷重は、つり方・本数・つり角度・使用雰囲気を考えたうえで実際に吊れる最大の質量です。両者をつなぐのがモード係数で、使用荷重 = 最大使用荷重 × モード係数です。
モード係数は、つり本数 N、つり方係数 F、つり角度 α から M = N × F × cos(α/2) で求めます。つり方係数は、ストレートづりが1、目通しづり(チョークづり)が0.8、バスケットづりが2です。目通しづりが1より小さいのは、ベルトが自分のアイに通されて急に曲がる部分で強さが落ちるからです。バスケットづりが2なのは、1本のスリングの両端をフックに掛けて、荷を2本の脚で支えるからです。
現場で最も多い誤りは、目通しづりでラベルの値をそのまま使うことです。Ⅲ等級・幅50mm の最大使用荷重は1.6 t ですが、目通しづりでは1.28 t しか吊れません。1.5 t の荷を吊ると17%超過です。逆にバスケットづりにすれば、同じスリングで2.88 t(α≦45°)まで吊れます。同じ1本のスリングで、つり方によって使用荷重が2倍以上変わるのです。
つり角度の扱いにも決まりがあります。JIS の表 B.1 は、つり角度を α=0°、45°以下、45°を超え90°以下、90°を超え120°以下の4つに区分し、それぞれ区分の上限の角度で計算した係数を使います。たとえばバスケットづり1本で α=30°でも、45°で計算した1.8を使います。区分の中で角度が小さくても係数は上がらないので、計算は安全側に寄ります。120°を超えるつり角度は表にありません。この角度で吊ってはいけません。
等級はⅠ〜Ⅳの4つで、数字が大きいほど同じ幅で強くなります。幅50mm の両端アイ形で、Ⅰ等級1 t、Ⅱ等級1.25 t、Ⅲ等級1.6 t、Ⅳ等級2 t です。エンドレス形は同じ幅・等級で両端アイ形のおよそ2倍の最大使用荷重が定められています。破断荷重は最大使用荷重の約6倍以上で、たとえばⅠ等級・幅25mm・両端アイ形は最大使用荷重0.5 t に対して30 kN 以上です。
繊維の吊り具ならではの注意もあります。JIS B 8818 の使用基準は、角張った荷には必ず当て物を使うこと、使用温度は100℃以下とし、−30℃〜50℃の範囲を超えるときは使用荷重について製造業者の指示によることを定めています。ポリプロピレン製は紫外線に比較的弱いので屋外で常時使ってはいけません。化学薬品が付く場所では化学薬品用の表示があるものを使います。点検で廃棄と判断したスリングを、使用荷重を下げて使い続けることも禁止されています。
幅と等級の選び方の手順をまとめます。まず吊り荷の質量と、つり方(ストレート・目通し・バスケット)、つり本数、つり角度を決めます。次にモード係数を表から読み、吊り荷の質量をモード係数で割ります。これが、そのスリング1本に必要な最大使用荷重です。たとえば1.5 t を目通しづり1本で吊るなら、1.5 ÷ 0.8 = 1.875 t 以上の最大使用荷重が要り、Ⅲ等級の両端アイ形なら幅75mm(2.5 t)になります。同じ荷をバスケットづり1本・α≦45°で吊るなら 1.5 ÷ 1.8 = 約0.83 t 以上で、幅35mm(1.25 t)で足ります。最後に、スリングのラベルの等級・形式・幅・最大使用荷重が、選んだものと合っているかを確かめます。
2本を対で使うときは、JIS は同一の材質のものを選ぶよう定めています。材質が違うと伸び方が違い、片方に荷が偏るからです。目通しづり2本やバスケットづり2本の使用荷重は、2本が均等に荷を受ける前提の値です。荷の重心が吊り点の中央からずれていると、片方の張力が大きくなります。重心の位置を確かめ、地切りで荷が傾かないかを見てから巻き上げるのが基本です。荷を吊ったまま長時間放置すること、ねじれたり結んだりした状態で使うことも、JIS の使用基準で禁止されています。
クレーン等安全規則も、著しい損傷や腐食がある繊維ベルトを玉掛用具として使うことを禁じ、その日の作業を始める前の点検を求めています。ベルトの縁の切れ、縫製部の糸切れ、熱による硬化や溶け、使用限界標示の糸が見えるほどの摩耗があれば、そのスリングは使いません。
業界・現場での使い方
玉掛け作業の計画
吊り荷の質量とつり方から、スリングの等級と幅を選びます。
機械・設備の搬入
塗装面を傷つけたくない荷で、目通しづりとバスケットづりのどちらが使えるかを比べます。
建材・鋼材の荷役
束ねた材料をバスケットづり2本で吊るときの使用荷重を確かめます。
スリングの購入・更新
現場の最大の吊り荷から、そろえるべき幅と等級を決めます。
安全教育
ラベルの最大使用荷重とつり方による使用荷重の違いを数値で示します。
よくある間違い・注意点
- 目通しづりでラベルの値を使う — 目通しづりはモード係数0.8です。最大使用荷重の8割しか吊れません。
- つり角度の区分を補間する — JIS は区分の上限の角度で計算した係数を使います。30度でも45度の係数です。
- 120度を超えるつり角度で吊る — JIS の表にありません。角度を狭めるか本数を増やします。
- 当て物を使わない — 角張った荷の角でベルトが傷みます。JIS は当て物を必ず使うよう定めています。
- 廃棄すべきスリングを荷重を下げて使う — JIS の使用基準で禁止されています。
関連する規格・公的資料
- 日本産業標準調査会(JISC) — JIS B 1168 アイボルト・JIS B 2801 シャックル・JIS B 8818 ベルトスリングの検索と閲覧
- 日本規格協会(JSA) — JIS 規格票の発行
- e-Gov 法令検索(クレーン等安全規則) — 第213条〜第220条 玉掛用具の安全係数・不適格な玉掛用具の使用禁止・作業開始前の点検
- 厚生労働省 — 玉掛け作業の安全対策
- 職場のあんぜんサイト(厚生労働省) — つり荷の落下・玉掛用具の破断の災害事例
- 一般社団法人 日本クレーン協会 — 玉掛け技能講習とクレーンの安全
- 中央労働災害防止協会 — 玉掛け作業の安全教育
- 建設業労働災害防止協会 — 建設現場の揚重作業の安全
- 一般社団法人 日本産業機械工業会 — JIS B 8818 ベルトスリングの原案作成団体
※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。医療・法務・税務の判断は最新の告示・規格および専門家の判断に従ってください。
よくある質問(FAQ)
ベルトスリングの使用荷重はどう決まりますか?
最大使用荷重にモード係数を掛けて求めます。モード係数は M=N×F×cos(α/2) です。
目通しづりの使用荷重は?
1本ならモード係数0.8で、最大使用荷重の8割です。
バスケットづりのモード係数は?
1本でα=0°が2、45°以下1.8、90°以下1.4、120°以下1です。2本ならその2倍です。
Ⅲ等級・幅50mm の最大使用荷重は?
両端アイ形で1.6 t、エンドレス形で3.2 t です。
Ⅳ等級・幅75mm の最大使用荷重は?
両端アイ形で3.2 t、エンドレス形で6.3 t です。
つり角度は何度まで使えますか?
JIS の表は120度までです。それを超える角度では吊りません。
ベルトスリングの安全係数は?
破断荷重が最大使用荷重の約6倍以上になるよう定められています。
熱い荷を吊ってもいいですか?
JIS では使用温度は100℃以下です。50℃を超えるときは使用荷重についてメーカーの指示に従います。
ナイロンスリングとベルトスリングは同じですか?
ナイロンスリングは材質による呼び方で、JIS の規格名はベルトスリングです。材質はラベルで確かめます。