油圧シリンダ推力計算
【ご注意】このページの計算結果・情報は参考値です。正確性・最新性は保証できません。税務・法務・お金・設計・施工・安全などに関わる判断は、公式の資料と専門家の確認のうえ、ご自身の責任で行ってください。免責事項
内径・ロッド径・作動圧力・機械効率から押し側と引き側の推力を、流量から動作速度とストローク時間を、必要推力から JIS の標準内径を算出します。プレス・治具・搬送機の油圧シリンダ選定に使います。
油圧シリンダ推力計算ツール
計算式
推力は空圧と同じく F=P×π/4×D²(押し側)、F=P×π/4×(D²−d²)(引き側)で、MPa と mm で入れると N で出ます。油圧はパッキンの摩擦が無視できないため機械効率を掛け、既定値の φ63・ロッドφ35・7MPa・効率90% では押し側 7×3,117.2=21,820N → 19,638N(約2,002kgf)、引き側 7×2,155.1=15,086N → 13,577N です。
速度は流量を受圧面積で割って求めます。20L/min は毎秒 333,333mm³ なので、押し側 333,333/3,117.2=106.9mm/s、引き側は面積が小さいぶん速く 154.7mm/s、300mm のストロークはそれぞれ 2.81秒と 1.94秒です。15,000N が必要なら必要内径は √(4×15,000/(π×7×0.9))=55.1mm で、JIS B 8354 の標準内径では φ63 を選びます。
標準内径×作動圧力 押し側理論推力(kN)
| 内径 | 受圧面積 | 7MPa | 10MPa | 14MPa | 21MPa |
|---|---|---|---|---|---|
| φ32 | 804mm² | 5.6 | 8.0 | 11.3 | 16.9 |
| φ40 | 1,257mm² | 8.8 | 12.6 | 17.6 | 26.4 |
| φ50 | 1,963mm² | 13.7 | 19.6 | 27.5 | 41.2 |
| φ63 | 3,117mm² | 21.8 | 31.2 | 43.6 | 65.5 |
| φ80 | 5,027mm² | 35.2 | 50.3 | 70.4 | 105.6 |
| φ100 | 7,854mm² | 55.0 | 78.5 | 110.0 | 164.9 |
| φ125 | 12,272mm² | 85.9 | 122.7 | 171.8 | 257.7 |
| φ160 | 20,106mm² | 140.7 | 201.1 | 281.5 | 422.2 |
JIS B 8354 の標準内径とロッド径(代表的な組み合わせ)
| 内径 D | ロッド径 d(細径/太径) | 引き側の面積比(細径) |
|---|---|---|
| φ32 | φ18/φ22 | 68% |
| φ40 | φ22/φ28 | 70% |
| φ50 | φ28/φ36 | 69% |
| φ63 | φ35/φ45 | 69% |
| φ80 | φ45/φ56 | 68% |
| φ100 | φ56/φ70 | 69% |
| φ125 | φ70/φ90 | 69% |
| φ160 | φ90/φ110 | 68% |
圧力区分と主な用途
| 呼び圧力 | 主な機器・用途 | 備考 |
|---|---|---|
| 7MPa 系 | 工作機械の治具・搬送・一般産業機械 | ギヤポンプで扱いやすい。既定値 |
| 14MPa 系 | プレス・射出成形機・建設機械の一部 | JIS B 8354 の中心的な系列 |
| 21MPa 系 | 建設機械・大型プレス・鍛圧機械 | ピストンポンプが主体 |
| 35MPa 系 | 大型建機・特殊機械 | 配管・継手も高圧仕様が必要 |
※本ツールは理論式による参考計算です。機器の選定は各メーカーのカタログ値と安全率、および JIS・ISO と労働安全衛生法令の要求事項に従ってください。
油圧シリンダ推力計算の詳しい解説
油圧シリンダの推力は空気圧と同じ「圧力×受圧面積」ですが、扱う圧力が10倍以上高いため、同じ内径で桁違いの力が出ます。φ63 のシリンダは空圧の 0.5MPa で約1.6kN、油圧の 7MPa なら 21.8kN、21MPa なら 65.5kN です。この差が、プレスや射出成形機、建設機械で油圧が使われる理由で、小さな断面で大きな力を出せることと、油が非圧縮性なので位置決めや保持が安定することが油圧の本質的な利点です。一方で、油圧ではパッキンの摩擦、油の粘性抵抗、背圧が無視できないため、理論推力に機械効率を掛けて実効推力を見積もります。効率は一般に 0.85〜0.95 で、低圧・低速・大径ほど摩擦の比率が上がって効率が落ちます。
速度は圧力ではなく流量で決まります。ポンプが送る油の体積を受圧面積で割った値がピストンの速度で、既定値の 20L/min・φ63 では毎秒約107mm です。引き側はロッドの分だけ面積が小さく、同じ流量でも速く動きますが、推力は逆に小さくなります。この非対称は差動回路で利用することもあり、押し側と引き側を同時に加圧するとロッド断面積分の推力で高速に前進できます。速度を上げたいときはポンプ容量を増やすか内径を小さくする、推力を上げたいときは内径を大きくするか圧力を上げる、という選択になり、両立させると動力が増えます。
必要内径の逆算では、必要推力を圧力と効率で割った面積から直径を出し、JIS B 8354 の標準内径のうち計算値以上の最小のものを選びます。標準内径は 32・40・50・63・80・100・125・140・160・180・200・224・250 と並び、ロッド径は内径ごとに細径と太径の2種類が規定されています。押し引きの差を小さくしたいなら細径、座屈や横荷重に強くしたいなら太径を選びます。長ストロークで押し側に大きな荷重が掛かる場合は、ロッドの座屈をオイラーの式で確認する必要があり、取付方法によって有効長が変わるので、推力の計算だけで終わらせないことが大切です。
圧力の設定には配管系全体が関わります。ポンプの吐出圧はリリーフ弁で決まり、方向切換弁や配管の圧力損失を差し引いた値がシリンダに届きます。とくに流量が大きい高速回路では損失が 0.5〜1MPa に達することもあり、7MPa 系で設計しているつもりが実際には 6MPa しか出ていないという事態は珍しくありません。実効推力の余裕を1〜2割見ておくか、シリンダ直近の圧力を測って設計圧を決めるのが実務的です。また、油温が上がると粘度が下がって内部漏れが増え、保持力や速度が変わるので、連続運転の設備では油温管理も推力の一部です。
安全面では、油圧は蓄えられたエネルギーが大きいことを常に意識します。加圧状態でホースが破断すると油が高速で噴出し、圧力を抜かずに配管を外すと重大災害につながります。労働安全衛生規則はプレスや油圧機械の安全装置を定めており、シリンダの選定と同時に、荷重が落下しない回路(パイロットチェック弁・カウンタバランス弁)と、メンテナンス時に圧力を確実に抜ける手順を設計に組み込むことが求められます。
別の条件での計算例
14MPa 系で φ100・ロッドφ56 のシリンダを使う場合、受圧面積 7,854mm² から押し側の理論推力は 109,956N、機械効率90% で 98,960N(約10.1tf) です。引き側は π/4×(100²−56²)=5,391mm² なので 75,474N、実効 67,927N と押し側の69%になります。60L/min を送ると押し側の速度は 1,000,000/7,854=127.3mm/s で、500mm のストロークは 3.9秒、引き側は 185.5mm/s で 2.7秒です。100kN 級のプレスなら φ100 でぎりぎりなので、圧力損失の余裕を見て φ125(機械効率込みで 154.6kN)を選ぶか、圧力を 16MPa に上げて φ100 のままにするかを、ポンプの系列と配管の耐圧で判断します。長ストロークの押し付けでは、ロッドφ56 が 500mm を超える有効長で座屈しないかを併せて確認してください。
業界・現場での使い方
プレス・圧入機
必要な加圧力から内径を逆算し、圧力系列に合う標準内径を選びます。ロッドの座屈確認と圧力損失の余裕を併せて検討します。
工作機械の治具・クランプ
7MPa 系で保持力を確保し、油圧が切れても保持できるチェック弁付き回路にします。
射出成形・ダイカスト
型締め力から内径と圧力を決め、高速動作では流量とポンプ動力を同時に見積もります。
建設機械・農業機械
21MPa 系で小径・高推力にし、外部荷重による過大圧をリリーフで逃がす設計にします。
よくある間違い・注意点
- 機械効率を掛け忘れる — パッキン摩擦と粘性抵抗で理論値より5〜15%落ちます。既定値では効率90%で19,638Nです。
- 引き側を押し側と同じ推力で設計する — 油圧のロッドは太く、引き側の面積は7割程度です。φ63・φ35 では69%です。
- ポンプの吐出圧がそのまま掛かると思う — 切換弁と配管で0.5〜1MPa 落ちることがあります。シリンダ直近の圧力で設計します。
- 推力だけで内径を決めて座屈を見ない — 長ストロークの押し側ではロッドの座屈が支配的になります。オイラーの式で確認します。
- kgf と N を混同する — 1kgf は 9.80665N です。古い図面の kgf/cm² は 0.0980665MPa です。
関連する規格・公的資料
- 日本産業標準調査会(JISC) — JIS規格の検索と閲覧。油圧の各規格番号はここで確認できる
- 日本フルードパワー工業会(JFPA) — 油圧・空気圧機器の業界団体。技術資料と機器の安全基準
- 日本フルードパワーシステム学会 — 油空圧の学術団体。基礎理論と最新の研究
- ISO(国際標準化機構) — ISO 4413・ISO 3320・ISO 6020 などの原規格
- 厚生労働省 — 労働安全衛生法と圧力容器・機械の安全規制
- e-Gov 法令検索 — ボイラー及び圧力容器安全規則・高圧ガス保安法の条文
- 高圧ガス保安協会(KHK) — 高圧ガス保安法の解説。アキュムレータの窒素封入に関わる
- 産業技術総合研究所 計量標準総合センター — 圧力・流量・粘度の国家計量標準
- 日本機械学会 — 流体工学・機械設計の学術資料
- 日本規格協会(JSA) — JIS規格票の発行と規格の解説
- 労働安全衛生総合研究所 — 産業安全の研究機関。機械災害の防止
- 経済産業省 — 産業保安と省エネルギー施策
- JIS B 8354(油圧シリンダ) — 標準内径・ロッド径・圧力系列の国内規格
- ISO 3320(シリンダ内径・ロッド径の系列) — 内径とロッド径の標準数列
- ISO 6020(油圧シリンダ 取付寸法 16MPa 系) — 中圧油圧シリンダの取付互換寸法
- JIS B 8361(油圧システム通則) — 油圧システムの一般規則と安全要求事項。ISO 4413 に対応
- 労働安全衛生規則(プレス等の安全装置) — 油圧プレス・油圧機械の安全対策の根拠
※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。医療・法務・税務の判断は最新の告示・規格および専門家の判断に従ってください。
よくある質問(FAQ)
油圧シリンダの推力はどう計算しますか?
圧力(MPa)×受圧面積(mm²)×機械効率です。φ63・7MPa・効率90% で押し側 19,638N、引き側 13,577N です。
機械効率はどのくらいですか?
一般に 0.85〜0.95 です。低圧・低速・大径ほど摩擦の比率が上がり効率が落ちます。
速度はどう決まりますか?
流量÷受圧面積です。20L/min・φ63 で押し側 106.9mm/s、引き側 154.7mm/s です。
15,000N を出すには?
7MPa・効率90% で必要内径は 55.1mm、JIS の標準内径では φ63 を選びます。
圧力を上げるのと内径を上げるのはどちらがよいですか?
既存の圧力系列に収まるなら内径を上げます。圧力を上げるとポンプ・配管・継手すべてが高圧仕様になります。
ロッド径は細径と太径のどちらを選びますか?
押し引きの差を小さくしたいなら細径、座屈や横荷重に強くしたいなら太径です。長ストロークの押しは太径が安全です。
差動回路とは何ですか?
押し側と引き側を同時に加圧し、ロッド断面積分の推力で高速前進させる回路です。速度が要る工程で使います。
油温は推力に影響しますか?
油温が上がると粘度が下がり内部漏れが増え、保持力と速度が変わります。連続運転では油温管理が要ります。
kgf/cm² の図面はどう読み替えますか?
1kgf/cm²=0.0980665MPa です。70kgf/cm² は約6.9MPa です。