油圧配管の流速・内径計算
【ご注意】このページの計算結果・情報は参考値です。正確性・最新性は保証できません。税務・法務・お金・設計・施工・安全などに関わる判断は、公式の資料と専門家の確認のうえ、ご自身の責任で行ってください。免責事項
流量とラインの種別から推奨流速に収まる内径の範囲を、実際の内径・長さ・油の粘度から流速・レイノルズ数・直管の圧力損失を算出します。油圧配管とホースのサイズ選定、圧力損失の見積もりに使います。
油圧配管の流速・内径計算ツール
計算式
推奨内径は、流量を推奨流速で割った断面積から d=√(4Q/(π×v)) で求めます。既定値の 30L/min(0.0005m³/s)を圧力ラインの推奨 3〜5m/s に収めるには、内径 11.3〜14.6mm が目安です。内径 12mm の実配管では断面積 113.1mm² なので流速は 0.0005/0.0001131=4.42m/s で範囲内に収まります。
レイノルズ数は Re=v×d/ν で、4.42×0.012/(32×10⁻⁶)=1,658。2,300 未満なので層流で、管摩擦係数は λ=64/Re=0.0386 です。直管の圧力損失はダルシー・ワイスバッハの式 ΔP=λ×(L/d)×ρ×v²/2 で、0.0386×(5/0.012)×870×4.42²/2=約0.137MPa(1.37bar)。継手や曲がりの損失は別途加算します。
ラインごとの推奨流速
| ライン | 推奨流速 | 超えたときに起きること |
|---|---|---|
| 吸込ライン(タンク→ポンプ) | 0.6〜1.2m/s(最大1.5) | 吸込負圧が増えてキャビテーション。騒音と損傷 |
| 圧力ライン(ポンプ→アクチュエータ) | 3〜5m/s(高圧・短管で6) | 圧力損失と発熱が増え、推力と効率が落ちる |
| 戻りライン(→タンク) | 1.5〜3m/s | 背圧が上がり、タンクで気泡が抜けにくくなる |
| ドレンライン | 0.5〜1m/s | ケース圧が上がりシールを傷める |
流量と必要内径(mm)
| 流量 | 吸込 1.2m/s | 圧力 3m/s | 圧力 5m/s | 戻り 3m/s |
|---|---|---|---|---|
| 10L/min | 13.3 | 8.4 | 6.5 | 8.4 |
| 20L/min | 18.8 | 11.9 | 9.2 | 11.9 |
| 30L/min | 23.0 | 14.6 | 11.3 | 14.6 |
| 50L/min | 29.7 | 18.8 | 14.6 | 18.8 |
| 80L/min | 37.6 | 23.8 | 18.4 | 23.8 |
| 100L/min | 42.1 | 26.6 | 20.6 | 26.6 |
圧力配管用炭素鋼鋼管(JIS G 3454 STPG370 スケジュール80)の内径
| 呼び径 | 外径 | 肉厚 | 内径 | 断面積 |
|---|---|---|---|---|
| 8A(1/4) | 13.8mm | 3.0mm | 7.8mm | 47.8mm² |
| 10A(3/8) | 17.3mm | 3.2mm | 10.9mm | 93.3mm² |
| 15A(1/2) | 21.7mm | 3.7mm | 14.3mm | 160.6mm² |
| 20A(3/4) | 27.2mm | 3.9mm | 19.4mm | 295.6mm² |
| 25A(1) | 34.0mm | 4.5mm | 25.0mm | 490.9mm² |
| 32A(1 1/4) | 42.7mm | 4.9mm | 32.9mm | 850.1mm² |
| 40A(1 1/2) | 48.6mm | 5.1mm | 38.4mm | 1,158mm² |
| 50A(2) | 60.5mm | 5.5mm | 49.5mm | 1,924mm² |
※本ツールは理論式による参考計算です。機器の選定は各メーカーのカタログ値と安全率、および JIS・ISO と労働安全衛生法令の要求事項に従ってください。
油圧配管の流速・内径計算の詳しい解説
油圧配管のサイズは圧力ではなく流速で決めます。同じ流量でも細い管では油が速く流れ、摩擦による圧力損失は流速の二乗に近い割合で増えます。損失はそのまま熱になり、アクチュエータに届く圧力を減らすので、圧力ラインでは 3〜5m/s に収めるのが長年の経験則です。一方で太すぎる配管はコストと重量を増やし、油量が増えて応答が鈍くなります。吸込ラインは別の理由でさらに遅く、0.6〜1.2m/s に抑えます。ポンプの吸込側は大気圧との差でしか油を引けないため、流速が上がって吸込負圧が深くなると油中の空気が泡になり、ポンプ内で潰れてキャビテーションを起こします。戻りラインはタンクに戻った油から気泡を抜く必要があり、勢いよく戻すと油面を乱して空気を巻き込むので 1.5〜3m/s が目安です。
流れの状態はレイノルズ数で判断します。油圧作動油は水より粘度が高く、ISO VG32 の油は 40℃ で 32cSt、水の約30倍です。そのため一般的な配管径と流速では Re が 2,300 を下回る層流になることが多く、摩擦係数は 64/Re という簡単な式で求まります。層流では圧力損失が流速に比例し、粘度に比例します。油温が低い始動直後は粘度が数倍に上がって損失も数倍になるため、冬場の設備でシリンダが遅いという現象はここから来ています。Re が 4,000 を超える乱流域では損失が流速の約1.75乗で増え、粘度の影響は小さくなります。
直管の損失はダルシー・ワイスバッハの式で計算できますが、実際の回路では曲がり、継手、切換弁、フィルタの損失が直管を上回ることが普通です。既定値の 5m・内径12mm では直管だけで約0.14MPa ですが、エルボが4個と切換弁が1個入れば合計は 0.3〜0.5MPa に達します。カタログの圧力損失線図を足し合わせるか、相当長さ(エルボ1個で直管の数十倍)で見積もる必要があります。ポンプの吐出圧からこれらを差し引いた値がシリンダに掛かる圧力なので、推力の計算と配管の計算は切り離せません。
配管材の選び方も流速の話とつながります。圧力ラインには JIS G 3454 の圧力配管用炭素鋼鋼管や JIS G 3455 の高圧配管用鋼管を使い、スケジュール番号で肉厚を選びます。呼び径が同じでも肉厚によって内径が変わり、スケジュール80 の 15A は内径 14.3mm ですが、スケジュール40 では 16.1mm です。流速計算では必ず内径を使い、呼び径や外径で計算しないことが基本です。ゴムホースは内径が呼び径に近く、可撓性がある代わりに圧力で膨らむため、精密な位置決め回路では鋼管が好まれます。
設計の流れは、流量からラインごとの推奨内径の範囲を出し、規格の内径からその範囲に入るサイズを選び、実際の内径で流速と損失を確認する、という順です。吸込側は太めに、圧力側は範囲の中央付近に、戻り側は圧力側より一段太くするのが定石で、これによってポンプの吸込条件と発熱の両方が安定します。最後に油温 20℃ での粘度で損失を再計算し、始動時に圧力が足りるかを確認しておくと、季節によるトラブルを設計段階で防げます。
別の条件での計算例
60L/min のポンプの吸込ラインを設計するとします。0.001m³/s を 1.2m/s 以下に抑えるには内径 √(4×0.001/(π×1.2))=32.6mm 以上が必要で、スケジュール80 の 32A(内径32.9mm・断面積 850mm²)を選ぶと流速は 1.18m/s で範囲内です。VG32 の油ではレイノルズ数 1.18×0.0329/(32×10⁻⁶)=1,210 の層流で、3m の直管の損失は 0.003MPa と小さく、吸込側の課題は損失より流速そのものだと分かります。冬場に油温が 20℃ まで下がると VG32 の粘度は約100cSt になり、レイノルズ数は 387、層流の損失は3倍に増えるので、寒冷地の設備では吸込配管を一段太い 40A にするか、タンクヒータで油温を確保します。圧力ライン側は同じ 60L/min で 3〜5m/s の範囲に入る内径 16.0〜20.6mm、スケジュール80 なら 20A(内径19.4mm・3.4m/s)が適合します。
業界・現場での使い方
油圧ユニットの配管設計
流量からライン別の内径範囲を出し、規格の内径で選定します。吸込は太め、戻りは圧力側より一段太くします。
ホース・鋼管の更新
既設の内径で流速を確認し、過大なら一段上のサイズに更新します。スケジュール違いで内径が変わる点に注意します。
圧力不足・発熱のトラブル診断
直管と継手の損失を積み上げ、シリンダに届く圧力を推定します。冬場の遅さは粘度上昇による層流損失で説明できます。
ポンプのキャビテーション対策
吸込流速が 1.2m/s を超えていれば配管を太くするか短くし、NPSH の余裕を確保します。
よくある間違い・注意点
- 呼び径や外径で流速を計算する — 流速は内径で決まります。スケジュール80 の 15A は内径 14.3mm で、外径 21.7mm ではありません。
- 吸込ラインを圧力ラインと同じ流速で設計する — 吸込は 0.6〜1.2m/s です。速いとキャビテーションでポンプが損傷します。
- 直管の損失だけで圧力を見積もる — 継手・曲がり・弁の損失が直管を上回ることが普通です。相当長さかカタログ線図で加算します。
- 油温 40℃ の粘度だけで計算する — 始動時の 20℃ では粘度が数倍になり、層流の損失も数倍です。冬場の圧力不足の原因になります。
- 太ければ安全だと考える — 太すぎる配管は油量と応答遅れとコストを増やし、戻り側では油面を乱すことがあります。
関連する規格・公的資料
- 日本産業標準調査会(JISC) — JIS規格の検索と閲覧。油圧の各規格番号はここで確認できる
- 日本フルードパワー工業会(JFPA) — 油圧・空気圧機器の業界団体。技術資料と機器の安全基準
- 日本フルードパワーシステム学会 — 油空圧の学術団体。基礎理論と最新の研究
- ISO(国際標準化機構) — ISO 4413・ISO 3320・ISO 6020 などの原規格
- 厚生労働省 — 労働安全衛生法と圧力容器・機械の安全規制
- e-Gov 法令検索 — ボイラー及び圧力容器安全規則・高圧ガス保安法の条文
- 高圧ガス保安協会(KHK) — 高圧ガス保安法の解説。アキュムレータの窒素封入に関わる
- 産業技術総合研究所 計量標準総合センター — 圧力・流量・粘度の国家計量標準
- 日本機械学会 — 流体工学・機械設計の学術資料
- 日本規格協会(JSA) — JIS規格票の発行と規格の解説
- 労働安全衛生総合研究所 — 産業安全の研究機関。機械災害の防止
- 経済産業省 — 産業保安と省エネルギー施策
- JIS G 3454(圧力配管用炭素鋼鋼管) — STPG370・410 の寸法とスケジュール番号
- JIS G 3455(高圧配管用炭素鋼鋼管) — STS370・410・480 の高圧用鋼管
- JIS B 8361(油圧システム通則) — 配管の設計・施工を含む油圧システムの一般規則
- JIS K 2283(動粘度試験方法) — 作動油の動粘度の測定方法。ISO VG の根拠
- JIS B 8360(油圧用ゴムホースアセンブリ) — 油圧ホースの呼び径と耐圧
※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。医療・法務・税務の判断は最新の告示・規格および専門家の判断に従ってください。
よくある質問(FAQ)
油圧配管の推奨流速はどのくらいですか?
吸込 0.6〜1.2m/s、圧力ライン 3〜5m/s、戻り 1.5〜3m/s が目安です。
30L/min の圧力ラインに必要な内径は?
3〜5m/s に収めるなら 11.3〜14.6mm で、スケジュール80 の 15A(内径14.3mm)か 10A(10.9mm)が候補です。
レイノルズ数はどう求めますか?
流速×内径÷動粘度です。既定値で 1,658 となり、2,300 未満なので層流です。
圧力損失はどのくらいですか?
内径12mm・5m・VG32 で直管だけで約0.137MPa(1.37bar)です。継手や弁の損失は別途加算します。
吸込ラインはなぜ遅くするのですか?
吸込負圧が深くなると油中の空気が泡になりキャビテーションを起こすためです。1.2m/s を超えないようにします。
冬場にシリンダが遅くなるのはなぜですか?
油温が低いと粘度が数倍になり、層流の圧力損失が粘度に比例して増えるためです。
スケジュール番号で何が変わりますか?
肉厚が変わり内径が変わります。15A はスケジュール40 で 16.1mm、80 で 14.3mm です。
ゴムホースと鋼管のどちらを使いますか?
可動部はホース、固定部と精密な位置決め回路は鋼管が基本です。ホースは圧力で膨らみ応答が鈍ります。
乱流になるのはどんなときですか?
Re が 4,000 を超えるときで、大流量・大径・低粘度の条件です。損失は流速の約1.75乗で増えます。