計算ツールズ
残響時間吸音サビン音響設計

残響時間の計算

【ご注意】このページの計算結果・情報は参考値です。正確性・最新性は保証できません。税務・法務・お金・設計・施工・安全などに関わる判断は、公式の資料と専門家の確認のうえ、ご自身の責任で行ってください。免責事項

部屋の容積と各面の吸音率から残響時間を計算します。吸音率が小さい部屋に合うサビンの式と、吸音率が大きい部屋に合うアイリングの式の両方を出し、用途ごとの推奨値と比べて、目標に合わせるのに必要な吸音力も表示します。

最終更新:2026-09-19/監修:計算ツールズ編集部

残響時間の計算ツール

サビンの式

残響時間は、音を止めてから音圧レベルが60 dB 下がるまでの時間です。部屋の容積と吸音力から求めます。

T = 0.161 × V ÷ A / A = Σ(Sᵢ × αᵢ)

V は容積(m³)、A は吸音力(m²)で、各面の面積に吸音率を掛けて足したものです。容積200 m³ で吸音力40 m² の部屋なら、残響時間は 0.805 秒 になります。容積が大きいほど長く、吸音力が大きいほど短くなります。

アイリングの式

サビンの式は吸音率が小さいときによく合いますが、吸音率が大きいと実際より長めの値を出します。吸音率が0.2 を超えるような部屋では、アイリングの式のほうが実態に近くなります。

T = 0.161 × V ÷ { −S × ln(1 − ᾱ) }

ᾱ は平均吸音率です。容積200 m³・表面積200 m²・平均吸音率0.2 の部屋なら、サビンで0.805 秒、アイリングで 0.722 秒 となり、0.08 秒の差が出ます。吸音率がもっと大きい録音スタジオなどでは差がさらに開きます。

目標から必要な吸音力を逆算する

設計では、目標の残響時間から必要な吸音力を求めることになります。式を入れ替えるだけです。

必要な吸音力 A = 0.161 × V ÷ T目標

いまの吸音力との差が、追加すべき量です。吸音率0.7 の吸音材なら、差を0.7 で割った面積を貼ることになります。

用途ごとの残響時間の目安(500 Hz)

用途目安理由
録音スタジオ0.2〜0.4 秒部屋の響きを極力入れない
事務室・会議室0.4〜0.8 秒会話の明瞭さを優先
教室0.5〜0.9 秒声が届き、かつ聞き取りやすく
多目的ホール1.0〜1.5 秒音声と音楽の折り合い
音楽ホール1.4〜2.2 秒豊かな響きを確保
体育館1.5〜2.5 秒容積が大きく吸音が少ない
教会・大聖堂3 秒以上石造で吸音がほぼない

材料の吸音率の目安(500 Hz)

材料吸音率使いどころ
コンクリート・タイル0.01〜0.02ほぼ吸わない
石膏ボード0.05一般的な内装
木質パネル0.10〜0.15やや吸う
カーペット0.25〜0.35床の吸音
厚手のカーテン0.35〜0.55手軽な追加吸音
岩綿吸音板0.55〜0.75天井の標準
グラスウール 50 mm0.70〜0.90本格的な吸音
人(1人あたり)0.4〜0.5 m²満席と空席で大きく変わる

容積と吸音力から見た残響時間(サビン)

容積吸音力 20 m²40 m²80 m²160 m²
100 m³0.81 秒0.40 秒0.20 秒0.10 秒
200 m³1.61 秒0.81 秒0.40 秒0.20 秒
500 m³4.03 秒2.01 秒1.01 秒0.50 秒
1,000 m³8.05 秒4.03 秒2.01 秒1.01 秒

※入力した内容はお使いのブラウザの中だけで処理され、サーバーには送信されません。本ツールは理論式による参考計算です。実際の性能は施工の精度・隙間・側路伝搬に大きく左右されます。設計や法令適合の判断には、実測値と専門家の確認が必要です。

残響時間の計算の詳しい解説

残響時間は、部屋の音響を表すもっとも基本的な指標です。音を止めてから音圧レベルが60 dB 下がるまでの時間を指し、T60 とも書きます。60 dB というのは、エネルギーで100万分の1になるまでという意味です。実際の測定では60 dB も減衰を追えないことが多いため、20 dB や30 dB 分の減衰から傾きを求めて換算します。

値を決めるのは容積と吸音力です。容積が大きいほど音が壁にぶつかる回数が減るので、なかなか減衰しません。体育館や教会がよく響くのは、天井が高くて容積が大きいうえ、壁がコンクリートや石でほとんど吸わないからです。逆に録音スタジオは、容積を抑えたうえで壁一面に吸音材を貼ることで、0.3 秒程度まで短くしています。

吸音力という言葉は少し分かりにくいかもしれません。単位が m² なので面積のように見えますが、「完全に音を吸う窓が何 m² 開いているのと同じか」という考え方です。吸音率0.5 の材料が10 m² あれば、吸音力は5 m² です。開いた窓は音を一切返さないので吸音率1.0、これが基準になります。人も音を吸うので、1人あたり0.4〜0.5 m² の吸音力として数えます。満席のホールと空席のホールで響きが大きく違うのはこのためで、100人入れば40〜50 m² の吸音力が増える計算になります。

サビンの式とアイリングの式の使い分けも押さえておきましょう。サビンの式は19世紀末に実験から導かれたもので、計算が簡単で吸音率が小さい部屋によく合います。ただし理屈のうえで不都合があり、平均吸音率を1.0(つまり完全に吸う部屋)にしても残響時間がゼロになりません。アイリングの式はこの点を修正したもので、吸音率が1.0 のときに正しくゼロになります。平均吸音率が0.2 を超えたらアイリングを使うのが実務の目安です。このツールが両方を表示しているのは、どちらを採るべきかを自分で判断できるようにするためです。

設計で注意したいのは、残響時間は周波数ごとに違うことです。吸音材の性能は周波数で大きく変わり、グラスウールのような多孔質材は高音をよく吸いますが低音は苦手です。その結果、対策後の部屋は「低音だけ響く」状態になりがちです。低音を吸うには板振動型や共鳴型の吸音構造が必要で、多孔質材を増やしても効きません。本来は125・250・500・1000・2000・4000 Hz の各帯域で計算し、周波数特性がなだらかになるように材料を組み合わせます。

もう1つ、残響時間が短ければよいというものでもありません。事務室や教室では会話の明瞭さが大事なので短めが望ましいのですが、短すぎると声が飛ばず、話し手が疲れます。音楽ホールでは1.4〜2.2 秒の響きが豊かさを生みます。用途に対して適切な値があり、ゼロに近づけるのが正解ではありません。多目的ホールで可動式の吸音カーテンを備えるのは、用途に応じて残響時間を変えるためです。

業界・現場での使い方

会議室の音響改善

反響が気になる部屋の残響時間を計算し、必要な吸音材の量を求めます。

教室の音響設計

声の明瞭さを確保するための目標値に対し、天井材と床材の仕様を決めます。

スタジオの設計

目標残響時間から必要な吸音力を逆算し、吸音材の面積を決めます。

体育館の反響対策

大容積で吸音が少ない空間に、どれだけ吸音力を足せばよいかを見積もります。

ホールの客席数の検討

人の吸音力を考慮し、満席時と空席時の残響時間の差を確かめます。

よくある間違い・注意点

  • 吸音率が大きいのにサビンを使う — 平均吸音率0.2 を超えると長めに出ます。アイリングを使ってください。
  • 周波数を1つで済ませる — 吸音材の性能は周波数で大きく変わります。本来は帯域ごとに計算します。
  • 人の吸音力を数えない — 1人あたり0.4〜0.5 m² です。100人で40〜50 m² も変わります。
  • 多孔質材だけで低音を吸おうとする — グラスウールは低音が苦手です。板振動型や共鳴型の構造が要ります。
  • 短ければよいと考える — 短すぎると声が飛びません。用途ごとの適切な範囲があります。

関連する規格・公的資料

※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。医療・法務・税務の判断は最新の告示・規格および専門家の判断に従ってください。

よくある質問(FAQ)

残響時間とは何ですか?

音を止めてから音圧レベルが60 dB 下がるまでの時間です。T60 とも書きます。

サビンとアイリングはどう使い分けますか?

平均吸音率が0.2 未満ならサビン、それ以上ならアイリングが実態に近くなります。

吸音力の単位が m² なのはなぜですか?

完全に音を吸う開口が何 m² あるのと同じか、という考え方だからです。開いた窓が吸音率1.0 の基準です。

会議室の目安はどのくらいですか?

0.4〜0.8 秒が目安です。会話の明瞭さを優先する部屋は短めにします。

人も吸音しますか?

します。1人あたり0.4〜0.5 m² の吸音力として数えます。満席と空席で響きが大きく変わります。

低音だけ響くのはなぜですか?

多孔質の吸音材は高音をよく吸い、低音が苦手だからです。低音には別の吸音構造が要ります。

カーテンを吊るだけでも効果がありますか?

あります。厚手のカーテンは吸音率0.35〜0.55 程度で、手軽な追加吸音になります。

残響時間は短いほどよいのですか?

違います。短すぎると声が飛ばず話し手が疲れます。用途に応じた適切な範囲があります。

空気の吸収は考えるべきですか?

容積が大きく高い周波数を扱う場合は効いてきます。小さな部屋では無視できます。

測定はどうやりますか?

音を止めてからの減衰を記録します。60 dB 追えないことが多いので、20 dB や30 dB の傾きから換算します。