歯車の基本寸法の計算
【ご注意】このページの計算結果・情報は参考値です。正確性・最新性は保証できません。税務・法務・お金・設計・施工・安全などに関わる判断は、公式の資料と専門家の確認のうえ、ご自身の責任で行ってください。免責事項
モジュールと歯数から、基準円直径・歯先円直径・歯底円直径・中心距離・全歯たけを計算します。はすば歯車のねじれ角による違い、周速と潤滑の目安、切下げが起きる歯数もあわせて判定します。
歯車の基本寸法の計算ツール
モジュールが寸法を決める
歯車の寸法はすべてモジュールから決まります。モジュールとは、基準円の直径を歯数で割った値です。単位は mm で、歯の大きさを表します。
基準円直径 d = モジュール m × 歯数 z
モジュール2、歯数20なら基準円直径は 40 mm です。歯数60なら120 mm。2つの歯車を噛み合わせるときの中心距離は、基準円直径の平均になります。
中心距離 a = m × (z₁ + z₂) ÷ 2
2×(20+60)÷2=80 mm です。歯先円と歯底円もモジュールで決まります。標準的な歯形では、歯末のたけが m、歯元のたけが1.25m です。
歯先円 da = m × (z + 2) / 歯底円 df = m × (z − 2.5)
モジュール2・歯数20なら、歯先円44 mm、歯底円35 mm になります。噛み合う2つの歯車は、モジュールと圧力角が同じでなければなりません。これが違うと歯の形が合わず、噛み合いません。
はすば歯車は少し大きくなる
はすば歯車は歯がねじれているため、同じモジュール・同じ歯数でも直径が大きくなります。ねじれ角 β の余弦で割ります。
d = 歯直角モジュール mₙ × z ÷ cos β
モジュール2・歯数20・ねじれ角15度なら、40 ÷ cos15° = 41.41 mm です。中心距離も同じ比率で大きくなり、80 mm が 82.82 mm になります。中心距離を先に決めてからねじれ角を微調整するという設計のやり方があるのは、この関係を利用しています。
モジュールと歯数から決まる寸法(平歯車)
| m | z | 基準円 d | 歯先円 da | 歯底円 df | 全歯たけ |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 20 | 20 mm | 22 mm | 17.5 mm | 2.25 mm |
| 1.5 | 20 | 30 mm | 33 mm | 26.25 mm | 3.375 mm |
| 2 | 20 | 40 mm | 44 mm | 35 mm | 4.5 mm |
| 2 | 60 | 120 mm | 124 mm | 115 mm | 4.5 mm |
| 3 | 30 | 90 mm | 96 mm | 82.5 mm | 6.75 mm |
| 4 | 25 | 100 mm | 108 mm | 90 mm | 9 mm |
標準のモジュール(JIS の第1系列)
| 区分 | モジュール | 主な用途 |
|---|---|---|
| 小 | 0.5 / 0.8 / 1 / 1.25 | 計測器・小型機構 |
| 中 | 1.5 / 2 / 2.5 / 3 | 一般機械・搬送装置 |
| 大 | 4 / 5 / 6 / 8 | 産業機械・減速機 |
| 特大 | 10 / 12 / 16 / 20 | 建設機械・大型設備 |
※中間の値は第2系列にありますが、入手性を考えると第1系列から選ぶのが無難です。
周速と潤滑の目安
| 周速 | 区分 | 潤滑 | 精度等級の目安 |
|---|---|---|---|
| 〜5 m/s | 低速 | グリースでも可 | JIS 等級 6〜8 |
| 5〜12 m/s | 中速 | 油浴潤滑 | JIS 等級 5〜7 |
| 12〜25 m/s | 高速 | 強制潤滑 | JIS 等級 4〜6 |
| 25 m/s〜 | 超高速 | 強制潤滑・専用設計 | JIS 等級 3〜5 |
切下げ(アンダーカット)の限界歯数
| 圧力角 | 平歯車 | はすば β=15° | はすば β=30° |
|---|---|---|---|
| 20度(標準) | 17枚 | 約15.3枚 | 約11.0枚 |
| 14.5度(旧規格) | 32枚 | 約28.8枚 | 約20.8枚 |
※これを下回ると歯元が削れて強度が落ちます。どうしても少ない歯数が必要なら転位歯車にします。
※入力した内容はお使いのブラウザの中だけで処理され、サーバーには送信されません。本ツールは基本式による参考計算です。実際の設計では衝撃・起動停止の頻度・環境・メーカーの選定資料に従ってください。安全にかかわる部位はメーカーの技術資料と有資格者の確認が必要です。
歯車の基本寸法の計算の詳しい解説
歯車の設計でまず決めるのがモジュールです。モジュールは歯の大きさを表す値で、基準円の直径を歯数で割ったものと定義されます。言い換えれば、歯1枚あたりに割り当てられた円周上の長さを π で割った値です。この1つの数字から、歯先円も歯底円も歯たけも歯厚も、すべてが決まります。
なぜこんな決め方をするかというと、噛み合いの条件を単純にするためです。2つの歯車が正しく噛み合うには、歯の大きさと形が一致していなければなりません。モジュールと圧力角という2つの値を揃えれば、歯数がいくつでも噛み合います。だから歯車は規格化でき、カタログから選んで組み合わせられるのです。逆に言えば、モジュールが違う歯車は絶対に噛み合いません。これは初歩的でありながら、現場で図面を追うときに最初に確認すべき点です。
中心距離の計算も設計の要になります。基準円直径の平均が中心距離になるので、モジュールと歯数の組み合わせが決まれば、軸間の寸法が自動的に決まります。ところが実際の設計では順序が逆で、先に軸間距離が決まっていて、そこに合う歯車を探すことが多いのです。既存の機械に組み込む場合や、フレームの寸法が先に決まっている場合がそうです。
このときに使う手が2つあります。1つは転位歯車で、歯切り工具の位置をずらして歯を作ることで、同じ歯数のまま基準円をずらし、中心距離を微調整します。もう1つははすば歯車のねじれ角を使う方法です。はすば歯車の直径はねじれ角の余弦で割った値になるので、ねじれ角を変えれば直径が連続的に変わります。ねじれ角15度なら直径は約3.5%大きくなり、中心距離80 mm が82.82 mm になります。整数の歯数では作れない中心距離を、ねじれ角で埋めるわけです。
歯数を決めるときに注意すべきなのが切下げです。歯数が少なすぎると、歯切り工具が歯元を削り込んでしまい、歯が細くなって強度が落ちます。標準的な圧力角20度の平歯車では17枚が限界とされています。14.5度の旧規格では32枚と、かなり多くの歯数が必要でした。圧力角を大きくしたことで少ない歯数が使えるようになり、装置を小さくできるようになったのです。はすば歯車では、ねじれ角があるぶん限界歯数がさらに下がります。
周速も確認しておきたい項目です。基準円の周速が上がるほど、噛み合いの衝撃と発熱が大きくなり、必要な精度等級と潤滑方式が変わります。5 m/s 以下ならグリースでも持ちますが、12 m/s を超えると油浴では追いつかず強制潤滑が要ります。25 m/s を超えると専用の設計領域です。回転数が同じでも、直径が大きければ周速は上がります。大歯車のほうが危ないと思われがちですが、実際に周速が問題になるのは高速で回る小歯車側であることが多く、両方を確かめる必要があります。
業界・現場での使い方
歯車の新規設計
モジュールと歯数から寸法一式を出し、図面の寸法と噛み合いを確認します。
既存機械の部品特定
測った歯先円直径と歯数から、モジュールを逆算して同等品を探します。
軸間距離に合わせる検討
決まった中心距離に対し、はすばのねじれ角や転位で調整できるかを確かめます。
潤滑方式の選定
周速からグリースで足りるか、油浴か強制潤滑かを判断します。
小型化の検討
歯数を減らしたときに切下げが起きないかを確認します。
よくある間違い・注意点
- モジュールが違う歯車を組もうとする — 絶対に噛み合いません。モジュールと圧力角の一致が前提です。
- 歯数を減らしすぎる — 圧力角20度では17枚が限界です。下回ると歯元が削れて強度が落ちます。
- はすばの直径を平歯車と同じに計算する — ねじれ角の余弦で割るため大きくなります。中心距離もずれます。
- 周速を大歯車だけで見る — 高速側の小歯車で問題になることが多く、両方の確認が要ります。
- 第2系列のモジュールを安易に選ぶ — 入手性が落ちます。特別な理由がなければ第1系列から選びます。
関連する規格・公的資料
- 日本産業標準調査会(JISC) — JIS B 1701 歯車の基準ラックなど機械要素の規格
- 日本規格協会(JSA) — JIS 規格票の発行
- 日本機械学会 — 機械工学便覧と設計の基礎資料
- 日本歯車工業会 — 歯車の技術資料と用語
- 日本ベルト工業会 — 伝動ベルトの規格と選定
- 経済産業省 — 産業機械の標準化施策
- 国際標準化機構(ISO) — ISO 6336 歯車の強度計算など
- 独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE) — 機械の事故情報と安全
- 厚生労働省 — 機械の労働安全衛生に関する規則
- 中央労働災害防止協会 — 回転部の挟まれ・巻き込まれの防止
- 日本工業出版 — 機械設計の実務資料
- 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 — 機械要素の計測と標準
- 日本トライボロジー学会 — 潤滑と摩擦の技術資料
※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。医療・法務・税務の判断は最新の告示・規格および専門家の判断に従ってください。
よくある質問(FAQ)
モジュールとは何ですか?
基準円直径を歯数で割った値で、歯の大きさを表します。単位は mm です。
基準円直径はどう求めますか?
モジュール×歯数です。モジュール2・歯数20なら40 mm になります。
中心距離はどう求めますか?
モジュール×(歯数1+歯数2)÷2 です。基準円直径の平均と同じです。
モジュールが違うと噛み合いませんか?
噛み合いません。モジュールと圧力角の両方が一致している必要があります。
歯数は何枚まで減らせますか?
圧力角20度の平歯車で17枚が目安です。下回ると切下げが起きます。
切下げが起きるとどうなりますか?
歯元が削れて細くなり、曲げ強度が落ちます。転位歯車にすれば回避できます。
はすば歯車の直径はなぜ大きいのですか?
歯がねじれているためです。歯直角モジュール×歯数÷cosβ で求めます。
中心距離を微調整したいときは?
転位歯車にするか、はすばのねじれ角を変えます。ねじれ角15度で約3.5%大きくなります。
周速はどのくらいまで大丈夫ですか?
5 m/s まではグリース、12 m/s まで油浴、それ以上は強制潤滑が目安です。
実物からモジュールを調べられますか?
歯先円直径を(歯数+2)で割ればおおよそ求まります。標準の系列に当てはめて確認してください。